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高校生と「拉致問題」&「歴史教育」

全国高校生未来会議

2019年3月25日、この日から3日間に渡って「第5回全国高校生未来会議」が永田町にて開催された。参加生徒は、全国から集まった高校生300人(一部は中学生も参加)である。

時たまツイッターで「高校生未来会議は、安倍シンパ獲得団体だ」「シールズに対抗したネトウヨ云々」という、言われなき批判を浴びるイベントだが、実際のところは全く違う。運営から政治的思想を押し付けられることもなければ、結論ありきの議論もない。立憲民主党や共産党からも議員の参加があり、何なら参加者の3分の1ほどは「リベラル的傾向」が強いという印象を受けた。3日間の内容としては、「SDGs」「LGBT」「政党別演説会」「政策立案」などがあった。

拉致問題に関するセッション

初日の一番最後のセッションとして「拉致問題」に関する講演会が行なわれた。

まず、拉致被害を克明に伝えるアニメ映画「めぐみ」を観た。とても衝撃的なものだった。私よりも4歳年下で、両親や兄弟から慕われ、幸せな生活を送っていた少女が突如「北朝鮮政府の支持」で「北朝鮮の工作員」によって船倉に押し込められ、強制的に北朝鮮へ連行されたのだ。

これがどれほど非人道的であり、許されざるものか。私は映像の後半あたりから、感情の抑えがきかず、涙を流した。「若し、私が・家族が、そのような目に遭ったら」と考えてしまい、堪え切れなくなってしまったのだ。そして、そのような境遇にある人を奪還することが出来ない現在の状態にも、激しい怒りと悔しさを覚え、「なんとかしなければ」との感情が一層強まった。
 
その後、「救う会」の代表である飯塚繁雄さんの講話があった。飯塚さんは、妹の田口八重子さんが北朝鮮により拉致され、八重子さんは北朝鮮で工作員にされ、既に死亡しているとされている。飯塚さんのお話では、これまでの活動を振り返り、また我々の世代でも「拉致問題」があるということを認知してほしい、という願いが込められていたと感じた。

そして印象的だと感じたことは、参加高校生の「拉致問題」に対する関心の低さだ。

「是非、全国の高等学校でもアニメ映画「めぐみ」を上映して頂きたい。この中で、学校へ帰ったら上映するように頼んで頂ける方は挙手を願いたいです。」

飯塚さんは、問いかけた。これに対し、手を堂々と上げ、意志の表示をした者は“全体の3分の1ほど”であった。私はこれを見て、何とも言えぬ思いになった。

呆れた「歴史に対する価値観」

また、周囲の話や参加者の書き込みから

「北朝鮮が拉致をしたのは悪いと思うが、日本にも非があるのではないか
「日本が朝鮮を植民地支配したのだから 云々…」

というものが有った。また、飯塚さんへの質問でも「飯塚さんのお話では、日本人が優秀だったから拉致されたのは間違いなのでは?シンガポールの方が良いのに…」という的外れなものが有った。(飯塚さんの話の中で「北朝鮮は当時、アジアの中でも優れていた日本人を狙って拉致を行なったのだ」と主張した。)

私はこれらの発言をした高校生に言いたい。「ふざけるな」と。

それが、家族が暴戻不遜なテロ国家に拉致され、殺され、それでも「返してほしい、拉致を認めてほしい」との一心で献身的に活動されている方に向けての言葉か。結局、「全て日本が悪いのだ」「拉致被害者なんてどうでもよい」という誤った歴史認識や歪んだ価値観が根底にあるのではないか、私はそう感じた。

歴史教育の見直しを

 続いて、菅義偉官房長官(拉致担当大臣兼任)からのお話もあった。政権が拉致被害者奪還に向けて尽力している点や、我々の世代でも「拉致問題」をしっかり考えて欲しいというものであった。その後、拉致議連から3名の議員がお話をされた。自民党の古屋圭司氏、国民民主党の渡辺周氏、無所属の松原仁氏であった。この3名の中でも記憶に残っているのが、渡辺氏と松原氏によるもので、内容としては「拉致問題」を主題にしたものであったが、この両議員が強調したことは「近現代史の教育強化」である。

両議員が危惧しているのは、先程提示した「日本が悪い」という史観が日本中に蔓延している点である。話の中にもあったように、「まず我が国の教育に於いては「古代」から学び始め、「中世・近代」に入る辺りまでは時間をかけ、丁寧に行なっているが、明治以降となるとそれが見られない」これが問題なのだ。

両議員はこれに付け加え、中国・韓国が90年代から展開している「捏造を基にした反日工作」にも大いなる危機感を覚え、教育の面から改革していかなければならないと訴えた。

「学校で習わない近現代史を学ぶことが大事(中略)自身の言葉でファクトを基に外国人と話せる知識が必要だ」

渡辺氏はこのように語った。至極もっともな意見だ。なお、この発言とほぼ同じ意見を翌日、希望の党の松沢成文氏(現在は日本維新の会)も語っていた。

とにかく、若い世代の我々が意欲を持って歴史や社会の事を学び、それを基に国際社会に発信していく必要があるのだ。


「左翼史観」の真逆では意味が無い

最後に記す。先程も述べたように、現在の我が国の歴史教育は、いわゆる「自虐史観」に満ちている。その現状を打破しようと、2000年前後から保守界隈では、歴史教育の見直しに躍起になっている。しかし一部では、時たま珍妙な言論をされる方を見かける。

左翼史観の真逆をすればいいのだ!」という安易な発想だ。例えば、

「アメリカに嵌められた戦争なのだから、当時の政府や軍部は悪くなかったのだ!」

近衛文麿の開戦責任、陸海軍の高級軍人、革新官僚などの動き、また開戦後の東條内閣による「憲兵政治」、言論の圧迫、憲政の否定・・・などはどう考えるのか。

「天皇陛下は人間宣言を出した。また国家元首から象徴へと、位が下げられてしまった!」

→ 「新日本の建設に関する詔書」を読もう。


また、最近のものだと、先帝陛下の御譲位に関し、2016年8月8日の「玉音放送」(ビデオメッセージ)へのレスポンスとして、

「陛下は戦後の育ちだから、ワガママなんだよ。」「左派が(譲位に)賛成ということは、きっと何か裏が有る。譲位には反対すべきだ!」

というものもあった。(渋谷方面)

他にも、「コミンテルン陰謀説万能論」「国際金融資本」「ディープステート」などが挙げられるだろうか。

正しい知識を得て(常識をもって)、賢く議論したいものです。

以上

※当記事は、第五回高校生未来会議報告書の一部を改変したものです。

【追記(2021年8月5日)】

まさか、本記事を執筆した当時、未曽有の「コロナ禍」に見舞われるとは思いもしませんでした。最早、多くの国民は政府や自治体の出す「自粛要請」に耳を傾けない状況です。そして政府は憲法上疑義のある特措法を通し、しかも自粛要請に従わない飲食店に対し、金融機関から圧力を掛けるよう画策しました。自粛要請協力金は支払われず、止む無く営業を続けるとこの仕打ち。今一度、統治機構について、憲政について考え直すべき秋が来たようです。果たして今の日本に、正しい知識を得て(常識をもって)、賢く議論できる環境は有るのでしょうか。昨年の米大統領選挙でも、言論界の惨憺たる光景に辟易とした者は多いでしょう。これから10年が正念場です。


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