友人と縁を切る、ついでに幸せになる
職場に3人、とても仲の良い人がいた。
教科は違えど全員が教師で、歳もだいたい同じで、自然と固まることが多くなり、いつも4人で集まっては美味しいものを食べたり、音楽を聴いたり、ビーチでおしゃべりをした。採用時期はバラバラだったが私が一番早く、歳も上だったこともありなんとなく仕切り役として動いていたような気がする。(*アメリカ東で高校教師をしています)
といってもグループのために何かを決めたりすることはなく、みなが集まりたいといえば家を開放し、誰かが何かを食べたいといえばレストランを提案する、お勘定の端数を多めに払い、お酒を飲んだ彼女たちを家まで送る。
ここまで書いて、もうすでに私はリーダーではなく寛容な使いっぱであったことが自覚できるが、自分ではそれでもよかった。損するわけではなし、一緒にいて楽しいし、仕事を始めて初めてできた仲良しグループだった。
職場の愚痴を言い合える仲良しグループだった。
3年ほど勤めると、彼女たちは同時期にうちの学校をやめ、それぞれ違う学区だけどお互い近い場所に職を見つけ引っ越した。お別れ会を3回うちで行い、また一緒に遊ぼうと約束し、彼女たちはうちから3時間ほどの街に移っていった。
その3ヶ月後に私は彼女たちと絶縁する。
メールも、テキストも、チャットも、電話も、フェイスブックも全部ブロックした。
3年間毎日顔を合わせ、親友だと思っていた彼女たちと縁を切ったのは些細な一件だったが、立派な決定打となり私は3人しかいなかった友人をまとめて失った。
12月に急にみんなで集まろうということになり、私が長距離バスを使って3人を訪ねることになった時のことだ。直前に決めたけれど、みんな楽しみにしていて、それぞれへのプレゼントも揃え、レストランも決め、誰のアパートに泊まるかも決めた。私は往復のバスのチケットも買い、週末にやらなくてはいけない仕事は早めに終わらせた。
彼女たちは週末ごとにランチをしたり映画を見にいったりしているが、私は3ヶ月ぶりに会ってみんなでお喋りするのを楽しみにしていた。
なのに金曜日の朝に届いたメールを見て、私は理由も聞かず・言わず、読んでものの2分でこう返信した。
I am not coming. Enjoy your weekend. Don’t bother to reply.
私は行かないよ。どうぞ楽しい週末を。返事は不要。
そのメールは一人の提案から始まっていた。
ヘイ、金曜の夜は私の妹の彼氏の誕生日パーティーに行こう。どこどこのクラブでやるよ。
いいね、一度行きたかった、行こう行こう。
楽しそう、やった〜、なに着よう!
そんな感じのやりとりだった。
それを見た瞬間に自分がお金を払い、3時間かけて、わざわざ出かけていくのがバカらしくなった。
腹をたてるような大事件でもなく、ただのプラン変更だった。変更はこれまでもよくあり、日にちが変わったり時間や場所を変えることもあったから、別に驚くことでもなかった。
ただ、自分が思っていた友人との週末と彼女たちの週末に対する温度差が大きかったのに腹が立った。そして大人気なく、先の返信を送った。
バスの払い戻しはなく、荷物も詰めてあり、プレゼントはいらなくなった。
友達もいなくなった私はどう考えてもこの一件で損をした唯一の人間だった。
だけど、それからもう何年も経つが全く後悔していない。
縁を切ってよかった。それからというもの毎日清々しい気持ちで仕事に行っている。
後で思うと自分が何かと折れていた部分が思っていたほど “ま、いいか” と思えることでもなかったのがわかる。友人関係を維持し円滑に物事を進めるために、自分は我慢していたとわかると、関係を絶って良かったと心底思う。
時間にルーズで連絡なしに何十分も遅れる。
人の物を丁寧に扱わず壊す。
職場の人間の悪口を面白おかしく言う。
借りたお金のことを忘れる。
人のものを羨ましがり欲しがる。
どれも小さい不満でそれ以上にみんなでの楽しい時間の方が大切だから、別に怒ることもないのだと自分を説得していた。気になればやんわりと指摘するが改善することもなく、自分が気にしなければいいのだと思ってきたのがよほどストレスになっていたのだろう。
その後彼女たちからジャンジャンメールが来た。
シマは誤解している、心が狭い、親友だと思っていたのにひどい、そんなんじゃ新しい友達もできないよ、という内容だった。
それを一気にゴミ箱に入れ、彼女たちのメールアドレスをスパム扱いに設定し、電話番号を削除し、ブロックし、フェイスブックをアンフレンドにした。
ちょっとの未練もなく、真に清々しい週末を送った。
そしてそれから何ヶ月が過ぎてから、自分の生活がもっと楽しいものに変わっているのがわかった。
もう一緒に愚痴を言う人がいない。
なんとか先生がムカつくとか学校のこの行事は馬鹿馬鹿しいとか、そんな不満を探しては吐き出す人がいなくなった。
ネガティブな発言を聞くこともなく言うこともないと、不思議にわざわざ不満を探したりイライラしたりすることもない。マイナスの連鎖が切れたんだ。
縁を切った友人よ、私は今とても幸せです。
シマフィー
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