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なんで子どもって、働いちゃいけないんだっけ?


令和4年。

世界で働く子ども

その数、1億人以上なんだそうな。

魚を売り歩く男の子

日本で働く子どもといえば、子役か、子どもユーチューバー?

日本では、労働基準法により、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了する(義務教育終了)まで、賃金を貰って仕事をすることができない。

日本で働く子どもと言えば、子役とか、キッズユーチューバー?

と、私は最初にイメージするのだけれど、子役は、1日7時間未満、20時まで
あれば、合法的に働いてもよいとされている。

フランスや韓国では、いち早く未成年ユーチューバーへの規制がはじまっている。(日本でもどんどん規制されていくんだろうな、という印象を受けてはいるものの、うちの子たちは、レオ君が大好きで、ついつい一緒になって楽しんでみてます。)

私がみてきた小学生を退学する、シエラレオネの子どもたち


世界の1億人以上のこどもたちは、生き延びるために、そして、学校で学び続けるために、月100時間以上働く。

畑で働く子、空港で荷物持ちをする子、水汲みをする子、物乞いをする子、セックスワークをする子。

最悪の児童労働の形態、というとこういうイメージかと思う。

20代の頃、これらに苦しむ働く子どもの、どれもに私は出会ってきた。

平日の聞き取り調査の様子、左はアラジの現地スタッフ

今は冷静な気持ちで日々仕事をしていくしかないけど、20代前半くらいの頃は、そんな子達をみては、いちいち激しく動揺していた。 

2014年、バングラデシュで、6歳くらいの物乞いの男の子が、道端で転んで泣いたのをみて、私も大きな道路のど真ん中で、世界が残酷で悔しくて、ワンワン泣いた。

2016年、村でバナナを売り歩く子どもが、「お金が欲しい、お腹が空いて、勉強できないんだ」と言ったとき、今でもお腹が出ている子がいるのかと、衝撃を受け、私は何の返事もできなかった。

当初はとにかく、何もできない自分も悔しかったし、圧倒的な世界の格差に、怒りも感じていた。

この子達を、絶対に働かせない。絶対に退学させない。必ず中等教育までは、完了させたい。

と強く願い、NPO活動はあれよという間に7年目。

今ではシエラレオネ共和国で教育支援を行うNGOが本業になり、約400人ほどの最貧困家庭の子ども達が、毎月の日本の寄付者(年約2,000件)のサポートで学校に通っている。

学校に復学した10代のシングルマザーの女の子

子どもが仕事をしちゃいけないのは、なんでだっけ?


NGOを作った自分は、長いこと

「教育」が一番大事

児童労働は絶対にダメ!!

と発信し続けてきた。

けれども、実はこうも思ったりしたことがある。

「子どもってなんで働いちゃいけないんだっけ?」

2017年、24歳くらいかな。

現地オフィスが一つもなくて、現地スタッフが一人もいなかった頃、1年に3回くらい、シエラレオネと日本を行ったり来たりと、活動を本格指導するべく、お金もないのにあちこち駆け回っていた頃。

その頃は、もう本当にいろんなアフリカの子どもと出会ったんですが、もうみんな、ナチュラルに、程度の差はあれど、まぁ、普通に働いてる……。

村では水汲みは子どもの仕事だし、畑仕事もあるし、兄弟が多ければ、みんなは学校に行けないし、そもそも行く学校がないし。

都市部だと、ナチュラルにみんな頭に物を乗せて売り歩いている。お水とか、バナナとか、ポップコーンとか。

だって2018年に政府が初等教育無償化を本格化(これは素晴らしいこと…!)するという世界のスタンダードに近づいていったものの、学校そのものが足りないから、午前中しか学校に行けない子が、午後働いて、午後しか学校に行けない子は、午前中に働かざるを得ないのさ。

それに、内戦を経験してきた親世代の識字率は3割程度で、アルファベットを一文字も読めないまま小学校1年生になった子の約3割は、留年を繰り返して、給食費が払い続けられず、そのまま退学してしまうのね。

そうして、日銭を稼いで生きることが当たり前に、なんてことは今でも起こっているのだ。

途方もない数の子どもが、毎日当たり前に働いている。
毎日私に物を売ろうとしてくる。

「教育を続けることこそが、将来社会をよくしてくれる」「児童労働は子どもの権利侵害」と信じてやまなかった当時の私の意思は

「少しくらい働いてもしょうがないよね…生きるためだもん…」

くらいに物凄い勢いで、混乱してたし、錯覚していった。

2018年のデータによると、シエラレオネでは、51.3%(約90万人)の子どもが働いているので、当たり前の光景といえばそうである。(引用:BUREAU OF INTERNATIONAL LABOR AFFAIRS)

(そしてまた、ここから、最も脆弱な子をあぶりだすのが難しい…。)

冷静になって過去の統計や、経済成長の傾向をみていくと…

こういった、家族を支えるために、日中、街で物売りをする子、村で農作業をする子を完全に取り除くことは、本来子どもがいるべき設備が整っている学校(教室数や学校給食等)が、全体の約6割程度しかないシエラレオネでは、正直まだまだ難しいことだと思う。

SDGs目標年である2030年以降も、中等教育の完了率100%(つまり義務教育を全員が終了する)は、かなり厳しいと思われる。※2020年の初等教育の完了率は約75%

しかし、最悪の形態の児童労働については、世界中で大きな進展がみられている。

児童労働の定義

児童労働とは、子どもが働くことで義務教育完了を妨げるもの、健康的な成長を阻害するもの、仕事に見合う対価を得られないもの

のことを指す。

シエラレオネ共和国では、内戦終結から5年後の2007年、国際基準に限りなく寄せられた「Child Right Act 2007」なるものが発行され、さらに2011年には国際労働機関(ILO)の「最悪の形態の児童労働条約 - Worst Forms of Child Labour Convention(1999年~)」に、批准した。(※最悪の形態の児童労働とは、人身売買、債務労働、強制労働、児童買春及び児童ポルノ、犯罪など不正な活動、武力紛争での子どもの使用を指す)

かつて私が高校2年生の頃にテレビでみた、「勉強がしたい」と言ったダイヤモンド鉱山で働いていた当時8歳のアラジ君。

彼の言葉を聞いて、この活動をやると決意した。

今では、ダイヤモンド鉱山で子どもを働かせれば、懲役(2年以下)と罰金(10 million SLL以下)がつくようになった。

ダイヤモンド鉱山の地主と労働者

私がダイヤモンド鉱山をみにいった2016年には、そこで働く子どもに出会うことはなかった。

他にも、働く子どもの国際基準に照らし、シエラレオネの現状を鑑みたいくつかの守るべきルールが制定された。

  • 子どもは18歳まで(19歳から成人)

  • 子どものフルタイム労働は満15歳から

  • 子どもは20時~6時まで働いてはならない

  • 軽労働には13歳から参加できる(※日本では原則子役しか労働できない)

  • 重労働(海、鉱山、運送業、サービス業、薬品工場、機械工)などは18歳から

  • 子どもの労働には登録が必要な業種がある

  • 「見習い」は15歳から。親・親戚などと職人が互いに合意する。職人は安全な職場環境と食事を用意すること。

  • 18歳以下の子どもを、婚約や持参禁取引の対象にしてはならない(児童婚の禁止 ※ただし親の同意があれば16歳でも法律婚可)

  • 子どもへの性的搾取や、性暴力、合意のない性交渉は、無期懲役を含む刑罰に処す。

  • 政府は、子どもに対して、徴兵・武器使用に関する仕事につくこと等をさせてはならない。(2002年以前は、反政府軍の子ども兵、国軍の子ども兵が1万人以上いたとされる)

変わったのは法律だけではなく、親世代の意識

最悪の児童労働と言われる、鉱山開発や、性的搾取に、強烈な国際社会からなる法律が追いついたに加え。

アフリカの親世代の教育への意識は物凄いスピードで変容していった。

子どもが働くよりも、子ども一人当たりに栄養・医療・教育投資した方がその後のリターンが大きいと認識することが、スタンダードになったのである。

これは、出生率がガクっと減ったことで明らか。

よく、「国際協力すると人口爆発する」「アフリカの人は子どもばかり産む」という、やや乱暴なレスを国際機関のSNS広告のコメント欄でみかける。

世銀の2019年のデータバンクでは、シエラレオネでは内戦開始(1991年)から出生率が女性一人当たり6.7人という時代から、現在では4.17人まで下がっている。これは、日本でもかつてそうだったし、子だくさんは世界のスタンダードだった。

2019年,World Bank Data Bank


シエラレオネでは、人口が増え続け超多子若年化社会(平均年齢18歳)という時代を迎えているのだけど、これは5歳未満児が、下痢、マラリアで以前よりも、死ななくなっているため。

今後、人口増加の全盛期→過渡期と入り約50年で少子化に進み、人口増加率は横ばい(合計特殊出生率が2.0)になっていくと個人的には予測しています。今後どこかで中絶が合法化されると期待するとさらに。

子ども達を、なんとしても学校(できることなら私立)に行かせ、できる限り就学年数を伸ばそうと頑張る親たち。

そんな親たちが増えていることは、圧倒的な数いる働く子どもを減らす、一縷の光だなぁ。

私もできることをしなければなぁ。と日々思ったりしています。

コロナ禍で、働く子どもが世界中で増加している。


コロナ禍で経済が疲弊し、学校が閉鎖され、働く子どもが世界中で増加傾向にある。

持続可能な開発目標(SDGs)8のターゲット7には、「2025年までの児童労働撤廃」が明記されている。今こそ子どもが、子ども時代を奪われず、教育を享受できる権利を全うできるよう、尽力していきたい。

すべてを根本解決することがすぐには難しくとも、現状の圧倒的な数にひるまずに、できることをやっていきたい。と思っています。


公的支援の充実
法律の改正

は、行政が率先してやるべきことだけれど、待っていてはサポートが行き届かない人たちもいる。

アラジは、そんな子どもたちに対して、「最初のチャンス」を届け続けたい。いつか、行政と連携して全国の小学校の「ひとり親世帯」「10代のシングルマザー」のサポートが、全国に、いや他のアフリカ各国にも、応用・実装できるまで。

1月20日まで、マンスリーファンディングを実施しています。
月500円(1日15円)~シエラレオネの経済的困難な状況にいる子どもたちの復学サポートができます。

月500円で本当に現状を変えられるので、ぜひ参加して欲しいです!
あと約80名の仲間を募集しています!
https://syncable.biz/campaign/2090/


今日も、できることを地道に、積み重ねていく。


下里夢美

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