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成績つけたくない病

期末テストを作っている。

1教科、大体2時間が割り当てられるので、読む問題やら書く問題やら、図形や絵を書く問題も大量に作る。これまで教えてきたことや話し合ったこと、学んだ新しい単語やコンセプトなどを盛り込んで、なるべく知識が偏らないように作るようにしている(*アメリカ東で高校教師をしています)。

歴史のテストだと年号やら人の名前やらを入れたくなる衝動をぐっと堪えて、なるべく暗記すればパスするような問題は作らない。地図やグラフや絵画を使い、歴史のなかの出来事や人物や条約や貿易やなんかがどんな風に繋がっているかを理解しているか、もしくはその繋がりをうまく説明できるかを聞きたいのだが、紙のテストだと限界もある。

今日は9年生の生徒が放課後、質問にやってきた。歴史の質問ではない、どう勉強したら高得点が取れるかの質問だった。

彼は真剣だ。将来はハーバードかイェール大学に行きたいのだ。それにはどの教科もほぼ満点で学年を終えねばならない、なのに、先学期の期末テストは80点だった。頭のいい彼は、重要な出来事などはきちんと頭に入っていたが、想像力と多方面から物を見る力が弱かった。テキストの行間を読んだり、人物の立場になって考える力はまだ発展途中だった。授業中に何度もそのような力をつけるアクティビティをしたりディスカッションをしたりしたのに、彼は黙って座っているだけであまり参加しなかった。一度はアクティビティの間、数学の問題を解いていて、私にこっぴどく叱られた。

彼は100点に囚われている。多分ご両親もそうなのだろう。学びは楽しいものではなく、次の段階に進むためにやらねばいけないことなのだろう。

小さな体の彼が”ここはテストに出ますか?”とノートを指差しながらメモを取るのを見て、またこの病気がでた。

あーーーーーー成績つけたくねーーーーーー!テストもしたくねーーーー!数字で評価を出したくねーーーーー!

成績つけたくない病、1学期に何度か出る。

どんなに良い問題を作っても、そしてそれに対する素晴らしい答えをもらっても、それを76とか92とか58とかで表すのが本当に嫌になる。

前回よりも理解度が上がっている。

前回よりも説明する順序がわかりやすくなっている。

前回よりも深く掘り下げて分析するスキルが上がっている。

そんな風に評価ができたら良いのにな。前回よりも何かしらの力が上がっているなら、全員に”合格” とハンコを押してあげたい。

成績つけたくない病が出ると、テスト作りは休まねばならない。来週までに仕上げないといけないのに、もう集中できない。

今日質問に来た彼も集中できていないだろうな。彼の質問に対しての私は”これを覚えろ、この部分を重点的にやれ”という答えをしなかった。

彼は100点を取るためにどんな準備をするだろうか。成績をつけたくない私が作る問題に悩むことがないような準備ができるだろうか。

シマフィー 


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