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子どもの心をひらく ストレスとの上手な付きあいかた

8月31日、台風の中。
開催も危ぶまれていましたが、
奇跡的にこの時間帯は雨に降られることなく
練馬区のCoconeriホールで無事セミナーを開催することができました。

テーマは、「子どもの心をひらく、ストレスとの上手な付き合い方」

小学校後半から高校にかけての、
いわゆる思春期と呼ばれる時期のお子様を抱えるお母さま中心に集まっていただきました。

今回は、そのダイジェスト版をnoteに残しておきます。

セミナー会場のようす

思春期の子どもを取り巻く現状


上のスライドにあげたそれぞれの数字、
何の数字を表しているかわかりますか?

正解は、、、

・24万4940人・・・小中学生の不登校
・507人・・・小中学生の自殺者数
・約146万人・・・ひきこもりの数(10~60代まで)
・614万8000人・・・精神疾患者の数
・21万9170人・・・児童虐待通報件数


どれも、早急に解決しなければならない問題ですよね。

小中学生の不登校の数は24万4940人。

原因はさまざまあると思いますが、
少なくとも私がいろいろな場でお話をし始めるようになった2019年当時は、

小中学生の不登校者は約10万人、不登校予備軍は約30万人

とお伝えしていました。

そこからわずか5年で不登校者数が3倍に。
不登校予備軍は具体的な数字こそあがっていませんでしたが、
おそらく3倍程度の60万人程度いるのでは?
といわれています。

引きこもりの数や精神疾患も明らかに増えています。
特に、引きこもりの数はどの年代でも2%強が該当しています。

わたしは、児童虐待防止関連のNPOで事務局の一員としても関わらせていただいておりますが、
虐待の通報件数も右肩上がりの状況です。

ポジティブに考えれば「認知度があがった」といえるのかもしれませんが、ネガティブに考えてしまうと「虐待の件数そのものがあがった」とも取れ、とても深刻な状況です。

思春期における主なストレス要因

思春期の子が抱えるストレスはさまざま


いわゆる思春期と呼ばれている小学校高学年から高校生までの年代は、
心身ともに大きな変化が起こります。

それにともない心と体のバランスがうまく保てなくなり、精神状態が不安定になります。

この年代のどの子にも起こることだと思いますが、
個人差が激しく、その現れかたもさまざまです。

我が家には2人の子どもがいますが、
生活環境は全く同じなのに、
正反対の状況が現れていました。

長女は強い言葉で叱られると委縮し、
親だけでなく、周りの大人やお友達に対しても
いちいち顔色をうかがうような子でした。

長男は強い言葉で叱られるとイライラが増し、
反抗的な態度をとる、モノを壊す、無気力になる、
などの行動が今でもみられます。

このように、同じ環境で同じ育て方をしても
全く違うストレスサインを発するのです。

ストレスサインを理解する

前述したように、
我が家の二人の子どもたちは、
委縮したり、イライラしたりというストレスサインを発していました。

あなたのお子様も、
いろいろな形でお子様がストレスサインを発していると思います。
まずはそのストレスサインを見逃さないようにしてください。

以下の図表は
それが全てではありませんが、
主だったストレスサインを挙げています。

主に身体的、感情的、行動的側面からSOSを発信している


また、10日に一度でも1か月に一度でもいいので、
5分だけ時間を作って、
お子様が発しているストレスサインを書きだしてみましょう。

例1)
最近、娘が何度も夜中に目が覚めてしまうようで、朝起きるのが辛そうです。いつも眠そうな顔をしながら学校に行っています。週末は昼過ぎまで寝ていることも増えてきました。(身体的サイン・睡眠障害)
 
例2)
最近、息子がちょっとした一言に過剰反応するようになりました。イライラを携帯にぶつけているので、携帯の画面がバキバキになっています。
(感情的サイン・イライラ)

ストレスに強い子どもを育てる

お子様のストレスサインを見つけたら、
「じゃあ、どうする?」
の部分に切り込みます。

ここで大切なのは
レジリエンス(精神的回復力)を育てることです。

「レジリエンスを育てる」とは、
困難に直面したり、ストレスを感じた時に
・逆境を乗り越えて
・成長し
・状況に応じて適応できる人間になる
ことをいいます。

成長していく過程で、
避けては通れないストレスや困難に対処するために必要なことです。

レジリエンスを育てることで、
心の健康を保てるようになり、
対人関係や社会適応力の向上につながったり、
「やったぞ~」
という成し遂げる力(達成感)を養うことができるようになります。

・成功体験を積ませる
・失敗を受け容れる態勢を整える
・子どもが安心して自分を表現できる秘密基地のような場所を用意する
・子どもが問題に直面した時に自信につながるフィードバックをする
・イライラを抑圧せず、コントロールする力を強化する
・ダメ出しをしない
・いいところを見つけてほめる

上にあげたポイントをを意識したうえで
お子さまに接してみましょう。

心をひらく魔法の言葉

閉じてしまった子どもの心を再び開くのには
時間と根気が必要です。

少しずつ、少しずつ。
昨日よりも1ミリでもいいので
次の3つの方法を意識してみましょう。

お子さまの心をひらくきっかけになるかもしれません。


①オープンクエスチョンを使う

オープンクエスチョンとは、
「Yes」「No」という簡単な答えではなく、
自分の言葉で返してもらうようにすることです。

オープンクエスチョンで言葉のキャッチボールを!

先述した私の長女は
とてもおとなしい性格の子で、
注意をするとすぐ委縮してしまい、
すぐに自信を失うタイプです。

そのため、
一時期、親やお友達の顔をまともにみれないくらい
委縮していた時期がありました。

そんな彼女に、あるとき、
「学校楽しかった?」という質問を、
「学校でお友達とどんなことお話ししたの?」と変えてみました。

すると、それまで
「う~ん」とか気のない返事しかしなかった彼女が、
「今日、お友達とチップとデール(サンリオのキャラクター)の話で盛り上がった!」
と、チップとデールの筆入れを私に見せてくれたのです。

恥ずかしいことに、私はチップとデールというキャラクターは知っていたのですが見分けがつかず、

「どっちがチップで、どっちがデール?」
となったんです。

そこから、チップとデールの見分け方と特徴を
「出っ歯2本がデール!」
「微妙に体の色がちがうし!」
「チップは鼻の色が黒いんだよね~」
と話し始め、その話だけで30分くらい盛り上がりました。

この会話がきっかけとなり、
自分に自信が持てるようになり、
そこから後の彼女の成長ぶりには
すさまじいものを感じました。

②傾聴の姿勢を示す


ひとことで「傾聴」といってもさまざまなテクニックがある


傾聴とは、
相手の話に耳をかたむけ、
相手の気持ちに寄り添いながら
相手の真の意味を探り、理解することです。

最初は、相手の話がうまくまとまらず、長くなってしまうかもしれません。

そこを、いかに根気よく最後まで聞き続け、
穏やかな顔でうなずき続けられるかが
最大のポイントです。

③「アイ」メッセージを使う

ついつい、「上から目線」になっていませんか?


「アイ」メッセージを使うこともとても大事です。

例えば、お子様が学校の宿題をやらずにゲームをしてしまったとき。
「早く宿題終わらせなさい!」
「なんで宿題やらないの!」
と言っていませんか?

これが、「ユー」メッセージ。

「ユー」メッセージは相手目線で言葉を発するので、
とても指示的、攻撃的になってしまいます。
つまり、「上から目線」でものを言ってしまうのです。

同じことを、もし「アイ」メッセージで相手に伝えるとしたら、
「宿題忘れてしまったら、あなたが先生に怒られちゃうんじゃないかって、お母さん心配になっちゃうんだよね」
となります。

相手目線でなく、
「私からみたあなた」と視点を置き換えるだけで、
攻撃的なものいいがなくなります。

ぜひ、お試しください。

学校や専門家との連携

声を大にしてお伝えしたいのは、
「お子さまのストレス管理を家庭だけで解決しよう」
と思わないことです。

実は私自身、この点で大失敗をしてしまい、
一人で抱えこんでしまったがために、
現在、思春期から青年期になりかけている我が子との向き合い方を
再考せざるをえない状況に陥っています。

子育ては一人で抱え込まないことです。

傷口が浅いうちに、
学校や専門家、周りの人たちに相談し、
連携を深めましょう。

各地域、さまざまな支援サービスがあります。
まずは、地元の自治体の窓口に問い合わせてみましょう。

<参加者の声>

・お話を聞いていて「アイメッセージができていなかったなぁ」と思いました。ゲームに夢中で勉強をしない息子に、つい「勉強しなさい!」と怒鳴っていましたが、今日からは、「私はこういうふうに思うよ」という私目線の言葉に置き換えようと思います。
 
・「レジリエンス」という言葉を初めて知り、その重要性を感じました。
ありがとうございました。


セミナーを終えて

思春期のお子さまをお持ちの方は、その向き合い方にとても苦慮しているなぁと感じました。
セミナー2時間、その後の1時間は個別相談をさせていただきましたが、かなり悩みの深い方が多い印象を受けました。

私自身、子どもたちは思春期を超えたものの、その時にきちんと子どもと向き合わなかったこともあり、今なお子どもたちと向き合い続けています。

子育ては、どの家庭もその深さの違いはあるものの、悩みながら試行錯誤していくものだと私は思います。

自分が育ってきた環境しかわからない。
その育ってきた環境が良い環境だったかがわからない。
だからこそ、子育てに自信がない。
できれば、子育ては回避したい。

これは、私自身が子育てを始めた当初、抱いていた率直な思いです。

ただいえるのは、どのような育て方であっても
正面から我が子としっかり向き合い、愛情をもって寄り添っていけば
子どもはその思いに気づいてくれる日が来ます。
結果、子育てに失敗はないと私は信じています。

最後に、私がいつも自分に言い聞かせている、詩人・中原中也の言葉をこのページに置いていきます。

原文ママ引用

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『思春期の子といかに向きあうか/ネクストエール出版














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