見出し画像

映画『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

あらすじ

定住する家を失った6歳の少女ムーニーと母親ヘイリーは、フロリダ・ディズニーワールドのすぐ側にあるモーテル「マジック・キャッスル」でその日暮らしの生活を送っている。周囲の大人たちは厳しい現実に苦しんでいたが、ムーニーは同じくモーテルで暮らす子どもたちとともに冒険に満ちた日々を過ごし、管理人ボビーはそんな子どもたちを厳しくも温かく見守っていた。そんなムーニーの日常が、ある出来事をきっかけに大きく変わりはじめる。主人公ムーニー役にはフロリダ出身の子役ブルックリン・キンバリー・プリンス、母親ヘイリー役にはベイカー監督自らがInstagramで発掘した新人ブリア・ビネイトを抜擢。管理人ボビー役をウィレム・デフォーが好演し、第90回アカデミー助演男優賞にノミネートされた。【映画.comより】


「子どもの愛し方」と「子どもの育て方」

主人公の若き母を演じるブリア・ビネイトはショーン・ベイカー監督がInstagramで見つけてオファーした(役者としては)素人。全身入れ墨ではたから見たら「母親として、どうなの?」眉をひそめられるようないでたち。超ベストキャスト。20代前半の彼女(10代で妊娠?)は娘ムーニーちゃん(この子役がまたすごい)を本当に愛している。ただその愛し方が年の離れた姉妹のような、友達のような愛。母親としては眉をひそめられるかもだけれど、ネグレクトしたり、手をあげたりは絶対しない。でもコノ母親には生活能力がない。どんなに子どもを深く愛していても、子どもを上手に(?)育てることはできない。

「子煩悩」と「ワンオペ育児」

よく父親に対して「とても子煩悩な人で」「子どものことをすごく可愛がってくれる」というフレーズが使われるけれど、ワンオペ育児をしている母親に対して「子煩悩ですね」と評することはないんですよね。そこで色んなことを感じてしまいます。ここではムーニーちゃんの父親は全く出てこないし、問題にもされていません。ただ母の愛が深く、時に共依存的であるからこそ、最終的には悲劇になってしまう。彼女が「母親として育てられません!」って手放していたなら実は悲劇を防げたはず。「育てられないのに産むな」って見えるけれど、母親の役割から降りることって本当にむずかしい。「存在のない子供たち」と矛盾するようだけれど、こういったところ誰かと語りたい。

母子を見守る誰かの存在

本当に悲しいお話なんだけれど、悲壮感あふれないのは夢の国DLのお隣であり、フロリダの美しすぎる空の色のおかげと、もう一つは母子を見守る存在によるもの。日本でいうところのネットカフェ難民のように、さびれたモーテルに住み着いているんだけれど、本来モーテルは定住してはいけないから、1か月に1回お隣のモーテルに移るとか彼らなりの約束ごとがある。モーテルの管理人(ウィレム・デフォーが演じていて最高です)はこんな母子を温かく、そして時に厳しく見守っている。


子どもたちのいたずらにはしっかり注意するし、時々はかくれんぼしている子どもたちを隠してあげる。不審者がいたら追い払う。追い詰められ売春行為に走ってしまった母親を責めるのではなく、ここでも管理人が買春行為をしている男性を「おまえも家族がいるんだろ」って追い返すところなんて…本当にやさしい。でも最後の最後は残念ながら、守り抜けないんだよね。でも親でも親戚でもないけれど、近所で見守ってくれる大人の存在が彼女たちの生きる希望になっているはず。

子どもたちのリアルな姿

子どもたちがちゃんと子どもらしくて、やんちゃで、ませてて生意気で…でもそんな子どもの泣く姿(口に指を突っ込んでなく6歳児らしさ)が自然で本当に哀しくなってしまい、一緒に嗚咽してしまい、終了後しばし放心で席を立てませんでした。私は公開初日とその後も何度か映画館に足を運びましたがDVD化、およびAmazonPrimeでも観られますので、ぜひ!2018年のベスト映画でした!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?