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セレンディピティ(偶然の出会い)はデザインできる/大阪芸術大学教授の三木 健さん

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科
クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論
 第11回目の授業は、大阪芸術大学教授の三木 健さんの講義でした。


三木 健さんについて

1955年神戸生まれ。1982年三木健デザイン事務所設立。ブランディング、アドバタイジング、パッケージ、エディトリアル、空間など様々なフィールドにおいて情報を建築的にとらえる発想で五感を刺激する物語性のあるデザインを展開。主な受賞にJAGDA新人賞、日本タイポグラフィ年鑑グランプリ、世界ポスタートリエンナーレ富山銀賞、N.Y.ADC奨励賞など受賞多数。
パーマネントコレクションにサントリ−ミュ−ジアム、富山県立近代美術館。大阪芸術大学教授。作品はこちら http://ken-miki.net/


デザインプロセスに必要な3つの視点

三木さんはデザインプロセスにおいて、3つの視点が重要であるとおっしゃられました。

1. 心づくり:理念
2. 顔づくり:VI(ヴィジュアルアイデンティティ)
3. 身体づくり:behaviorを決める仕組みやシステム、ルール

この3つの視点を欠かすことなく、融合させることで、良いデザインが成り立つとのことです。

ただ美しいだけではなく、生きたデザインをつくるためには、このようにさまざまな観点から考えることが必要なのだということですね。
私も、会社で新規サービスをつくっていたとき、ビジョン(理念)から始まり、次にサービスUIをつくり、最後に運用ルールや、みんなが使えるような仕組みづくりをした経験があったので、このお話は身体性を持って理解できました。


セレンディピティとは、能力である

偶然のひらめき、幸運に出会うことであるセレンディピティ。「偶然」というだけあって、私は今まで自分のコントロールの範疇にはないものだと捉えていました。しかし、セレンディピティが起こる確率を高めることはできると三木さんは仰りました。
例えば、三木さんのデザイン事務所には、大量の書籍と大きな本棚がありますが、書籍の並びは整理してはならないという決まりがあります。
そうすることで、たまたま意図しなかった書籍が目に付き、セレンディピティが起こりやすくなるとのこと。

最近は、あらゆるサイトでcookieが埋め込まれ、自分のログが取られます。ニュースも広告も、SNSで流れてくる情報も、目にするほとんどのものが自分好みにカスタマイズされる一方で、自分のこれまでの思考に則っていないものと出会う確率はぐっと減りました
こんな時代だからこそ、意図的に「偶然が起こりやすい環境をデザインする」ということが重要になってくるんだろうなあ、と感じました。
私の家には、残念ながら大量の書籍はありませんが(kindle派なので…)、ふらっと本屋さんに立ち寄る、普段とは違うルートを使う、友人の誘いに乗ってみる、などできることはたくさんありそうです。


止まらない電車には乗らない

また三木さんの言葉で特に刺さったのは、デザインを行うとき、「止まらない電車には乗らないようにしている」ということ。止まらない電車というのは、納期がガチガチに決まっていて、自分がやり直したいと思っても絶対にやり直せないデザインワークのこと。
時間がないからやり直さないという選択をしてしまうと、良いデザインにはならない。ほとんどつくり終わっていた時点であっても、サンクコストを恐れず、納得いかなければやり直す勇気を持たなければならないんだ、という言葉はとても響きました。
仕事をしていると、納期を守らなければいけない瞬間は多々ありますし、クライアントに迷惑はかけられません。しかし、最後の最後までこだわり抜くこと。納得いかなければ、白紙に戻すことを恐れずに行うこと
デザインや仕事を行う上で、とても大切なスタンスを教えていただきました。

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