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【脳の仕組み】睡眠不足は記憶力の低下とどのようにつながるのか?

最近はTiktokやYouTubeのような動画コンテンツや、スマホアプリがどんどん増えて余暇の過ごし方がバラエティ豊かになった反面、生活習慣の乱れが問題視され中でも睡眠不足による日常生活への支障が起きている人も多いかと思います。

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かくいう私も夜の電話会議や、Youtubeの鑑賞で気がつけば2時~3時、、、ということもあり、寝不足で次の朝を迎えることも多々あります。

特に日本人は頑張り屋さんなのか、海外と比べてもとりわけ睡眠時間が短いことで知られています。なんとOECD(経済協力開発機構)の統計では、調査対象となった33カ国の中でも日本人は断トツトップで睡眠が少ないとのことでした。*1

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そもそも睡眠ってどうして大事なのだろう?

睡眠をしっかりと取っている人は慢性的な睡眠不足の人と比べて、血糖値の低下をはじめ、細胞代謝や糖代謝の上昇、ストレス応答への内分泌機能の改善など様々な健康面で有利であることが研究で分かっているようです。*2

睡眠不足は生活習慣病やうつ病といった様々な健康リスクを高めることは、広く知られていますが、我々が日常生活を送るうえで非常に重要な記憶能力にもかなり関わっていますので、今日はこの睡眠×記憶力の観点でお話をしていきたいと思います。

記憶はどのようにして脳内で蓄えられていくのか?

まずエピソード記憶というのは独立して蓄えられているわけではなく、他の記憶と関連づけて記憶されているものになります。

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例えば知らない空間に入った時には、過去に体験している空間情報とどのように結びつきそうか、そこに置かれている机や椅子などの様々な情報と組み合わせながら新しい記憶ネットワークを生成します。その記憶情報は新しいシナプス結合のパターンを生成することで脳内で更新されていきます。

そして思い出すときは、何かしらヒントとなるキー情報(例えば「机」という情報)が来ればそれを手掛かりに、脳内の関連する脳神経細胞がまるで「仕掛けが作動した」かのように次々と活性化し、机が置かれている色々な空間パターンの情報が思い出されるという流れになります。

ちなみに機械であれば、こういった関連情報は「0,1」のようなデジタル信号で結び付けられている為、一つの情報から正確にシーンを再現することが出来ますが、人間の場合はそうではありません。時には全く関係ない情報を引き出すことで、勘違いや思い込みも生じます。しかしポジティブに考えると曖昧なキー情報から、機械では絶対に結び付かないような思い付きができるところに、やはり人間としての生産性の価値があるのではないかと考えます。

エピソード記憶をつかさどる海馬

過去に私のNoteに見ていただいた方はすでにわかると思いますが、何かイベントやエピソードに関連する記憶というのは海馬という部位で行われています。

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この海馬を手術で除去すると、記憶できなくなるのか?

海馬の役割を明らかにするために実際に行われた非常に興味深い例をお話いたします。
アメリカのコネティカット州に住んでいたヘンリー・グスタフ・モレゾンさんという方は(残念ながらすでにお亡くなりになられていますが)、重度のてんかん症に苦しんでいたといいます。

生存の危機もあるその病気の原因は海馬にあったことから、1953年に海馬を摘出する手術を実施したところ、手術は無事うまくいき、基本的な知能検査も術前と変わること生活できるようになりました。

しかしながら海馬を摘出したことで、1時間以上前のことを全く覚えることができない、つまり長期的な記憶能力が全く無くなってしまったというのです。パズルのような手先の器用さが必要な運動作業については練習を通して上達していくのですが、その上達していく過程に関して全く覚えていないというのです。

これがまさに海馬がエピソード記憶と司っている部位であることの、決定的な証明になりました。

なぜ海馬と睡眠は関係あるのか?まばたきの意味や記憶の定着との関連

私たちはよく「まばたき」をして、眼のごみを取り除いたり、瞳を潤すことをしますが、実はまばたきの理由はそれだけではありません。

まばたきとは、絶え間なく流れてくる視覚情報にいったん区切りをつけて、瞬きのタイミングで脳にまとめて情報を伝達しているといわれます。

映画を鑑賞する際に、瞬きが内容に応じて誰でも同じところで起こることが多いといわれているのは、一度に処理できる視覚情報量のキャパシティがある程度決まっているからなのかもしれません。睡眠もこれに近いわけですが視覚情報が途切れるその時間帯に、脳中に溜まった情報がものすごいスピードで処理されます。睡眠はよく「記憶の定着」に重要などと言われますが、睡眠中の脳内での情報処理のスピードは起きているときの約2倍の速度で行われているとも言われています。

睡眠の種類(レム睡眠・ノンレム睡眠)

ご存じの通り、睡眠には夢を見ている状態のレム睡眠と、脳の急速に重要な役割を果たすノンレム睡眠の二つの睡眠状態があります。皆さんもこの2つの言葉はどこかで聞いた頃があるかと思います。

レム睡眠というのは早い眼球の動きを伴う睡眠であり、体の筋肉は動かないものの脳は非常に活発に活動している状態になります。この際、脳内で様々な情報と結びついてシナプス結合がされ、その結果記憶が定着されるといいます。

眠っているときにいろんなアイディアが沸くという話がありますが、このレム睡眠時に発見された世紀の大発見というのもいくつか例がありますのでご紹介します。

睡眠時にひらめいた世紀のアイディア例

①ベンゼン環の化学構造の大発見
②元素の周期表の発見 

ドイツの科学者であるケクレさんは、睡眠中のひらめきから、当時謎であったベンゼンの炭素の結びつきに関する着想を得たといいます。

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またロシアの化学者ドミトリメンデレーエフさんもまた睡眠中に、あの「水兵 リーベ ぼく の 船」で中学校時に覚えることを苦労した元素の周期表の規則性発見に至ったといいます。

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さいごに

いくら睡眠をとると記憶が定着するからと言って、必要以上に寝たりするのは逆効果です。また日中だらだらと活動したり、集中できない状態で勉強しても脳を記憶するために必要な適度な刺激になりませんので、やるときはやる、やらないときは休息するというメリハリが重要なのかなーと思います。

私も色々と集中できない状態で、淡々と作業してしまうときがあるのでしっかりとやる気スイッチを見つけて、心身ともに健康な日々を意識したいと思います。


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----------------------------------以下出典----------------------------------

*1:https://www.oecd.org/gender/

*2:『潜在的睡眠不足』の解消が内分泌機能の改善につながることを明らかに:https://www.ncnp.go.jp/up/1477381449.pdf




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