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悪いことはしないでくれ

気分が沈んでいる。

昨日も今日も何となく授業に身が入らず、夜は何度も目が覚める。
コーヒーを飲み、美味しいヨーグルトを食べても、何となく気分が沈んでいる。
宿題の添削も、職員会議も、明日の準備も、何となく面倒だ。

理由はわかっている。
生徒の一人が退学になったからだ。(アメリカの私立高校で教師をしています)

これまでもちょこちょこと小さな問題があったし、最近は成績も芳しくなかった。
親を交えての面談やカウンセラーの先生との時間もあったが、改善せぬままに、またひとつ問題を起こしてしまった。
そして野球の三振、ストライクアウト!のように、退学が決定した。
本人は問題を起こした時に、もう退学だろうとわかっていたのだろう。
これから先のこと、転校の手続きやら成績表のことやらを ハイ、ハイ、とおとなしく聞いていた。

彼は先生方やクラスメートに短くさよならを言い、割とさっぱりした顔で先週金曜に転校していった。

さっぱり出来ないのは私で、それ以来ずっと気分は沈んでいる。

何かしてあげることはなかったか、という後悔も多少あるが、単純に一人の生徒が消えた、という事実を受け入れるのが困難で気分が沈んでいる。
彼は自分の非を認め、責任を取るために現実を受けとめたのに、どんな理由であれ生徒がいなくなると悲しくて落ち込む。

隣同士に並んだ間違い探しのイラストを見比べるように、消える前・消えた後の映像が頭に浮かぶ。彼の席が空いているのをみると寂しい。多分クラスのみんなもそう思ってる。誰一人として彼の名前を口にしないけど、わざとなのかもしれない。一人の退学は一人だけに影響したものではないのははっきりしている。

退学は生徒本人にも、親にも、辛いものだと思うけど、教師も辛いんだよ。私が退学の決定を下したわけではなく、問題行動を見つけたわけではなく、私個人はこの件には全く関係ないけれど、それでも傷ついて気分が落ち込んでいる。

だからどうかもう誰も悪いことはしないでくれ。
皆んな悪い子ではないのだから、悪いことはしないでくれ。自分のためにも人のためにも、悪いことはしてはいけない。

新しい学校が、彼に合った良い学校で、たくさん良い人に巡り会えるといいな、と願っている。

シマフィー

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