志摩の住まいを考える9つの章

志摩市と三重県建築士会志摩支部による協働事業「志摩の気候風土と住まいづくり学習」の一環…

志摩の住まいを考える9つの章

志摩市と三重県建築士会志摩支部による協働事業「志摩の気候風土と住まいづくり学習」の一環として、愛知産業大学造形学部建築学科に委託された研究プロジェクト「志摩の住まいを考える9つの章」の公式アカウントです。 ヘッダー画像作図:東原達也(東原建築工房)

最近の記事

1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具|【4】住まいを考える絵本

ふだんから生活の拠点としている住まいについては、その存在があたりまえすぎることもあって、そもそも「住まいとはなにか」なんて考える機会は早々ありません。ただ、日々の生活のなかで、そんな「住まいとはなにか」という問いに思いがけず触れてしまう時間があります。それは絵本を読み聞かせするとき。 絵本は子どもを対象としているがゆえに、より本質的な意味や価値を、しかも平易な言葉で表現されています。子に読み聞かせしている大人の心にも「そもそも〇〇ってなんだ」という問いを突きつけてくるのが絵

    • 1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具|【3】ふたつの住宅像=「おいえ」と「おうち」

      あっと驚く博太郎終戦直後、建築史家・太田博太郎は、日本建築学会の仕事で炭鉱労働者向けの住宅のあり方を検討する対策委員になりました。当時の日本は、傾斜生産方式と呼ばれる方針のもと、国を挙げての石炭大増産に取り組んでいた時期です。炭鉱ではたらく労働者をたくさん確保するためには、炭鉱労働者住宅の改善も求められたのです。 その業務のなかで、30年以上たっても忘れられない体験を太田は著書『床の間』に記しています[図6]。 太田は、てっきり「もっといい台所を」だとか「広い家に住みたい

      • 1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具|【2】建築家・浜口ミホのつまづき

        戦前までの封建遺制を脱して、あたらしいこれからの住宅の理想を掲げた名著として今も語りつがれるのは、西山夘三『これからのすまい』(1947年)と、浜口隆一『ヒューマニズムの建築』(1947年)、そして、浜口ミホの『日本住宅の封建性』(1949年)です[図3・注3]。浜口ミホは「女性建築家第一号」として知られています。 浜口の『日本住宅の封建性』には、「封建的な住宅」から「近代的な住宅」へ、「格式主義」を改め「機能主義」に、といった二項対立の構図が強く打ち出されています。 「

        • 1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具|【1】加古里子を手がかりに

          絵本作家・加古里子の『あなたのいえ わたしのいえ』は、1969年に月刊「かがくのとも」第3号として出版された絵本です[図1]。なぜ屋根や壁、床やドアが必要なのか。住宅の機能・目的をわかりやすく説く科学絵本の傑作です。 ところで、加古がこの絵本を描こうとした動機には、いまだ浴室やトイレのない寄宿舎などに住む人が大勢いた住宅事情が背景にありました。そこには戦争の傷跡がありました。加古はこう書いています。 この絵本が発行された1969年の日本は、いまだ戦争の傷跡が残りつつも[注

        1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具|【4】住まいを考える絵本

          はじめに|志摩の学びほぐし

          法社会学者・川島武宜の著書『イデオロギーとしての家族制度』(1957年)[図1]には、阿児町安乗の結婚習俗について書かれた「志摩漁村の寝屋婚・つまどい婚」が収録されています。 当時、定型とみなされていた結婚のあり方=「仲人結婚・よめいり結婚・労働結婚」の真逆をいく「自由結婚・つまどい結婚・非労働結婚」の特徴やその背景を調査・考察したもの。現地調査は1944年から1946年という敗戦をはさんだ数年間に実施されたもので、安乗のほか和具や桃取でも行われたといいます[注1]。 6

          はじめに|志摩の学びほぐし

          「志摩の住まいを考える9つの章」発刊にあたって

          このアカウントは、志摩市協働事業「志摩の気候風土と住まいづくり学習事業」の一環として、三重県建築士会志摩支部からの委託を受け、愛知産業大学造形学部建築学科が実施した研究成果をまとめた小冊子『志摩の住まいを考える9つの章』の内容をWEB公開することを目的としています。 全9章、B5判77頁の小冊子を順次公開していきます。よろしくおつきあいください。 ************************************************** 発刊にあたって全国の地

          「志摩の住まいを考える9つの章」発刊にあたって