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7.11 ぼんじゅん完走寸前企画「私の好きな町」BEST10(後編)~パリ

ということで後編。

どうでもいいが私は旅をしていてこのnote、SNS、個人的日記、出納帳、写真の整理などでかなりの時間を取られている。せっかく旅先にいるんだからそんなことしてちゃもったいない、もっと異国でしかできないことを満喫しないと!――とも思うのだがそうもいかない。実際に体験することと、それを記録して残すこと。起こった出来事を客観視して、中身を確かめること。それをしないと気持ち悪くてしょうがないというのは面倒くさい性格だと思う。じゃ、5位から。

5位 ファロ(ポルトガル)

ポルトガル南部の町。サグレシュからモロッコに向かう途中、アルガルヴェ地方と呼ばれるこのエリアでどこに泊まるか考えた。ラゴスとどっちにするか迷ったが、ファロにして正解だった。だってこぢんまりしてるしボロっちいから。人口もファロの方が多いし、このエリアの行政中心地だが、どうだいこの落ち着く雰囲気は。まるで地元みたいじゃないか。

ファロは地形が変わっていて、町のすぐ外に巨大な干潟が広がり自然公園に指定されている。その干潟の中に飛行場があり、町の真上をガンガン飛行機が通りすぎる。私は飛行機が出たり入ったりする様子を2日間ぼんやり眺めていた。ファロに流れるどこか懐かしい空気は、ポルトガルが脈々と受け継ぐ「サウダーヂ」感覚に通じている気もする。 


4位 タンジェ(モロッコ)

さっきパリでごはんを食べていて、誤って肉を皿から落としてしまった。しーんとしている。「ここがモロッコだったらすぐに猫が集まって奪い合いになっただろうに……」。そう思ってしまう私は、あれほどキツイな~と感じながらも意外とモロッコに惹かれていたのかもしれない。

タンジェはヨーロッパへの窓口ということもあって実は文化度も高い。ストーンズもバロウズもケルアックもギンズバーグもみんな訪れた。彼らが頻繁に足を運んだ「Cafe Hafa」にも行ってみたが、確かに岸壁からジブラルタル海峡を望むロケーションが素晴らしい。

ちなみにタンジェの町中の映画館では私の好きなウェス・アンダーソン監督の新作『アステロイドシティ』がたまたまかかっていて、これは運命と思って観に行った。なんといってもこの映画館のたたずまいがすでに「ウェス・アンダーソンすぎる風景」じゃないか!


3位 ビラノバ・デ・ミルフォンテスなど「漁師の道」沿いの村々(ポルトガル)

ポルトガル南部の海岸を南北に縦走する「漁師の道」。日本ではほぼ情報がない(唯一下記くらい?)トレイル道だ。そこあるのはまだ開発の手が入らない美しいビーチ、目を見張る断崖絶壁、素朴な漁村、大西洋に沈む夕日、強靭な自然……などだが、このルート沿いに点在する村々がとにかく素晴らしかった。

具体的にはポルト・コーボ、ビラノバ・デ・ミルフォンテス、ダンブジェイラ・ド・マール……などだが、どこも私的にどストライク。1ヶ月くらい逗留したいとマジで思う。何がいいって、やっぱりどこもこぢんまりして、リゾートというより海水浴という感じで、それでいて漁村だけにびっくりするくらい美味いメシ屋があって、人もフレンドリーで親切で、夕暮れ時には旅行客も地元民も揃って外に出て、何するわけでもなく沈む太陽を拝む――って、もう最高じゃないですか。

ファロのところでも書いたが、このあたりの村には淡い郷愁感が漂っている。昭和風の朴訥というか。だけどさびれていない。ノスタルジックなのに現役で躍動している。日が暮れてもみんな夜更かしして、子供と一緒にアイスなんか食べて、流しのミュージシャンがブルースを演奏して……それは遠いいつかの夏祭り、土曜の夜のようだった。


2位 エステーリャ(スペイン)

これも小さな町。サン・ジャン・ピエ・ド・ポーを出発して7日目に着いたのがエステーリャだ。まだ巡礼旅に慣れていない旅の初期である。

私はサンチャゴ巡礼道「フランスの道」をちょうど1ヶ月かけて歩いたが、いま振り返って思うのは風景的には初期がベストということだ。州でいうとナバラ、バスコ、ラ・リオハ。カスティーヤ・イ・リオン州に入ると荒野感が増すし、ガリシア州は雨っぽいし廃村も多くちょっと物悲しい。しかしフランスとの国境付近は昔ながらの石橋や教会がきちんと保存され、今も使われている。私はスペインに入って「この国の村々はなんて美しいんだろう!」と何度もため息をついたが、それはこの地方だったからである。

エステーリャも長い歴史があり「古都」ということになるのだろうが、町の人たちがいきいきしていて過去の町という感じがしない。特に観光化されている様子もない。ワインの産地だし、近くのログローニョもタパス文化があるし、とてもいいところなのに。

私的にはこの頃、いったんフランスの道を離れてビルバオ~サン・セバスティアンに流れてみるという案もあった。バスクで美味いものを食べまくり、「北の道」で海を見ながらサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かうのもいいかもなと思っていたが、そのプランは果たせなかった。私はまっすぐフランスの道を歩くことにした。

あのときそのルートに進んでいたらどんな旅になっていたか。エステーリャは「私だけが知る美しい町」として今も夢の中にある。


1位 リスボン(ポルトガル)

さて、いよいよ1位の発表、どこでしょう? さあどこだ?……と、しらじらしくじらしてみたものの、そりゃ盤石の安定感でリスボンですよ。一体どれくらい好きかというと、モロッコで苦しい想いをしていたとき、「いまリスボンは何度だろう?」とちょいちょいリスボンの気温を確かめてしまうくらい好きだった。ほとんどストーカー気味であるが、それだけ私の心にはリスボンがあったってことである。

リスボンは人も街も海もゆるさもゴハンも女の子もトラムもスーパーも目抜き通りの広々とした坂道も全部好きだが、「ポルトガル式歩道」と呼ばれる通りの感触も大好きだ。白と黒の石を使って街のあちこちに美しいパターンが描かれている。使われている石が小ぶりで歩きやすく、サンダルで歩いていると心地よい石の感触が足の裏に伝わってくるのも楽しかった。

「運命の人」というものがあるのなら、私にとっての「運命の町」、それはリスボアである。そういう町に出会えただけで、今回の旅は意味があったと思う。あーまたリスボン行きてー!って、これも遠距離恋愛になるのだろうか。

この企画、これから旅をしたい人たちのために役立つかと思ってやってみたが、冷静に読むとめちゃくちゃ偏っている。はたしてちゃんとしたガイドになるのか? もしよろしければ、みなさんの人生にもっと旅を!


「運命の人」に関してはスピッツさんも「余計な事はしすぎるほどいいよ」と歌っております。



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