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レモンの代打

結婚して割とすぐに今住んでいる家を買った。まだ結婚して、アメリカに戻って、就職してから2年ほどしかたっておらず、ぶらぶら症の私にとっては(注:ぶらぶらについては昨日の記事をご参考ください)家を買うというのはちょっと勇気がいることであった。
夫は若い頃からどうしても持ち家が欲しかったらしく買う気満々で色々と下調べをしていたので、どちらかというと彼を喜ばせたいばかりに家を買った。

二人だし子供も持つ気もなかったので大きな家は欲しくなかったけれど、二人とも共通の“こうでないと買わん”という条件はあった。

一つは人が集まるところから遠いこと。スーパーとかモールとかにすぐ!のところは嫌なので、不動産屋には“なるべく人里離れたところ”と伝えた。隣が垣根から首を出して挨拶したり、近所の子供が目の前の道路をスケボーで走るのも見たくない。

二つ目は庭が大きく木がたくさんあること。なるべくなら作り込まれた“庭園”ではなく、自然に色々生えてる方がいい。鳥や動物がたくさん来て欲しい。

三つ目は暖炉と一部屋づつそれぞれの自室があること。

そんな条件にぴったりとあうこの家を見つけて買ってしまった。直したり変えたりするところは細々とあるが、気に入っている。

そんな我が家だが、実は上の3つ以外に私がどうしても“我が家”に欲しいものがあった。それは木。
ラッキーなことにこの家を建てて私たちが買うまで住んでいた夫婦は造園業をしていたので、庭には私が欲しかった木がすでにたくさん植えてあった。

桜、もみじ、藤、紫陽花、シャクナゲ、ハナミズキ、コブシ、モクレン

欲しいなぁ、あったらいいなぁと思っていたのはもうあった。

なかったのは果物の木で、それは毎年場所を作っては植えていった。
りんご、プラム、梅、さくらんぼ、梨、柿

だけどレモンは無理だった。ここは寒いからレモンは育たない。
なぜだから知らないけど、庭にはレモンが欲しい!夏になるとたくさんなっているレモンをとってレモネードを作りたい!と思っていた私は本当にがっかりした。
“レモンが欲しい!レモンを植えたい!レモン、どうにかして!”

そんな私を見て不憫に思ったのか夫はこの木を買ってきた。
部屋におけるサイズで、私がどうしても欲しがったレモン・・・・みたいな、キンカン!

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植えて2年ほどたってから、毎年たくさん実をつけるようになり、私のレモン欲しい病は無くなった。レモネードはできないけれど、実をもいでポイっと口に入れると甘くて、苦くて、酸っぱいような懐かしい味。
レモンは店で買えるけど、キンカンは売ってないし!

故郷の親戚宅の庭にあった、友達の家の庭にあった、学校の帰り道にあった、キンカン。黄色くなる実を見ながら遠い昔の色々を思い出す。

レモンの代打だったけれど、満塁ホームランを打ってスタメンレギュラーになった。

シマフィー

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