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「志摩の住まいを考える9つの章」発刊にあたって

このアカウントは、志摩市協働事業「志摩の気候風土と住まいづくり学習事業」の一環として、三重県建築士会志摩支部からの委託を受け、愛知産業大学造形学部建築学科が実施した研究成果をまとめた小冊子『志摩の住まいを考える9つの章』の内容をWEB公開することを目的としています。

全9章、B5判77頁の小冊子を順次公開していきます。よろしくおつきあいください。

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発刊にあたって

全国の地方都市には、いまだ古い木造住宅多く存在しています。ただ、その多くは老朽化し、空き家となるものが増えています。また、耐震性能の評価が難しく、寒い・危ないなどのイメージが先行し、せっかくの良さを生かした利活用も少ない状況となっています。こうした悩ましい状況は、志摩も例外ではありません。

古民家から現代住宅まで新旧さまざまな家屋が肩を寄せ合うように建つ故郷のまち並みは、志摩の原風景となっています。その景観を守りたいとの声は少なからずあるようです。また、それら古い家屋の所有者にとっても、思い入れのある大切な財産として可能なら有効活用したいという思いも聞きました。

今回、志摩市と三重県建築士会志摩支部による志摩市協働事業の一環として、愛知産業大学造形学部建築学科へ「志摩の気候風土と住まいづくり学習事業」を研究委託いただく機会を得ました。志摩地域に残る古い木造住宅の価値や性能、そして現在へと至る住まいの変化について理解を深める「学習」の種子を育て、志摩の地に蒔くことをめざして、2022年4月から準備をはじめ、7月から翌年2月にかけて実施してきました。

具体的には、これまで志摩地域で行われてきた気候風土や住まいに関する研究などを整理したほか、古い木造住宅の耐震性能や温熱環境における基礎的な調査やワークショップを行いました。実施にあたっては、三重県立伊勢工業高等学校建築科・建築研究部の協力を得ることでき、とても充実した内容を展開することができました。

地域の風土や居住文化を守っていくには、建築技術や住居への知識が若い世代へ継承されていくことが大切です。技術育成はもちろん、未来を担う子どもたちへ、志摩の住宅の特徴や住まい方を伝えることで、市民ひとりひとりが「志摩の気候風土と住まいづくり」について「学習」していく。そのための仕掛けをいくつか設けた成果の一端が、本冊子『志摩の住まいを考える9つの章』です。「住まいを知る」ではなく、「住まいを考える」としているのも前述した「学習」に関係しています。現在、そして未来の志摩市民にとって、本冊子がこれからの、それぞれの志摩の住まいを「考える」手がかりになるはずです。

(宇野勇治:愛知産業大学造形学部建築学科・教授、学科長)

報告書の構成

なお、「志摩の住まいを考える9つの章」の構成は以下のとおりです。

発刊にあたって
はじめに-志摩の学びほぐし
1章|ひとびとが考え工夫してつくった大きな道具
2章|気候風土に生きる志摩の民家
3章|観光資源として編成された「志摩」
4章|時代とともに移り変わる住まいのあり方
5章|国府地区の古民家と屋敷構えを読む
6章|古民家を再生する/伝統の技をつなぐ
7章|古民家の耐震性と耐震改修の考え方
8章|中古住宅と向き合い、活かし、看取る
9章|学びなおす/学びほぐすためのブックガイド
おわりに-刺身とクレーム
研究の記録 研究組織・学習事業の概要
編集後記・謝辞

研究組織

本研究プロジェクトは下記のメンバーによって実施いたしました。

研究代表者
 竹内孝治  愛知産業大学造形学部建築学科・准教授
研究分担者
 宇野勇治  愛知産業大学造形学部建築学科・教授・学科長
 秋田美穂  愛知産業大学造形学部建築学科・准教授
 西村菜見子 一級建築士事務所 ナミ構造設計・主宰
 平賀美希  愛知産業大学大学院造形学研究科建築学専攻・修士課程
研究協力者
 東原達也  東原建築工房・代表、三重県建築士会志摩支部・副会長
 東原大地  東原建築工房・大工

学習事業の概要

愛知産業大学造形学部建築学科による企画・運営のもと下記の学習事業を展開した。事業の実施にあたっては、三重県立伊勢工業高等学校建築科・建築研究部に全面的な参加・協力をいただきました。

学習会「聴竹居と日本の環境デザイン」
日時:2022年7月16日 13時30分~15時30分
場所:Zoom(オンライン)
①話題提供
講義:竹内孝治(愛知産業大学)
「聴竹居と住宅の近代化」
講義:宇野勇治(愛知産業大学)
「パッシブデザインについて」
②意見交換

古民家調査「「旧猪子家住宅」と「いかだ丸太の家」を調べる」
日時:2022年9月4日 13時30分~16時30分
場所:旧猪子家住宅、いかだ丸太の家
①温熱環境調査
企画:宇野勇治(愛知産業大学)
実施:竹内孝治(愛知産業大学)
②建築解説
講師:六浦基晴(m5_architecte)
講師:竹内千鶴(志摩クリエイターズオフィス)

パネル展「志摩の住まいを考える9つの章」
会期:2022年11月14日~11月24日 8時30分~17時15分
場所:志摩市役所1階市民ギャラリー
展示:A1パネル10枚

発表会・研修会「志摩の気候風土と住まい」
日時:2022年2月4日 13時30分~15時30分
場所:Zoom(オンライン)
①発表会
校長挨拶:奥⼭敦弘(伊勢⼯業⾼等学校・校⻑)
生徒発表:丹羽玲央菜(同校建築研究部)
②研修会
講義:西村菜見子(ナミ構造設計)
「古民家の耐震性能:古い家は地震に弱い?」 
講義:竹内孝治(愛知産業大学)
「志摩の住まいを考える」
③意見交換

研究報告書「志摩の住まいを考える9つの章」
企画・編集:愛知産業大学造形学部建築学科
発行:2023年2月28日

パネル展「志摩の住まいを考える9つの章」
会期:2023年4月1日~4月26日 9時30分~18時00分
場所:志摩市歴史民俗資料館
展示:A1パネル20枚

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