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90%の実話!ピンクのサギ編

前世


私の前世は”岡っ引き”だと妻は思っています。

 これまで私は58年間、普通に生きてきたつもりです。
しかしこれまで次のような事件や事故を目撃したり当事者になったりしています。
普通に生きていてこれだけの事件や事故などのトラブルに遭遇するものでしょうか?
①目の前で大小様々な交通事故を10回以上目撃し救出に参加1回、救急車手配をした経験8回。
②窃盗犯を現行犯で捕まえ警備員に引き渡した経験2回。
③痴呆で徘徊している方を保護した経験3回。
④お隣の住宅火災を消火器で消火した経験1回。
⑤路上で殴り合って喧嘩している人を止めに入った経験4回。
⑥飲酒運転中の車を発見し警察に通報、検挙に協力した経験3回。
⑦山中で道に迷い山で遭難した人を偶然発見し警察に連絡した経験1回。
⑧強制猥褻の犯人を警察に告発し逮捕させた経験1回。
⑨会社のお金を横領した人を説得し警察に出頭させた経験2回。
⑩無免許運転で事故を起こし怪我ををしていた未成年者を保護者に引き渡した経験1回。
⑪自殺願望者を自宅に保護し自殺を思い留まらせた経験1回。
⑫当て逃げした車を追尾し警察に通報した経験1回。
⑫詐欺師とのトラブルに巻き込まれた経験6回。
ザーッと思い出して書いてもこのような経験をしています。

 ですから妻に『俺の前世は岡っ引きだと思う』と言うと笑いながら
「きっとそうだと思うわ」と答えます。
一つ一つの事件や事故にはそれぞれのエピソードがありますが、特に詐欺師6件は強烈な印象が残っています。

【 6件の詐欺師の内容 】
1件目 高齢者を狙う焼肉店女将 後妻業詐欺
2件目 M資金詐欺グループ
3件目 競馬配当詐欺師 豪快スナックママ詐欺
4件目 被害総額90億円 動物薬品工業ワクチン開発資金巨額詐欺
5件目 ベトナム不法滞在アフリカグールプの詐欺
6件目 通販用商材商品取り込み詐欺

 詐欺を働く人はとても巧妙に罠を仕掛けます。
そして被害者の心を支配します。
この才能をもっと良い方向に、そして人を騙す労力を正しく使えば、きっと人として素晴らしい存在になるでしょう。
 私はこれまで会った詐欺師ついて固有名詞以外は記憶に残っている事を正確にお伝えしたいと思います。

 1件目 高齢者を狙うアカサギ

本番をやるピンクの詐欺 女郎蜘蛛と呼ばれた夜逃げ女

引き寄せられた私と女詐欺師との出会い。

 1995年ごろ私がまだ20代のころの実話です。
東京の会社を辞めた後、地元に戻りとりあえず肉の卸会社へ就職しました。
所属した会社は中小企業で部署は新規開拓の営業部でした。
任務は大手のお客様を切り崩す事でした。

 ある休みの日です。
近所に新しくオープンした”鶏鍋の店、鳥鍋屋 春”と書かれた看板をみつけました。
私は早速この新しい店に入ってみようと思い、年下ですが同期入社の宮丸君を誘い二人で食事をに行きました。

鶏鍋のイメージ


 私はの仕事は和牛の枝肉の営業です。
愛車の2トントラックに朝の8時に和牛の枝肉を載せてステーキハウス ホテル スーパーに和牛の枝肉をみせて商談、後日それぞれの部位に切り分けてパックに詰めて納品する毎日でした。
 ですから鶏肉をつかう鳥鍋屋さんは管轄外でしたが、同期の宮丸君は牛以外の肉も売る小売り部所の社員でしたので、少しでも彼の売り上げになればと思い、お会計の時に自分達の自己紹介をし、取引のチャンスを伺う事にしました。

「いやーお鍋美味かったです。僕たち三田村畜産の者です」ちゃんと挨拶をしました。
すると「はいー?」とハスキーな声を持つ女優の”木●実なな”さんによく似た50代前半の女将は少し怪訝な顔をみせて作り笑いを返してきました。

私が「また何かお役にたつ事がないかな?と思いまして」と言うと 
目を逸らしてやや伏し目がちに「三田村畜産さん?あーっ別に今はちょっと必要ないねー」とあっさり撃沈されました。

 私は断られると燃えるタイプの営業マンです。
せめてお名刺だけでもとお願いし、無理やり名刺を頂きました。
もらった名刺には 鶏鍋屋 春 女将 山野春美 と書いてありました。

それから数日後の事です。

 会社の先輩のターさんと丸さんが、雑談をしながらトラックへ和牛の枝肉を積み込んでいました。

牛の枝肉


するとターさんが「おいおい丸、そうそう、ハルコがまたどこで店をだしたって噂きいたか?」と話すと、丸さんが「それは知らん!あのババァどこにおるん」と言うと、その会話を聞いていたもう一人の先輩、大森さんが「うっそぉマジか?」と加わってきました。
 3人の話では、なんでも私が入社する一年ほど前に、三田村畜産の事務所の目の前にある今は空き店舗になっている場所に焼肉店があったとの事。
そして三田村畜産はご近所としてのお付き合いもあってこの焼肉店に和牛の肉を卸していたそうです。
ところがある日突然夜逃げをしてしてしまい、三田村畜産は42万円ほど踏み倒され、今もその売掛金が集金できていないという事でした。
その夜逃げ焼き肉店のオーナーが「ハルコ」という名前の女性で、その「ハルコ」がまたどこかで店を出したらしいという情報を同業者から聞いたとの事でした。
この日はここでタイムアップとなりこの話は終了、私達はそれぞれのトラックで営業に出発したのです。

一致する。

 このターさんの話しから数日後、私と宮丸君は休みを利用して春鶏屋へ食事に行きました。できればお取引ができればと思い、意識的に女将に話かけてみましたが、私達を避けている印象をなんとなく受けました。
私達から逃げるように厨房の奥に隠れているように見えました。

 次の日の出勤の車の中でも、どうして鍋屋の女将は私達を避けるのかな?と考えながら自家用車を運転をしていました。
 ちょうど事務所の前の信号が赤になり停車。
この信号を右に曲がればすぐそこが会社の事務所です。
右にウインカー挙げたまま、何となく例の夜逃げした焼き肉店の跡地の、
”空き物件”と書かれた看板を見ていました。
つけたままの車のウインカーが「カッチン、カッチン、カッチン、カッチン」と規則正しく音を発しています。
そして私の目は空き物件の立て看板が縛られている高さ4メートルほどの
店舗の屋号が書いてあったであろう、一本足の自立式看板を見ていました。

看板のイメージ


 それはいつもの風景のはずでした。
しかしこの日は朝降った雨の雫が、袖看板の無地のアクリル面の文字の跡に付着していました。そしてその白無地のアクリル面から剥されたシールの跡に付着している水滴がある文字を浮かび上がらせていました。
シール跡、そこには 和牛焼き肉 ハル と書いてあった事が分かりました。

あっ?! と私は思いました。

 私は事務所に出勤を記録するタイムカードへの打刻のため行きました。
すでに事務所にいた、社長の奥さんに夜逃げした焼き肉屋のオーナーについていろいろと質問しました。

 社長の奥さんは焼き肉屋のオーナー名前が山本春子という名前で、普段の会話からして本当は60歳ぐらいだと思うが、見た目がとにかく若く見えるうえに、口からでる出まかせが上手くて、この辺のおじさんから、相当な額を色仕掛けで貢がせておいて、いきなり消えた事などを教えてくれました。
貢いだおじさんは、田んぼ2枚ぐらいのお金を使ったと噂で聞いているそうです。

 そして私が「もしかして、その女って、女優の木の実ななさん似?」と質問すると「確かにそうねー似てるねー」と言うので、私はますますあの鳥鍋の女将と、夜逃げした焼き肉のオーナーが同じ人物のような気がしてきました。

 次に私はターさんに「前話していた夜逃げした焼き肉のオーナーって今度どこに店だしか知ってるの?」と質問しました。
すると「詳しい場所はわからんが、ミート堀の営業がハルコを業務スーパー諸江で見かけた。その時は鶏肉を沢山カゴに積んでた。だから何かやるんだと思った」って話だったと言うのです。
女が目撃された場所は、私の自宅から一番近い業務スーパーです。
しかも大量に鶏肉を購入していた。

店名に はる が付いている。
木の実ナナに似ている女が経営者。
夜逃げした女が鶏肉を大量購入していた。

これはビンゴ ”当たり” だと確信した。

当たりのイメージ

 私はターさんに、鳥鍋屋の話しをしました。
ターさんはすぐ冷蔵庫で枝肉を整理していた社長に報告しに冷蔵庫の中に入っていきました。

 社長はすぐに冷蔵庫から出てきて「オイそれが本当ならお前集金してきてくれ、うまく取り立てしたら半分やる」
「あの女は許さん」と私に迫ってきたのです。

 後日談ですが、ターさんはハルコと商品の取引以外でかなり仲良くしていたそうです。
そのため厳しい取り立てがし難いだろと社長は考えたそうです。
また近所だったので本人が歩いて買いにきてたため、普通の卸し額より安い金額で肉を納めていそうです。
女への売掛は本来の卸し額に換算すると、60万円近くになる事も分かりました。
 私は臨時ボーナスが入るならとこの夜逃げ女からの代金の回収を引き受ける事にしました。

早速、夕方お店に乗り込むことにしました。

突撃1回目 こんにちは三田村畜産です。



午後3時ごろ鶏鍋屋に行き「こんにちは」と呼ぶと
「はーい」と出てきた夜逃げ女に
「いつもどうも、山本春子さんですよね?今日は三田村畜産としてきました」「うちに未払いの売掛金がありますよね。早速ですが、お支払いください。」と言いました。
「あらーごめんね、今はお金ないのね。お店だしたばっかりやしね」と先日とは真逆の態度でこちらに微笑みながら、「とにかく今日は帰って、ここにおっても無い物はないしね。」「今から病院いくから はよ帰って」と言うとそのまま厨房に入ってしまい気配も消えました。

 

尾行のイメージ


いくら気配を消しても駐車場には車があります。
間違いなく店にいます。
お店の駐車場が見える公園の駐車場に車を隠し、本当に病院に行くのか監視する事にしたのです。

私は持参していた421,650円の請求書をカンターに置き店をでました。

私が店を出てから30分ぐらい経ちました。

すると店の駐車場に一台の白い車が停車しました。
その白い車は3分ほどして動き出しました。
私は女将が乗ったかもしれないと思い、確認をするため白い車の尾行を開始しました。
車の中には二人の影が見えます。
運転席は男、助手席は女シルエット。
あれは夜逃げ女です。

尾行のイメージ


 

この二人が向かった方角にはこの地域で一番大きな大学病院があります。マジで病院か?と思って尾行を続けました。
しかし軽四は病院をスルーし、その先にある二車線の坂道を降りていきまし信号の無い突き当りのTの字で一旦停止し右折に合図をあげて発進。
そして30メートルほど先の路地の入り口ににむかって右折。
すぐまた右折を二度繰り返し住宅地にとある一般的な住宅地に軽四は入っていきました。私は尾行がばれないように距離おき、車を近くのコンビニにおいて徒歩で住宅地にはいりました。

 女将を乗せた車はすぐ見つかりました。
住宅地の奥に建っている緑の蔦が壁を覆っている二階建の家の地駐車場停まっていました。その家は緑の蔦で覆われていますが、外壁も門扉も白色で統一された家でした。その門扉にや「YAMAMOTO]と書いてありました。
どうやらここが夜逃げ女の自宅の様です。

 自宅を確認した私は、またお店に戻りこの日二度目の訪問をしました。
お店にはしっかり鍵がかっていました。
本当に留守のようです。
入り口のガラス越しに中をのぞくとカウンターのおいた請求はなくなってました。
先ほどの助手席は女は夜逃げ女「春子」だと確信しました。

 そして先ほどみつけた夜逃げ女の自宅に向かう軽四がありません。
呼び鈴を鳴らしましたがだれもでてきません。
門扉をあけて玄関までいきました。

玄関には 山本 修
        春子
        隆
        夏子


と名前が書れた表札が下がってました。
 この日はこれ以上時間は裂けないので、一旦事務所にもどり社長の奥さんに報告をおえて帰宅しました。
帰宅する時にはあえて鳥鍋屋の前を通りました。
お店には電気はついていません。
車を動かした形跡もありません。

突撃2回目 自宅に突撃

 この日は夜逃げ女の自宅を訪問しました。
家族がひょっとして少しでも払ってくれるかもしれないと思ったからです。
それに家族と私が会うのはきっと夜逃げ女は嫌だとろうとも考えました。

 夜逃げ女の自宅前に着くとそこには作業着姿の一人の男がいました。
私が近づくと、「山本さんのご家族ですか?」と先に質問されました。
声のトーンが低く、秘めた怒りを感じました。
もちろん「違う」と答え「ところで、お宅はどちらさん」と逆に質問すると、近くの太陽ヨットハーバー内の喫茶店にガスを納めていたガス会社の社員だと分かりました。
「肉屋さん回収?」と聞かれたので「ガスやさんも?いくら」との会話でお互いが同じ目的だと分かりました。
二か月まえまで女はヨットハーバーで喫茶店をやっていた。
ところが突然消えた。
しかも喫茶店を利用するクルージングボートのオーナーから、1000万円ほどお金をもらっていた事が分かって問題になっているというのです。
ガス屋さんの回収金額はガス代金4万円にガス器具代金合わせて12万円ぐらいと答えてくれました。
 そうこうしてると、女の家の裏側から同じガス会社のユニホーム姿の男がもう一人でてきました。
二人目のガス屋の男は女の家の自宅用のプロパンガスをどこの会社が収めているかを見るついでに女の自宅の裏側に行っていたとの事でした。
裏を見てきた二人目の男は「ちょっとこの家は変、色が無い」と首を傾げました。
彼の話では、裏の庭の窓から家の中が見える。


白の家具イメージ


女の家の内装が、真っ白の壁、真っ白のテーブル、真っ白の照明、テレビの台もその前のソファー、ドア、レースのカーテン、冷蔵庫、食器棚、その中の食器すべてが真っ白、とにかく家の中が真っ白だというのです。
そこで私ともう一人で裏庭にまわり中が見える窓を代わる代わる覗くと
確かに家の中は真っ白すぎるぐらい真っ白で不気味でした。 

通告

 私達3人は真っ白ルームの話をしながら夜逃げ女を待っていました。
ご近所の方が数人家の前を車で通るたびに目で追うのですが、これといって不安な表情をだれもみせません。 スルー、無視して進むのです。
もしかするといつもの事なのか?とおもいました。

 そしてそこへ現れたのが郵便の配達員でした。
門扉の前のちょうど郵便の受け口の前に立っていた私は、親切心からバイクの局員に手を伸ばして郵便物を受け取ると合図をしました。
すると配達員はバイクにまたがったまま、手にもっていた葉書を私に渡して去っていきました。
もしかしてこれって犯罪?と思いましたが自然な流れでそうなったのです。

郵便局員

 私が受け取った葉書には 裁判所 通告 差し押さえ実行日 などの文言が印刷され、こんな葉書を見た事がないので、3人で相談し、重要だと思われる内容をメモして、葉書を郵便受けに入れてこの日は帰る事にしました。

さてはてどうしたものか?

 事務所に戻った私は社長の娘で経理担当のちゃーちゃんに きょうの出来事を説明したのですが、届いた葉書についてはよくわからいとの事でした。  
 社長もターさんも 良くわからんが 差押命令が出ているという事だろうがこちらの売掛金への影響についてよく分からんし、小さな家族経営の肉屋の社内には、答えを持っている人はいませんでした。
当然顧問弁護士はいません。

でも私はある人を思い出しいました。
その人と特別親しいわけではないのですが、居酒屋で時々会って雑談する人でした。
その人はリサイクルショップトレードの 岡山社長です。
リサイクルショップトレードは破産した人の物品買取や整理を業務をやっており、その際は裁判所の依頼で動く聞いた記憶がありました。

104番で電話番号を調べすぐ電話をしました。
岡山社長に事の経緯を話すと、今日の夕方会社においでと言ってくれました。

最強の助っ人ゲット

 トレードさんは集めてきたリサイクル品を、修理や洗浄をなど綺麗に手直しをして転売するのがお仕事です。
そしてもう一つの仕事に柱は 自己破産や企業の倒産に伴う財産や家財道具、在庫品の現金化を請け負っています。
ですから私が見てしまった裁判所からの通告書の内容に詳しいと思ったのです。

 トレードさん倉庫へ伺うとソファーにドカッと座った岡山社長がいました。
あいさつもそこそこに「春子の正体知ってんの?」
「春子はエグイぞぉ」
「塀の上に乗ってはいるけど、向こう側にはおちんのや」
「あいつから回収劇はドラマになるぞ」
と 目をギラギラさせて「この話にのってやるから、君も協力しんか?」
「いいかよーく聞けよ」と過去の夜逃げ女春子の悪行を岡山さんは教えてくれました。

本番をするピンクのサギ


「春子の手口はいつも同じや。いつも小さな飲食店を作る。それはスナック・喫茶店・居酒屋・焼肉・焼き鳥・小料理屋のような男性が独りでもやって来るイメージの店や」「春子には妹がいて名前は春美というんや」
「店は姉妹で出す事もあれば、別々に出す事もある。被害の規模は違うが、姉妹でよく似た事をやっている」
「二人には家庭がある。でもな旦那はお金をもってくる妻の事はみて見ぬふり。ほとんど旦那は関わってはこないが、止めることもしないけど、子供には知られたくないの確かや」という事でした。

 「春子の方はきっちり深い関係、つまり男女の関係を持ってしまう。
よほど床上手なのか寝た男はほぼ骨抜きにされ、ドンドンお金を毟り取られるかなり恐ろしい女やぞ」だそうです。

お金を引っ張り方はいろいろあって、実家の父親が倒れた。
母親がガンや。
実は旦那が居るから手切れ金がほしい。
妹の交際が悪いヒモでその手切れ金がほしい。
お店から売り上げ金が消えた、きょう支払う金が足りない。
ペットの猫の手術代を出してほしい。
などなどなんでも理由にして男に金を出させる。

 実際の年齢はかなりいってるはずやが見た目が若いので騙されてしまう。
狙われるのは孤独の男性。
 狙いをつけた人が店にくると横に座って甘えながら一緒に飲んで酔う。
そして合体。
その後は優しく優しくして好きな食べ物をメニューに取り入れたりと、女の色気でどんどん気持ちを奪ってしまう。
あれは女郎蜘蛛やな。
独り者はすぐにその気になるそして本番が決まってるから言いなりになってしまうんや。
それで身体の関係があるから真剣に交際の意思を持っていたと認められてしまい警察の出番がない。
 まさに身体でお金を奪う本番付きの詐欺や、結婚の話はしないからアカサギというより、真剣にお付き合いを装い身体をはるからピンクサギだと教えてくれました。

ピンクのヘラサギ

私の会社の前の焼肉店でも田んぼ二枚分の被害にあったおじさんがいると噂があると話すと、もうその人から金が出い打ち止めになったら撤収。
いきなり店しめて行方を消してしまうのはいつもの事と言ってました。

さてどうやって回収するか?

 岡山さんは私が控えてきた差し押さえ日の葉書を元にこの事件の担当弁護士を調べました。
 この葉書の事件の正確な未回収金額が315,800円だと知れました。
そして私に現金でこれと同額の現金を準備するように言いました。
さらに岡山さんの会社の取り分として3人分の人件費、トラック代と鍵屋さんの開錠費用を合わせて、15万円は費用が掛かるので備してほしいと言われました。
これだけで465,800円の現金が必要です。
これでは私の未回収金額を超えるので損になると言うと岡山社長は
「ちがう ちがう」「春子には今回の経費465,800円と、君の会社の売掛金421,650円を足して請求してやるんや」「この作戦は他言無用、君は誰にもいってはダメ、とにかくお金を準備して、春子の差し押さえ日に現場にくればいい」「領収書には印紙はってな「安心して」と自信たっぷりに話すのです。

自分の貯金から現金を準備

 誰のも言うなと注意されていたので言われた通りの現金は、お金は自分の貯金から準備しました。
岡山さんの作戦は会社の人にも秘密です。
自腹を切るのは一か八かでした。
それと岡山さんの余裕の態度からして、私の自己資金が消えてなくなる事は無いと信じきれたのです。

 夜逃げ女春子の家の前に着きました。
誰もいません。
葉書には午前10時と書いてありました。
ですから私は10分前にこの家の前に来たのです。
しばらく待っていると銀色のマーチがやってきました。
この車はこの家の物ではありません。
マーチには眼鏡を掛け、見るからに真面目そうな男性が二名乗っていました見て目でこの人達が執行官だろうと思いました
車からおりてきた二人に「三田村畜産の方?」と聞かれ、私は「ハイ」と答えました。
そこへ4トンのアルミウイングもトラックがやってきました。
このトラックには岡山さんとスタッフがのっていました。
またトラックの後ろには白いボディーに”街の鍵屋さん”と書かれている軽四のバンがついてきていました。

午前9時57分夜逃げ女春子の家の前に全員集合しました。

 岡山さんと執行官二人は顔見知りでした。
軽く挨拶をすると「毎度毎度 この人は懲りんね」と岡山さんが話すと、
「まったく」と執行官が言いました。

 岡山さんが「ではやりますか」と言うと、面目そうな執行官二名のうち一名が夜逃げ女春子の家の呼び鈴を押しました。
”ピンポーン、ピンポーン” 
家の中はとても静かです。家にはだれもいないようです。

「では強制着手します。鍵やさん開錠してください。」執行官の指示で、鍵屋さんが夜逃げ女春子の家の玄関の鍵をピッキングし始めました。

初めての体験 差し押さえの現場

目をまるくして見ている私に岡山さんが
「いよいよはじまるよ 春子は絶対に執行官が来る日は不在で、ここまではいつもの事や」「でっ俺らみたいな業者がトラックに積み終える頃を見計らって現れる」「そしてお金を今払うと執行官に申し入れてトラックに積んだ家財道具を下ろさせって色気たっぷりにお願いする」「これではわしらは日当の手間もでない」「それで今日は君が先にこの債権をここで執行官から買ってしまうやそうすれば、この荷物は君の物だからトラックから降ろさないと僕がいう」「絶対に春子は家財道具買い取るからそこが勝負や」
「今日の執行経費と君の売掛金+君の手間賃をも請求してやるという絵や」

「でもお金を春子はもっていますか?」と私が聞くと

「そこが肝や、だが絶対に現金はある」
「いつもきまって春子は二階の寝室に白いベットとベットの上から白いレースのカーテンみたいな布を垂らす」「おとぎの国のお姫様みたいな寝室にすするのが趣味や」「多分心理的に白に囲まれたて清らかでいたい白色でお清めやと思ってるやな」
「そしてそのベットの横には金庫が絶対ある」
「そこには500万円ぐらい絶対に入ってる」
「毎度同じや 安心せい」と自信たっぷりに話すのです。

「ガチャ」と鍵が開いた音がした。

 執行官が扉をあけて「山本さん 執行開始しますよー!」と大きな声で
話かけるが家の中は”シーン”

「10時15分×●◆の差し押さえ 強制執行をはじめます。」というと
「鍵屋さん施錠された部屋 金庫 箪笥はすべて開錠してください」「先に二階いってみて金庫があるはずや」と岡山さんの指示が飛ぶ
それと並行して「これと、これと、これが 幾らで、これと これは幾ら」
岡山さんと執行官が家具や家電品の値段を一目みて決めては裁判所の印をはる。

二階にあがっていた鍵屋さんが「金庫発見開けますよ執行官きてください」
と呼ぶと執行官が二階に上あがる。

岡「よし。すぐ清算しよう執行官さん、彼が今回の家具や家電を買取ます。」

執「分かりました。」

私「はいお金です。」

執「確かに!はいここにサインしてください それと認印ここ。
これは領収書、はいこれで印がついた物はあなたの物です。」

岡「この荷物は全部運び出しますね。」

執「どうぞー。」

岡「おい運び出せ!荷物はトラックへ急げ」「壁と床には傷つけるなよ」  

私がアタフタしている間に差し押さえをされた家具は私の物になりました。

現金が


二階から降りてききた鍵屋さんが「帯4本と30はあった」と岡山さんに
話すと「ほらやっぱり現金あった」「ここから君が主役やぞ」

「とにかく早くトラックに荷物詰め。」
執行官さんは「待ってますかねと」と私が買ったダイニングの椅子に
「座っていい?」と指をさして聞いてきました。
「どうぞどうぞこれは彼の椅子ですからどうぞどうぞ」
と笑っている岡山さんが実に楽しそうでした。

 トラックに積む際も声をだして安全第一!指差し確認だと言う岡山さん。
しかし、真の狙いは近隣の住民にアピールし、夜逃げ女の面子をつぶす事でした。
 ソファーセット、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、ダイニングテーブル 飾り時計 ベット 食器棚、テレビ スタンド照明 玄関のモダンな絵などが見事なスピードでどんどん積まれていきました。

トラック

 私は二階から真っ白いベットを下ろす際に寝室を拝ませ頂きました。
口が開いた金庫の中に100万円の束がと綺麗に10万円づつ折ってある一万円3束あるのをみました。

金庫にイメージ

何ー⁉あんたぁー!


私の所有物になった真っ白の家財道具がトラックに積み終わり後は荷台のウイング閉めるだけとなったころです。

「ごめーん あらーもう積んだのぉー」「悪いけどお金払うし戻してぇー」
と言いながら夜逃げ女の春子が玄関から入ってきました。

 執行官が「時間厳守ですよ」と言うと「ごめーん病院が一杯で」と言い
「アラー岡ちゃん早かったーお金払うし下ろして」と岡山さんを見てニコリ、そして私を見て「肉屋さん何してんの・・・・?」

「えーっと」私は不慣れでしたので言葉に詰まりました。

すると岡山さんが「あー、今回この人がここに現れて全部買ったから、いまから運ぶだけやけど」というと

春子は「何ー⁈あんたぁー!人のうちで勝手にしとんのよーぉ!」とブチギレました。

執行官が「冷静に」と一言。

岡山さんが「でもね春ちゃんがちゃんと居ないからね、私は買ってくれる人がいて助かったと思うけど、これ持っていっても債務全部は綺麗にらならんしね、気持ちよく買ってくれて一回ですっきり終わってよかったでしょう」と冷たく言いました。

「まして春ちゃん、彼にも売掛あるやろ?この人たまたま集金に来てちょうどワシら作業したら全部買う言うので売ったんや」「ねっ」

夜逃げ女は”ブルブル、ブルブル”と身体が震えだし、見る見るうちに目が吊り上がり、顔が炎のように赤くなり”鬼”の形相になったのです。
本当にこの人は”鬼”に変身してしまうのではないかと思いました。

鬼のお面



「落ち着いてください。」執行官がまた一言。

「あ~んたとこ、い~く~ら~や~った?!」と聞くので

「はぁ~?金額ぐらい覚えとけやー、あんた払う気持ちないんかぁ!」
「まず謝れや」と初めて私もキレてしまいました。

「冷静に話しあってください」と執行官がまた一言。

「春ちゃん態度悪いと話終わるんよ」と岡山さんも一言。

「・・・すみません・・・全部でおいくらか教えてください」
「払います」

売掛金回収成功!


まず三田村畜産への売掛金・・・421,650円
今回の家財道具買取金・・・・・315,800円
岡山さんの会社の作業代・・・・150,000円
合計・・・・・・・・・・・・・887,450円

お金

きっちりと回収させて頂きました。

 

最後に

 春ちゃんが岡ちゃんに泣きついてトラックから下ろした荷物を
元の位置までちゃんと運ばせるので驚きました。
 さらに取り戻した掃除機でベットやソファーがあった床を掃除をしながら
「あーいいねホコリが綺麗にできるからうれーし」と強がってました。

 その後私は春子の噂は聞きません。
どこかでまた悪さをしていない事を心より願います。

あなたも女郎蜘蛛にはご用心ください。

女郎蜘蛛


(おわり)

#私だけかもしれないレア体験


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