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教師シマリス

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学校の授業、教育系のアレコレ、楽しく学ぶ工夫、そんなことを書いた記事をまとめました。 現在アメリカの私立高校で歴史と科学などを教えていますが、それ以前は日米を含め6カ国で英語・コ…
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#教師

君が留学決める前に言っておきたい:関白宣言

君が留学 決める前に 言っておきたいことがある かなりきびしい話もするが シマリスの本音を聴いておけ 英語ばかりを 学んではいけない 英語だけ出来ても 何にもならない 読書の時間作れ 歴史・数学・美術史 どれも全部やれ 日本語でいいから 忘れてくれるな 国語の読解も出来ない生徒は 英語で読解、分析、論文、何にも出来ないってことを 発音よくても、教養不足で 落第ってこともあるから 英語以外も今のうちから 黙ってたくさん勉強してこい 今時の若い人、さだまさしさんの ”関白宣言”

5ドルで買う夢

帰宅途中、ハイウェイをひとつ手前で降りると小さな中華料理の店を通る道に出る。(アメリカ東で教師をしています) ゴミを極力出さない生活を徹底し始めてからは、もう外食もテイクアウトもしていないが、この学校で働き始めた当時は何ヶ月かに一度、学校の帰りに中華をテイクアウトすることがあった。 包丁も握りたくない、電子レンジでチンするのもめんどい、パンをトーストするのもだるい、それほどに遅く疲れて帰宅することが多かった頃だ。 その小さな中華は、アメリカではどんなに辺鄙な街にでも必ずあ

ファンクラブ(会員2名)

私はアイドルでも女優でもないがなぜだか熱烈なファンがいる。(*アメリカ東で教師をしています) "Miss Shimaaaa, I love you!" 毎日顔を合わせるたびに何度も彼らは叫ぶ。 時にはハグしにくるし、キャンディをくれたり、キャンディをおねだりしたりもする。 一日一度は私がどんなに美人か、笑顔が素敵か、握った手の肌がソフトか(笑)を情熱たっぷりに訴える。 遠くに見えた時には両手でハートを作り頭上に掲げる。 もし動けるのならその場でぴょんぴょんして見てもらお

宿題手伝い隊:勉強以上に大切な学び

3時に授業が終わり、その後1時間から1時間半ほどのクラブ活動やスポーツの時間があるが、そのどちらもやっていない生徒は家に帰るか残って勉強するか、を選択する(*アメリカの私立校で教師をしています) 私はクラブの顧問はしていないので教室に残り、補習や質問に来る生徒たちを待っていることが多い。 誰も来ない日もたまにあるが、そんな日はザックザックと論文の添削をしている。 今学期は最終学期ということもあり、生徒たちはなんとか成績を上げようと必死だ。遅れてしまった課題やプロジェクト、

手を繋ごう

”先生、カフェテリアまで手を繋いでくれない?” 何年か前のことーーーそう真顔でお願いしてきたのはかつて私のクラスにいた12年生の男子生徒だった。(*アメリカの私立校で教師をしています) 私はちょっとだけ戸惑った、というのも我が校は生徒にハグをしたりすることは禁止されていないけれど(一般的には教師は生徒を触らない、という決まりがあります)、手を繋いで歩くことはまずない。 私の困惑が表情に出ていたのだろう、彼は”今日だけ、お願い”とにっこりする。 普段はそんなこと言わない

ダメダメな面接

来年度に向けての面接とデモレッスンが毎週のようにある季節が来た。 私の学部でも正規のフルタイムをひとりとインターン生をひとり雇うことになり、今日はフルタイムに応募してきた女性を面接+レッスン見学をした。(*アメリカの私立校で教師をしています) 彼女はかの有名なC大学Teachers College大学院をもうすぐ卒業する。嫌味なことは言いたくないけれど、超有名校であり優秀な学生で溢れていると思われる大学の大学院だが、ここからの候補者でこれまでに素晴らしいデモレッスンが出来

昼休みくらい自由にさせてやれ

私が勤める学校は割と自由な思考や先進的な考えをした教師が多いと思うが、なんだか古臭い考えの大人も未だに多数存在する。(*アメリカの私立校で教師をしています) 10年ほど前から留学生が増えてきて今では15、6カ国からの生徒たちが勉強しているが、ランチの時間は同じ言語を話す生徒たちだけで固まりがちになっている。日本人の子は私とランチを食べたがるし、中国語やスペイン語や、母語の話者が多い国からの生徒たちは大きな集団になってテーブルを占領したりする。 その様子を”排他的だ、アメリ

Haiku! So cool!

隣の文学の授業で俳句をやっていたのでちょろっと覗いてみた。(*アメリカの私立校で歴史を教えています) 英語での俳句・Haikuは基本的に季語はすっとばし、とにかく5・7・5の形をまず覚えさせる。その先生も懸命に手を叩きながらシラブル(音節)を教えていた。 "Win(パチン)ter(パチン)clothes (パチン)are(パチン)” 音節は1つの音の塊なのでスペルを見ながらだとアメリカ人の生徒にもちょっと難しい時がある。留学生もアメリカ人の生徒も一緒に手をパチンパチンし

優しいなぁ、ありがとう

もうすぐ3学期が始まろうとしているがちょっとあたふたとしている。 理由はいろいろなのだが、一番は校長先生に ”シマ先生、選択科目ひとつやってくれない?” と頼まれたからだ。大抵選択科目は一年の初めにどれをやるかを提出し、それを協議して他の授業や自分の時間割や生徒の興味なんかを加味しながら早いうちに決まる。でないと準備も追いつかないし生徒たちへのアナウンスも間に合わない。(*アメリカの私立校で教師をしています) なのに先週になって校長先生がむちゃぶりしたのだ。シマ先生、ひと

努力が報われるのは10年後の法則

高校生を教えているとプロとして悩ましい壁にぶち当たることが多い。(*アメリカの私立校で歴史を教えています) 教えていることがすぐに直接何かに役だったり、知識のおかげで得をしたり、お金が貰えたり、そんな目に見える形になってすぐに現れるわけではない。生徒たちは読むのも書くのも面倒くさがるし、授業中にどんなに楽しい講義をしても、彼らが家に帰ってからもっと調べてみようとか深く理解しようと時間や努力を割くことはまれだ。 私は生徒たちには歴史や科学や文学などの教科としての知識だけでな

生まれて初めて焼いたパン

私の生徒たちはまだたった14−15歳なので、”生まれて初めて”の経験が日々たくさんあると思う。本人たちは意識せずとも、外から見ているだけでもいいことや、悪いことや、どっちでもないことの初めてがまだまだ日常で目白押しだ。なんと羨ましいことか!(*アメリカの高校で教師をしています) 彼らは時には意図して”初めて”のことをやってみることがある。 昨日はC君にとってはそんな日だった。彼は何を思い立ったか、生まれて初めてパンを焼いたのだ。大人の手を借りずに、Youtubeを見ながら

留学生が落ちた穴、あっちとこっち

私が教える小さな田舎の私立校にも留学生が来ている(*アメリカ東で歴史を教えています)。 6−7年前に留学生の数が一気に増えた時期があった。その大半は中国、ブラジル、ロシアのBRICS(インドからはいなかった)の経済発展が著しい国からだった。この子達の親御さんはどんなご職業なのか知らないけれどとにかくお金持ちで、プライベートジェットやリムジンでやってくる生徒もいた。 彼らのほとんどは高校を卒業してアメリカの大学に進学するというプランのもとにやってくる。彼ら自身がそう決めたの

成績つけたくない病

期末テストを作っている。 1教科、大体2時間が割り当てられるので、読む問題やら書く問題やら、図形や絵を書く問題も大量に作る。これまで教えてきたことや話し合ったこと、学んだ新しい単語やコンセプトなどを盛り込んで、なるべく知識が偏らないように作るようにしている(*アメリカ東で高校教師をしています)。 歴史のテストだと年号やら人の名前やらを入れたくなる衝動をぐっと堪えて、なるべく暗記すればパスするような問題は作らない。地図やグラフや絵画を使い、歴史のなかの出来事や人物や条約や貿

良いこと掲示板

そろそろ2学期も終わりに近づき、生徒たちは出してなかった宿題をなんとか終わらせようと頑張ったり、テストの成績にがっくりしたり、さらには今学期の成績が芳しくないですよとか遅刻が多いですよとか宿題が出されてませんよ、などのメールが校長先生から親に行ったりして、ちょっとアンハッピーな日が多くなる。(*アメリカ東で教師をしています) おまけに外は氷点下だし、先週積もった雪はまだ溶けてないし、マスクは鬱陶しいし、教室の窓も開けなくてはいけないので中にいてもジャケット脱げないし、と全然