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8.2 そろそろ巡礼に出たいあなたへ(装備とアプリと宿のはなし)~広島

後編は装備の話からいっくよー。

◎装備のはなし

特に「持って行ってよかった、助かった」と思ったものを挙げていく。

○スマホ

当たり前ですね。当たり前ですか? 旅に出る前、オールドスクールな私は「デジタルに頼るなんて軟弱の極み。自分の身ひとつで渡世してこそ真の旅人」と思ってギリギリまでスマホを持っていくかどうか迷っていたが、自分の馬鹿さ加減にげぼ吐きそうだ。便利とかラクをしたいとかそういう煩悩を差し引いても、2023年、もはや世界はスマホなしでは何もできない設計になっている。

レストランに行ってもメニュー閲覧&注文はQRコード、電車やバスの切符もネットオーダー&カード決済、紙の地図がほしくてツーリストセンターに行っても「地図? そこにあるじゃない?」とスマホを指さされる始末。無人ホテルでは鍵がわりのパスワードがスマホに届き、気のいい宿のホスピタレイロは「着いたらWhatsAppで連絡くれよ。え、LINE? なんじゃそれ?」。紙地図&宿に直電といった『地球の歩き方』世代としては、もはやデジタルなしで地球は歩けないということを痛感しまくる旅だった。

そんな時代に生命線となるのが電源&Wi-Fiの確保。宿に入ったらまずコンセントとフリーWi-Fiを確認するのが旅の習性となる。私が泊まったアルベルゲは1ヶ所以外すべてフリーWi-Fiを装備していたが、入りがいいか悪いかは別問題。中には機能不全な宿もあるので、SIMの確保も不可欠だ。膨大なパスワード地獄をかいくぐる自分なりの整理術も事前に確立しておきたい。

基本ドミトリーはベッドに寝そべって、死んだような目でスマホのライトに照らされた人が並んでいる。もちろん私もそのひとりだ。デジタルの介入で古参トラベラーが思い描く旅の浪漫は減ったかもしれないが、逆に言えば思い立ったら即出発できて、その場で何でも調べられる「自由さ」はスマホのおかげだ。このnoteのようなリアルタイム発信も可能なわけで。令和の放浪、ミレニアム・ノマドの風景は、もうこれまでと違うのである。

旅中お世話になったアプリに関してはこの下の方で。

○裁縫セット

私はめちゃくちゃ荷物が少ない方だと思う。「あれがないと困る」という不便さより、日々重い荷物を背負う方が断然イヤだ。だから道中不要になったものはどんどん捨てていった。とにかく身軽でいたい人なのだ。

そんな「隙あらば捨てる」私が最後まで持ち歩いたのが裁縫セット。服を繕ったりは一度もしてない。役に立ったのは、足にできたマメを潰すための待ち針。針は地味にSIMカードを交換する際のピンとしても機能した。付属の糸切りばさみは鼻毛カッターとして活躍。荒野を歩いていると意外と鼻毛が伸びるんだにょーん。


○メモ帳とペン

デジタルがマストな世なれど、ではデジタルが万能かと言えばそうでもない。店先で翻訳ソフトを持ち出したものの音声認識も翻訳の方向性も思わしくなく、お互い途方に暮れた例が何度もある。そうなってくると結局アナログが一番早いし便利、となる。

私はパスポートや貴重品を入れたウェストポーチに常に紙と筆記用具を忍ばせ、何かあったらすぐ取り出せるようにしていた。電車チケットを確認する際、スペイン語やポルトガル語では口頭で不安なので紙に書いて提示する。知り合った人に何か教えてもらうとき、メモ帳ごと渡して書いてもらう。逆にこっちの連絡先を書いて、紙を破ってそのまま渡す。ああなんて手っ取り早いソリューション。ペンはキャップ付きは落とす可能性が高いので、ノック式等がベター。

○ワセリン

巡礼初期、私を苦しめたのは足のマメと股ずれの痛みだった。後者は毎朝出発前にワセリンを塗ることで重症化&ガニマタ化を回避した。いくら体力があっても痛いところがあると歩けない。ワセリン役立つー!

○トレッキングポール(ストック)

なんか大げさでやーねーと思っていたが、あってよかった。というかなければ踏破はムリだった。特に山登りの局面のヨイショ!という勢い付けと、山下りの局面のクッション役として活躍。言うなれば2本足だけでは足りず、四肢を駆使してやっと山を攻略したという格好だ。

まあ、つらつら書いてきたが、装備に関してはたいがいのものは道中の店で売っている。大きな街には巡礼者用のスポーツショップもあって、シューズやリュックも購入できる。別に着の身着のままで行っても何でも揃うので、あんまナーバスにならなくていいんじゃないかというのが私の意見。必要になれば(足りなくなれば)買えばいいのだ。


◎アプリのはなし

いろんなアプリを駆使したような気がしていたが、実際使っていたのは案外少ない。他にもいろいろあるのだろうけど、私にはこれで十分だった。

〇Buen Camino

マスト。確かめてないけど巡礼者全員が入れていて、宿にいる大半の時間、これを眺めて明日以降の計画を練っていたと思う。感動するほどよくできたアプリで、各集落にある宿情報、集落間の距離、ゴールまでの距離、歩行ルート、ルートの高低、この場所での注意点などが全部MAPと連動して掲載されている。しかも宿はBooking.comと紐づけられ即予約可能。おまけに「フランスの道」以外にも「北の道」や「アラゴンの道」などどんなルートにも対応。巡礼オールインワン。神は巡礼者に神アプリを与えたもうた!

〇Booking.com

Booking.comはノーストレス。ちゃんと日本語に翻訳してくれるからわかりやすいし安心、簡単操作で宿予約。周辺の宿をMAP上で比較チェックできるのも便利だったな。モロッコ~パリの飛行機もこれでサクッと予約。何の問題もナシ。こんなに簡単にとれるんか!と感動した。

〇AccuWeather

欧州圏は「Yahoo!天気」が使えないので別のお天気アプリを投入。雨雲レーダーの精度がどうなんだ?と思う瞬間はあったが、目安にはなった。

あと「Google Maps」はもちろんフル回転、「Google 翻訳」は対人では機能しにくかったがレストランのメニューなどの対物では効果的。これくらいしかアプリは使ってない。

◎宿のはなし

最後にちょっとだけ宿の話を。

現地で会った人と話をすると、ゴールのサンティアゴ・デ・コンポステーラまでの全部の宿を事前に予約しているという人が何人もいた。確かに異国の地でもっとも避けたいのは「宿がない!」という状態で、それが女性ならなおさらだろう。しかし十何泊も先まですべてFIXしていて、雨が降っても体調が悪くてもそこに必ず行かなければいけないというのはなかなかしんどい状況だ。

私は地図や天気予報を見ながら翌日~3日後くらいまでのプランを立て、その予定に沿って宿を探すというやり方をとっていた。Booking.comで押さえられる宿であれば押さえ、予約を受け付けない先着順のアルベルゲであればBuen Caminoアプリに記された収容者数に応じて「ここは行けそうか?」「厳しいか?」「何時ごろ出ると間に合いそうか?」と判断してドアを叩いた。基本まったくのゼロベースから現地で旅を組み立てていった。

その結果、巡礼初期、週末と人気古都と観光シーズンがぶつかったパンプローナで「宿がない!」という悲劇を味わったものの(下の項、参照)、それ以降は野宿の危機は訪れなかった。もちろん狙っていた宿がFULLだったりしたことはあったが、その都度別の宿を見つけたり、誰かに助けてもらって事なきを得た。

私が歩いた2023年4~5月はコロナ明け&春のハイシーズンで巡礼者盛況、ゆえに宿が不安という状態だったが、それでも現地対応でなんとかやっていけたわけである。さらに、多くの巡礼者は「残り100キロ地点であるサリア以降はいろんなルートから来た人が合流するので本当に宿が取れない!」と、まるで「サタンが来る!」とでもいうような口調で言っていた。私もそれを聞いて覚悟していたが、実際行ってみるとサリア以降の方が宿の確保はスムーズだった。単に運がよかっただけかもしれないが、情報の真偽を判断するのは本当に難しい。それが旅の醍醐味でもあるわけだが。

つまり何が言いたいかというと、宿も案外なんとかなるもの、ということである。それでも心配なら現地で先に行きそうな人たちとLINEグループなど作って、先の土地の込み具合や宿情報を随時教えてもらうという手もある。

お金、体調、装備、アプリ、宿……ここまで説明すれば十分だろう。さあ、行きたい人は覚悟を決めてとっとと旅に出ておくれ。そしてどんどん刺激を受けて、刺激を受けすぎてぼんやりした人になってほしい!

よし、今週中に必ず「ぼんやりした巡礼」最終回を書くぞう。


結局「見る」より「読む」より「やる」が一番楽しいことでしょう。本当にキモチEことは道の上、いや未知の上に。







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