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雲の上を走る中国の青蔵鉄道の星空バー。もちろん酒のつまみは星空です。僕が見あげた星空話も。なぜかイスラム圏が多く、酒がないのですが。そんな話をつまみに。代金は税込み290円


 鉄道ファンにとっての垂涎の青蔵鉄道。チベット問題は抱えているが、やはり1度は乗ってみたいところ。そこで出合う星空バー。今回紹介する動画は、そんな魅力を伝える逸品です。エッセイは世界の星空を巡ります。
 1週、お休みをいただきましたが、この記事は毎週日曜日更新。新しい酒飲み話が加わっていきます。

星空を左右する高度。緯度、天候、微粒子


 以前、専門家に、「世界できれいな青空」について訊いたことがある。こう説明してくれた。
「空の色は高度、緯度、天候、大気中の微粒子に左右されます。太陽光線は、空気の分子にぶつかり、波長の短い紫から青といった順に散乱します。もともと太陽光線には青が多いことに加え、地球は光の散乱が青あたりまで進む大気の厚さをもっています。高度があがると、紫が多くなり、空は濃い紫に包まれます。となるとエベレストの山頂がいちばん青いということになりますが、山頂は天候が不安定。乾燥地帯で高度が高いエリアの空が青さを増します。一方、微粒子が多いと空は白茶けてくる。海は空気がきれいでも、塩分の微粒子が飛んでいるので、思ったほど青くない」
 これは青空の話だが、絶品星空の説明しも応用できる。海から遠い乾燥地帯。高度は高いほうがいい。
 これまでさまざまな土地で星空を眺めてきた。動画で紹介しているチベット高原はやはりトップクラス。標高が5000メートルを超え、海から遠い乾燥地帯だ。
 しかしこれまで唸るような星空をいくつかの土地で眺めてきた。乾燥地帯というのは、かなり重要なファクターのように思うが、日本から行きやすいユーラシア大陸を考えると、イスラム圏が多くなる。つまり酒がない。星空バーとはいかないこともある。
 僕が見あげた星空ベスト3を──。

フンザは星空ビレッジでもある


■フンザ
 桃源郷といわれるパキスタンのフンザ。ここは渓谷で、アンズの花が谷を埋める時期は天国のようといわれる。フンザは3回ほど訪ねているが、花が咲く時期をいつもはずしてしまっている。
 しかしみごとな星空は何回も味わっている。標高は2500メートルほど。正面にはラカポシやディランといった7000メートル級の山々が連なる。海から遠く、乾燥地帯である。青空条件、つまり星空条件を備えているのだ。天候を心配しなくてもいい。
 しかし日程を考える上で重要なのは月。雲がないため、月が出ると、空やフンザの村はかなり明るくなる。とくに満月の夜は。
 僕は月の満ち欠けも考えずにフンザに出かけているが、1回だけ新月にあたり、そのときの星空には息を飲んだ。
 かつてフンザでは酒を飲むこともできたというが、いまは難しいと思ったほうがいい。
■ヘラート
 アフガニスタン西部の街。タリバンが政権を握ったいま、そう簡単に行くことはできないが、20年ほど前に訪ね、その星空には言葉を失った。
 アフガニスタンは徹底した乾燥地帯が広がる。もともと乾いた土地だが、長くつづく戦乱でカレーズと呼ばれる水路の多くが破壊されてしまっている。人為的な乾燥も拍車をかけているわけだ。アフガニスタンは海のない国。海からの距離はかなりある。
 ヘラートはかなり大きな街だが、夜の照明は少ない。その分、星がくっきりと見える。調べると、ヘラートの標高は1000メートル近くある。絶品星空の条件を備えているわけだ。
 標高ということでいえば首都のカブールも1800メートル近くある。星空の条件は備えているのだが、経験的に星空のクリアーさがヘラートとは違う。アフガニスタンは未舗装路が多く、車もそこそこ多い。車で走ると砂埃がかなり舞いあがる。それがカブールの星空をぼんやりさせてしまっている一因かもしれない。

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