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夢が言う、「あいつに嫉妬しただろ」と。

 徹夜した次の日は、起き上がることができない。大抵夢に縛られる。もう充分寝たのに、半覚醒していて、さらには家族の会話が聞こえるのに、体は動かずまた次の夢を見させられる。見る夢全てが「悪夢」。例えば、自分の醜悪な面や修正したい過去、「こんな災難に遭ったら嫌だな」と思っている場面。夢はこれらを映像として突きつけてくる。

1番堪えたのは、20年前に喧嘩別れした友人の夢だ。基本的には、私が狭量だったせいで、彼女の価値観を許容できず喧嘩になったと思っていた。

だが、夢は別の要因も提示してきたのだ。

喧嘩になる前数年間、その子とはいつも一緒にいた。実家を出て1人暮らしの私のアパートに泊まりにきて、一晩中喋っていたこともあったし、毎日会うというのに、手紙のやり取りもしていた。それが、あの子に彼氏ができて一変したのだ。私のポジションに彼氏がおさまった。たまに、気を遣うようにこちらへ来るのが、逆に苛立たしかった。

夢はそこを突いてきた。「愛していたんじゃない?彼女を」と。

性的嗜好は明確にストレートだ。只、取られたくなかったのだ、あんな風采のあがらない男に。私に勝っているのは身長と性別だけじゃない、なのになんであっちに行くの。これではまるで、嫉妬じゃないか。「相手の男に嫉妬した」なんて可能性を突きつけられて、ほとんど泣きそうになりながら夢から浮上した。

たしかに認める、人としてあの子を愛していた。狭量だっただけでなく相手の男に嫉妬したせいで、また、それを認識出来なかった未熟さのせいで、離れ離れになったのだ。

喧嘩の後、彼女は私の気配がするだけで逃げるようになった。そこまで傷つけたのだ、謝罪すら聞きたくないだろう。もはや彼女の人生から綺麗サッパリ私の存在を消すことでしか償いはできない。

2人の人生は別方向に伸びていき、おそらく交点を迎えないまま終わるのだろう。風の噂で、件の(風采の全くあがらない)男と結婚したと聞いた。平和に、穏やかな暮らしをしていることを願うくらいは赦してほしい。


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