第10話

〜練習見学後の帰路〜


「あんま大きい声じゃ言えねぇけど、ここんとこずっと1勝がやっとのチームだって理由がわかったな〜」
「あの感じだと、ねぇ…」
「勝ちたくねぇのかな?」
「あの雰囲気だと、ねぇ…」
「まぁ、何人か良さげな人達はいたけどな!」
「私が見た感じだと、良いなぁと思ったのは3人くらいかな?」
「ひょろ長い左とキャッチャーと…」
「小柄だけど体格ガッシリしてる人!」
「あぁー!はいはいはいはい!!」


優希也と里奈が練習見たときの印象などを話し込んでいる。
その傍らで克己は華のことを考えている。


「……き、…つき、克己!」


「ん?何??」


幾度か呼びかけられたこと気がつかない克己に、心配する優希也


「何?じゃねぇよ!俺が何回呼んでもボーっとして返事しねぇし!」
「えっ?マジ?」
「どうしたお前、大丈夫か?」
「(野球部に)呆れてたんじゃないの?」
「それなら良いけど……いや、良かないけど!」
「それにしても克己がこんな感じなの珍しくない?」
「俺ははじめてだぞ!里奈はあるんか??」
「そう言われると、心当たりがないわね。」
「だろ?」
「それにしても優希也、アンタも珍しい反応してるわね」
「そりゃ、なんだ。コイツのこんな状態見せられたらしょうがねぇだろ!」


優希也は"ったく"と言いながら照れくさそうな表情をして
里奈はそれを見てほくそ笑んでいる。
克己は蚊帳の外状態だったが、2人のやりとりを見てハニカム


「お前のせいだからなっ!」


ハニカム克己に向かってそう言った優希也の頬は少し赤らんでいた


……3人は帰宅路を歩く……


しばらくして、落ち着きを取り戻した様子の優希也が克己に問いかける


「なぁ、練習見てどうだった?」
「…まぁ、付いていけるとは思うよ。」


そう返答する克己に『そういうことじゃねぇんだよなぁ』と思いながら


「そうか!頑張ってな!」


と、返す。
小・中学での克己の努力とそれに伴った実力を本人以上に正しく理解している優希也にとって克己があのレベルで付いていけないわけがないことはわかってる。
"2つの懸念点"さえクリアできれば間違いなく即レギュラー、これは親しい友人だからなどの贔屓目をなしに冷静な目で天秤にかけても揺るがない…それくらい克己個人のレベルは高い。
本人はその自覚はないのだが。。

またこの見解は優希也だけでなく里奈も同じである。
里奈は克己のレベルと今日見た鶴崎高校野球部のレベルを比較して、今季の夏の大会でレギュラーとして試合に出場してるところまで想像(イメージ)していた。
それらを事細かく克己に説明しても自覚なしの克己にはのれんに腕押しなことを理解してるため


「頑張んないとね!」


と、励ますに留める。
それに応え克己は頷く。


そんな克己の頭の中は2つの疑問でいっぱいだった。


一つはなぜ黒木華はあそこにいたのか?


木陰で隠れるように見ているように思えた
アレは一体何を意味しているのか?
教室ではあんな感じなのに運動部、野球部に興味があるのか?
もしくは何か他に理由があるのか?
まったくもって理解できない…
克己の中で不思議さが増すばかりだ。

もう一つは監督がいたらどういう雰囲気なのか?

そう、今日は監督が不在だったのだ。。。

入部希望の書類提出期限は明後日
そして翌週月曜日から部活動の一員としての学校生活がはじまる。

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