チャリンチャリン♪ 澄んだ高音が遠くから聞こえてくる――。 「――▢◇※△▢◇※○ッ‼」 ――ん? 「どぉぉおおおいてええええぇぇええッ‼‼‼」 「うわぁあっ⁉」 …… そこは急な坂道で――。 真夏の陽射しが強く照りつける中、人身事故寸前の状況からその夢は始まった。 遠くに赤髪の女が「ごめんなさあい」と言っているのが聞こえる。 九死に一生を得る、とはこのことか……。 深いため息をつき、そっと胸を撫でおろした。 ―― チャリン……
しばらく体調不良が続いていたが、だいぶ良くなった。 寄る年波には勝てない…
意識しないと勝手に昼夜逆転する…
鬱気味…
三十路のおっさんになって、ふと思うことがある。 あの頃に戻れたら、と。 ―― 今日も学校はつまらない。 少数ながら友達はいる。 でも、彼らから俺を誘うことはない。 もし、仲間に加わりたければ、自分から入ってこいという感じだ。 それはつまり、彼らにとってその選択が安パイなだけであって、俺に対する友達としての感情は極めて希薄、親密度は明らかに低いのだ。 それでも話していると楽しくなってくるから、初めのうちは自分から輪の中に混ざりに行っていた。
俺は人生でバズったことがない。 でも、なんとなくどうすればいいかは分かる。 例えば、美女がうんこを貪り食うASMRとか、嫌いなやつの部屋にグレネード投げてみたとか、ヤクザのアジト空き巣してみたとか、警察署をハックして信号めちゃくちゃにしてみたとか。 ただ、まあ、できない言い訳が真っ先に脳裏をよぎるよね。 犯罪だからとか、需要ないからとか、迷惑だからとか、そういうのはできない自分を正当化するための言い訳だね。 でも、どっちにしてもコンプライアンス的にアウト
俺はそのゲームを四年ほどプレイし続けていた。 「し続けていた」というのは、今はもうそのゲームから足を洗ったということだ。 俺がそのゲームにハマっていた理由は、オンラインのPvPだ。 つまり、プレイヤー同士で殺し合うということ。 それを四年間、続けていた。 最初は下手なやつでも、続けていると不思議なもので上手くなっていく。 それは、負けた原因を追求するかどうかとか、対人用のアイテムや装備を調えられるかどうかとか、あとはそもそものハードウェアや回線にも投資
一旦、いろいろ焼いてみようか。 卵焼き、焼き魚、サンマの塩焼き、どら焼き、焼き肉…… 腹が減ってきた。 そんなところで、ふと思うのが「焼き」という言葉の不思議さ。 日本語の特性として本質が後ろに来るから、「卵」+「焼き」だったら「調理方法」を主張しているし、「焼き」+「魚」だったら「食品」を主張しているように思う。 それで考えると、「焼きそば」は後者だ。 俺は悔しい。 もっと「焼き」に頑張ってもらいたい。 だから修飾する。 「燃える焼きそば
師走になれば、新年を気持ちよく迎えるために大掃除をする人も多いだろう。 俺も大掃除をしなくちゃいけない。 ――人生の大掃除を。 小・中学校は地元の公立を卒業し、高校は自分なりに受験勉強を頑張った結果、偏差値もそれなりの進学校に入学することができた。 無事に卒業し、現役で名の知れた大学にも入れて、留年もせず卒業。 ここまでは順調な人生を歩んでいた。 しかし、俺は今「就活」という壁にぶち当たっている。 説明会に参加したりして、数え切れないほどの就職活動
私は都内に住む女子大生。 大学に入学してからテニスサークルに入って、一つ上の先輩に一目惚れした。 私は先輩に振り向いてもらうために、もっと可愛くならなくちゃいけなかった。 どうすればいいのか。 髪、メイク、ファッション、話し方、表情、しぐさ…… 改善しなくちゃいけない点は、たくさんある。 でも、やっぱり一番は「顔」だよね。 私は、整形を決意した。 でも、整形にはお金がかかる。 早く可愛くならないと……先輩に振り向いてもらわないと……。
俺はぬるくなったコーヒーをすすりつつ、ネットの海をさまよっていた。 すると、ある一つの記事が目に留まる。 「冷蔵庫」 世の中にはさまざまな電化製品が溢れていて、冷蔵庫もその例に漏れない。 国内外問わず、多くのメーカーがこぞって心血を注ぎ、今や多種多様の冷蔵庫がこの世に存在している。 しかし、それはあくまで合法的な世界での話である。 「ダークウェブ」という単語を耳目に触れたことがある人は少なくないだろう。 今、俺が目にしている記事によると、 …
あーぁ、まじで世の中、一寸先は闇だよなぁ。 言わば、独房だよ、独房。 右を見ても、左を見ても、視界にうつるのは暗闇ばかり。 なーんも見えやしない。退屈すぎる。 でも、なんか肩に当たってる気がするんだよな。 あ、ほら、また。……いてっ! うあっ! なんだ! その瞬間、昼白色の光が俺の目を突き刺した。 ――少しずつ目を開ける。 すると、脂ぎった岩のように不快な何かが俺をつかんでいる。 それは、たちまち俺を逆さにし、下側になった俺の頭を地面に押しつける。