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地元の写真を撮影して発表する

写真を趣味にされている人の中には、身近な人や風景を撮影されている人は多いと思います。自分の地元を撮影することは楽しいことであり、新たな発見もあります。今回は地元の写真を撮影する面白さについて書いていきたいと思います。

人はまだ見たことのない風景や世界の絶景に憧れます。オーロラやグランドキャニオンもいいでしょう。せっかくこの世に生まれたのですから、世界中を旅して写真を撮りたい気持ちは当然です。それと並行して、地元を撮影することもお勧めです。

地元を撮影する利点は、なんといってもいつでも撮影できることです。雪が降ったら雪の写真が撮れ、虹が出たら虹の写真が撮れます。移動費がかからず、様々なバリエーションが増えます。続けやすいです。当然と思うかもしれませんが、雪が積もった金閣寺を撮りたいと思ってもなかなか撮れるものではありません。他には時間の経過が撮りやすいです。朝昼夜、春夏秋冬、樹木の成長、建造物の変化など、何十年にも渡って変化を楽しむことができます。生活と写真が一体になることによって、「何を見ているか」撮影者の考えが写真にダイレクトに現れます。


こんなことを言うと「私の地元は何にもないところです」と言う人がいます。でも決してそんなことはありません。例えば、有名なカメラマンが自分の地元に来て、一ヶ月撮影して写真集を出版したとします。その写真集は世界でも賞賛され、大きな賞まで取ったらどうでしょう。「私ならもっといい撮影ポイントを知っている」「自分のほうがいい写真を撮っている」きっとそう感じるでしょう。でももう遅いのです。どう頑張っても二番煎じになってしまいます。そのカメラマンと同レベルではとても認められることはありません。相当ハードルが高くなります。そうなる前に、一度地元と向き合って撮影してみてはいかがでしょうか。

森山大道氏は、ウィリアムクラインの撮影した「TOKYO」に、次のような文章を送っています。「久しぶりに手にした写真集『TOKYO』を前に、ぼくは改めて嫉妬する自分を感じていた。そして『ここはどうしてもオレが写したかった』と思った。」
そうです。悔しいのです。自分が自信を持っている分野なら尚更です。真剣に向き合っている人ほど悔しい気持ちになります。作る側として、自分の中にあるものを他の人の作品として見ることになれば、感動ではなく嫉妬になります。


ここからは、写真を発表する立場から考えてみたいと思います。写真を楽しむだけなら、この先は考えなくてもいいことです。

実は「自分の地元は何にもない」と感じる人ほど有利だと思います。なぜなら、今まで誰もその地域の美しさを発見していない証拠だからです。その地域の素晴らしさを最初に発見するのは自分自身かもしれません。この世に出てない作品を発表できるチャンスです。その地域の第一人者になれるわけです。自分が撮影した写真によって、この景色を見たいという人が現れ、地元に多くの観光客が訪れるようになれば、写真を撮る人にとっては何より嬉しいことです。

東京、京都、富士山などは、相当な人が撮影していて、多くの作品が発表されています。富良野の作品で言えば、前田真三氏は、ほとんどの人が北海道の美瑛町を知らない時期から撮影を続け、素晴らしい作品を発表しています。富良野を撮影するとなれば、前田氏の作品を超えなければなりません。同じ視点、同じレベルではダメです。富良野の全く違う視点を持てばいいかもしれませんが、同じ視点では、ただ撮っただけ、真似ただけ、見たことある写真、になります。

噛み砕いていうと、ジャンルは違いますがモノマネもそうです。誰のモノマネをするかで決まります。今まで多くの人がやってきたモノマネで勝負するのは並大抵のことではありません。モノマネのモノマネになってしまいます。誰もやったことのないモノマネなら、少々レベルが低くても話題になります。


地元を撮影することは、見慣れた景色を再発見することでもあり、簡単なように見えて案外難しいことでもあります。「今撮らなくてもいつでも撮れる」「いつもの景色だから何にも珍しくない」と思うのは当然です。いつまでも今の現状が続くと考えているからです。そんなことはないとわかるには大きな出来事が必要です。そう考えると、地元から離れて海外で暮らしたり、人気の撮影スポットをまわるのもいいと思います。外を見ることによって、地元の良さに気づくことができます。結局は、幸せの青い鳥はどこにいるか、それを考えると答えは出てくると思います。

私は写真をはじめてから、地元(生活圏内)の撮影オンリーで、撮影のためにどこが遠くに行ったことはありません。

でもよく考えれば、中学を卒業してから島を離れ、仕事を始めてもほとんど島に帰ることがありませんでした。それがかえって、島の良さに気づき、地元を見ようという気持ちが芽生え、地元が好きになったのかもしれません。


今回は、地元の写真を撮ることをお勧めする記事でした。
地元の人も知らないような美しさや素晴らしさを発見したときは格別です。写真をやっているからこそ味わえる気持ちです。それを是非発表してください。発見しようとする気持ちが、心の豊かさや人との出会いなど、きっと良いことに繋がります。地元と言っても何を撮ればいいかわからないという人は、まずは地元の神社にお参りするところから始めてみてはいかがでしょうか。神様がヒントを与えてくれるかもしれません。


下は、地元しまなみ海道を舞台にした三部作です。私の身のまわりや遊びの中で生まれた写真集です。限られた時間の中での撮影でしたが、たくさんの人の協力のおかげで完成しました。出版元は写真関係を得意としている雷鳥社様です。


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