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「1年くらい頑張れない奴は一生何も頑張れねーよ」

「1年くらい頑張れない奴は一生何も頑張れねーよ」

 高校卒業・大学受験が迫るある日,突然,クラスの担任から生徒にむけられた言葉です.

 いわゆる"自称進学校"にいた私も,例にもれず受験校に悩んでいました.それまでの18年間で,大きな失敗もなく,成績も割合上位をキープしていました.そんなこともあり,この大学受験もこれまで同様に何とか合格できるだろう,そう思っていました.しかし,一向に成績は上がらず,初めて何か大きな越えられそうにない壁を目の前にしているような気持ちでした.高校現役時代塾には通わず,情報収集もろくにしてこなかった私とは裏腹に受験直前になってこれまで定期テストで負けたことのなかったクラスメートはどんどん点数を上げており,想像以上に自分は受験対策が甘かったことを感じました.どうしたらいいのかわからず,ひたすら先行きの見えない勉強をする日々を過ごしていました.

受験

 第一志望を受けても合格できないことは自分でも何となく理解していました.しかしながら諦めきれなかった私はこれまでにない人生の大勝負だと意気込み,自分のできる限りの勉強をして第一志望校に出願しました.もし,仮に落ちてももう一回チャレンジすればいい,と.担任も「1年くらい頑張れない奴は一生何も頑張れねーよ」っていってるし,と.そんなふうに気を紛らわせながら試験に臨みました.

 

F

 結果は不合格でした.しかも,ぶっちぎりの不合格であったと,試験結果の開示を経てのちに知ることになりました.大勝負に大敗を喫したわけです.

 今はどうかわかりませんが,私の受験した回は合格者の最下位からどれだけ点数差があったかを点数の刻みをつけた上でA - E,さらにそれ以上の差がある場合にはFとして示していました.それによると最下位から離れすぎていて階級を判断できないとされていました.つまり,人生初のF判定をつけられてしまったわけです.ダメもとの戦いであったとはいえ,堪えるものがあったのは紛れもない事実です.当時教室で一緒に放課後勉強していたメンバーは,私以外は全員第一志望に合格を果たし,大学生活を始めていったわけですから.「1年くらい頑張れない奴は一生何も頑張れねーよ」こんな言葉真に受けるんじゃなかった,第二志望に変えてみんなと同じタイミングで大学生活を始めたかった,何をやっているんだ自分は.それ以外の感情がありませんでした.

友達なんて誰一人いなかった.

 兄弟のこともあり家計的に厳しく,無理をいって浪人している身で,また田舎が災いして塾が遠かったことや移動も含めた費用の面から週に1, 2回通うのがやっとといったところでした.結局私は近所の図書館にこもり勉強することにしました.

 朝から晩まで図書館で参考書と睨めっこする毎日.友達もいなかったので,「声帯が動かなくなっても誰にも気付かれないよな」そんなことが毎日のように頭をよぎっていました.

この一年くらい

 大学合格することは浪人する上で両親との絶対的な約束でした.毎日12時間以上は当たり前のように勉強していたと思います.合格するための浪人なので,結果を出さなくては何をやっていたんだということになります.一方で,友達もいなく,受験科目以外に触れる時間が全くなくなっていた私は”何か別のことも本気でやる一年にしたい.一年くらい本気で頑張ろう”と思うようにもなりました.そんなわけで,図書館という環境を最大限に生かし,受験科目の独学に加え,読書にも並行して頑張ってみようと奮起しました.

一年後

 一年間心が折れそうな事も多々ありました.何でこんなことやっているのかと思う事もしょっちゅうでした.受験なんてやめたい,何でこんなことになったんだと思う日もありました.それでも,「一年くらいは」と腹をくくって独学と読書を続けました.
 

 一年後,第一志望の大学には無事合格しました.しかしそれだけではありません.一年間のうちにこれまでには読んだことのない分野の書籍に多く出会い,学ぶことができました.ほんとにたくさんのことを.

もう一度過去に戻れるなら

 もしもう一度過去に戻れるならいつがいいかと聞かれたら私はこの浪人時代に戻りたいと答えます.私にとって今までで一番苦しく,味気なく,1日12時間毎日勉強漬けで,先行きに常に不安を抱えなくてはならない,そんな日々だったとしても,です.おそらくこれからも当分はそう答えるだろうと思っています.

合格は副産物だった.

こんなことをいうと「結果が出たからだ」と思う方もいらっしゃるかもしれません.否定はしません.というか多分に「結果が出たから」というのはあるでしょう.しかし,一年間の過程なくして合格は絶対になかったし,その一年間歯を食いしばって継続したからこそ得られたものがおおきかったと思っています.読書の習慣然り独学を貫くということ然りです.こんなに充実した濃い一年間はなかなかないとおもっています.

これから何か挑戦する時には

 ここまでたかだか一年の受験・浪人の経験を長々と綴っただけになってしまいました.でもそのたかだか一年は自分以外の人間にとっての尺度であって私にとっては,やはり,思い入れのある日々であったことに違いありません.そして人生を切り開いたかけがえのない一年になったと確信しています.もとを正せば一度は恨みすらした「1年くらい頑張れない奴は一生何も頑張れねーよ」がきっかけでした.”1年くらい”頑張った結果,多くのことを掴みました.だからこれからも,どんな心が折れそうな時にも「今,このくらいのことを頑張れない奴は一生何も頑張れない,自分ならきっとできる」そう信じて前に進んでいくと決めています.


これから何か挑戦するあなたに

たかだか浪人体験をもとに”挑戦する人に応援”なんて,そんな立派なことはできる立場にないことは重々承知しています.

それでもただ一つ言わせていただくなら.

努力が報われるかわからないが,今できるのはただひたすらに挑戦しつづける.それも全力で.

その道程で必ず将来を切り開く大きな力を得られる.結果は後で必ずついてくる.振り返れば尊い時間だったと思える日が来る.そうなるように全力で.

「今この時くらい頑張れねえ奴は一生何も頑張れねーよ」


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