『シン・仮面ライダー』をあと1320円払って楽しむ方法
『シン・仮面ライダー』を観てきました。
「仮面ライダー」に何を求めるかによって意見が変わりそうな作品だな、という印象をもちました。個人的には、石ノ森章太郎が描いた漫画の映像化と考えるとしっくりくるんじゃないかな、と思います。
『仮面ライダー』の最初の放送は1971年。僕はリアルタイムで見てないけど、中学生か高校生のときに再放送を序盤だけ見た記憶があります。ショッカーの戦闘員がやられると画面が暗くなって泡となって消える演出がすごく不気味で、考えた人すげーって感動したことを覚えています。どんな演出だっけ?とYouTubeで探したら、なんと第1話が公式で無料公開されていました。
平成ライダーや令和ライダーとは明らかに違う、暗さが漂っていますね。このテレビ作品をベースにしたのが漫画版で、初戦では相手の腕が引きちぎられて血飛沫が描かれているなど、さらにダークな世界観となっています。その血飛沫を『シン・仮面ライダー』では再現していて、それがPG-12(小学生以下のお子様が視聴する際、保護者の助言・指導が必要)指定された理由だと思います。
漫画では、改造されて人間以上の力を手にしてしまったことの苦悩も丁寧に描いていて、今の平成ライダーや令和ライダーのような力を追い求めるヒーロー像と違うのも大きな特徴。『シン・仮面ライダー』も、初めて人を殺めたことに苦悶するシーンがあります。その辺は監督の好みというか思想を色濃く反映させた気がします。でも殺人の苦悩は『仮面ライダービルド』でもありましたね。
そして、仮面ライダーといえばマスク。変身前と変身後を特徴づけるものですが、テレビ作品や漫画では怒りで浮かび上がる手術痕を隠すためにつけるという設定になっているのもダークで好き。漫画では、仮面を被った自分の姿を鏡で見るシーンで、こんなセリフがあります。
『シン・仮面ライダー』には上のセリフやシーンは出てこないけど、仮面そのものに現代ならではの機能を埋め込んでいて、それはそれでアリかな、と思いました。
ショッカーも、テレビ作品では世界征服を企む悪の秘密結社という完全な悪者扱いだけど、漫画では肉体的・精神的に優れたごく一部のエリートが社会をコントロールすることこそが人類全体の幸福と考えている集団という位置付けにしているのも面白いです。この辺りの設定を『シン・仮面ライダー』はうまく取り込んでいて、主人公やショッカーの過去の出来事もいい動機付けとなっています。ちなみに漫画では、終盤に日本政府の陰謀が明らかになり、ちょっとギョッとします。
なので、『シン・仮面ライダー』を見る前でも、見た後でもいいから、漫画版を読むことをおすすめします。電子書籍なら全3巻で合計1320円です。
そのほか、よかったところと惜しかったところを。
よかったところ
スタッフロールの中に取材協力として、京都大学RNAウイルス分野の牧野晶子先生、広島大学ウイルス学の坂口剛正先生のお名前があったこと。バットオーグ戦に出てくるバット・ビルス(bat virus)関係?
後半の集団戦で、孤独相と群生相というワードが出てきたこと。バッタの中には集団中の密度が一定以上になると見た目も習性も変わる種がいるという事実を反映させたものです。最後に載せる本に詳しく書いてあります。フィクションを作る人ほどノンフィクションを読み漁っているんだなあ、と改めて思いました。
ハチオーグを演じた西野七瀬さんが衣装含めてよい。とてもよい。すごくよい。とにかくよい。乃木坂時代の推し。バトルシーンも個人的にハチオーグ戦が一番好き。
惜しかったところ
スタートが猪突すぎたかも。特に「オーグ」や「プラーナ」という用語を受け入れられるかどうかだけでも評価が分かれそう。自然な台詞回しで用語解説することもできたはずだし、実際に仮面やベルトの機能は解説していたので、オーグとプラーナの説明がないことが気になった。
オーグはおそらく、機械人間をサイボーグ(cyborg)とよぶので、他の生物との融合体をオーグ(-org)としているのだと思う。プラーナはヨガなどで気や呼吸などの意味で使われるらしいけど、詳しく知らないので割愛。ジョジョでいう波紋?
今週読んだ本
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