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月のレターセット

年に一度フルーツトマトを送る友人がいる。

大学生の時たまたま隣の席になった男の子に、
どこの出身?と聞かれ、
四国の下の方。と答えると

俺フルーツトマト大好きやねん!
今度送ってや!

大学で言葉を交わしたのはそれが最初で最後だったが、その時連絡先を交換して以来、年に一度お歳暮としてトマトを送るようになった。
送り続けて早12年。

トマトを送るとそのお返しに毎回お手紙が返ってきます。
おしゃれで綺麗な便箋に

お前のトマトで俺の健康は保たれている!

と、いうような言葉が真ん中にどーんと一言だけ書かれている。
メールですむやん。と心のなかでツッコミをいれつつ、
ふふっと微笑んでしまうような一言を毎年楽しみにしている自分がいる。

葉書ではなくてわざわざ便箋を選んでいるというところがまた良い。
しかも毎年デザインが違っていて、どこで買ってるんだろうと気になるものばかり。センスがあるっていいなと感じる瞬間でもある。

手紙が嬉しいのは、
便箋を選んで切手を買ってペンを選んで内容を書く、きちんとシールでとめる。
そしてさらにポストまで行き投函する。
その人らしさと、手間隙と時間を自分にかけてくれていると感じることができるからだと思う。
そろそろトマト氏からお手紙が届く頃なのでポストを眺めるのがしばらく日課になりそうだ。

その影響か、可愛い便箋や珍しい便箋を見つけると買うようになった。
文房具屋、雑貨屋、お土産屋などに行くと様々な便箋に出会えることができる。
以前一人旅で名古屋へいったとき科学館のお土産売り場で見つけた、満月と三日月の二種類の便箋セット。
天文学の本の隣に置かれていた、満月と三日月。
少し薄いサラサラした紙に、夜をイメージした紺色の封筒。
珍しいのと月や星が好きなこともあり迷うことなく即決。

そういえば、小中学生のときは文通をたくさんしていたな。
当時はファッション雑誌に文通募集のコーナーなんかあって、それを見て歳の近い趣味が合いそうな子に手紙を送るものだった。
返事がもらえなくて寂しさを感じたこともあったけれど、ポストに自分宛の郵便があるのがうれしくて、色々な人にお手紙を送っていた。
大人になったことと、メールができるようになってから、いつのまにか終わってしまったけれど、お手紙を書くのは今でも好きなので、誰かお付き合いして頂ける人はいないものかと考えたりもする。

肩肘を張らずに自然体の自分を表現できて、今の気持ちをそのままの状態でお届けすることができる。
時々感情的になる文章もあるかもしれないし、気持ちが乗らなくてぐちゃぐちゃな字を書くこともあるけれど、
綺麗な言葉遣いをして丁寧な自分も、乱れた感情でぶつかっていく自分も、全部ひっくるめて届けたものを、心広く読んでもらえる縁があればいいな、
そしてまた気持ち正直なこころの流れをするりと書いてくれたお手紙を貰えたら、こんなに温かくて嬉しいことはないよねと思う。

人の文字を見るのも好きで、字は体を表すという言葉があるように、筆圧や、文字の大きさや癖、その人の性格が表れているようで、ちょっとした心理学者にでもなったかのように、こんな状態なのかなと察するのも楽しいものである。

早速お月様のレターセットを使って誰かにお手紙を書いてみようかな。
三日月と満月と一枚づつ使って書いても面白いかもしれない。
書き方は自由、字は丁寧に、言葉はちょっとだけバランスを考えながら
ピリッとスパイスが入ったような気の利いたことを一つ付け加えて。

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