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「行動経済学」を使って、アイディアを出す方法

こんにちは。サービスデザイナーのUrataです。
テックファームでは、お客様のサービス創出や改善に伴走する中で、アイディアを考えるシーンが多くあります。

皆さんもサービス案・機能案・改善案はもちろん、組織作り・他者コミュニケーションの改善など「アイディア」を考える機会は多いのではないでしょうか。

またその「アイディア」は、何かしら「人を動かす」ことを目的にした場合が、多いのではないでしょうか。

「人を動かす」ということにおいて、近年「行動経済学」という学問が注目を集めているのは、ご存知の方も多いと思います。

しかし、理論一つ一つは理解できても、どのように活用するのかわからないという声もしばしば聞きます。この記事では、私なりに整理してみた、
「行動経済学を使った、アイディア出しの方法」をシェアします。

まず、結論から言います。それは

「課題への問い x 行動経済学理論」の掛け合わせを作り、
半強制的に発想していくこと

です。

次から、その方法を詳しく紹介します。
是非、活用いただけると幸いです。


行動経済学とは何か

大阪大学の大竹教授は解説で、

心理学や社会学の成果を、経済学に取り入れて、
経済学を、現実的な人間像に、適用できるように拡張したもの

と定義されていました。

むずかしく聞こえますが、
ポイントは「現実的な人間像」という点でしょう。

「伝統的な経済学」と、「行動経済学」では、
「人間」の捉え方の前提に以下のような大きな違いがあります。

伝統的経済学人は合理的で、常に自分の利益最大化のために行動するもの
行動経済学人は非合理的で、一貫性のない行動をするもの


例えば、
A.今すぐに1万円もらう
B.1週間後に1万100円もらう

どちらがいいかと聞かれると多くの人がAと答えます。

今度は
C.1年後に1万円もらう
D.1年と1週間後に1万100円もらう

の場合、多くの人がDを選びます。

ただDを選んだ人は、1年後に最初の問題と同じ状況に置かれるため、答えが変化します。
伝統的経済学では、「Aを選んだ人は、次もCを答える」
と考えますが実際の人の判断は違うわけです。

この効果を、行動経済学では、「現在バイアス」といい代表的な理論の1つです。

このように「現実的な人間像 = 非合理的な生き物」と捉える点が、行動経済学の特徴ではないでしょうか。

昨今、機能や合理性だけでは物が売れない時代になっている背景から
人の非合理性を捉える「行動経済学」が各方面から注目されているわけですね。


行動経済学を活用するには

行動経済学では、以下のような多くの心理効果が理論化されています。(これでもごく一部)

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一方で、理論が多くあり、初めての人もすぐ活用するのは、
少し難しく感じられるかもしれません。

そこで私なりに、もう少し活用しやすくできないかと考え
「行動経済学の初心者でも、理論を活用したアイディアを出せる方法」を整理してみた次第です。


その方法は、3ステップです。


ステップ①:取り組む課題を決める

まずアイディアを考えるために大事なのが、
どんな課題を解決したいのかを明確にすることですね。

例えば、あなたが「レシピアプリの運営担当」だと仮定して解説します。
まずは、課題を書き出します。

課題例 ・有料プラン加入率が悪い
    ・特集レシピコーナーを見てくれない
    ・再訪率が伸びない


次に、「どの課題に取り組むか絞り込み」をします。
絞り込み方は様々な方法があると思います。私がよく使う方法は4現象マトリクスを活用することです。ここで書くと非常に長くなるため、ChatworkでUXディレクターの坂田さんの記事が、非常によくまとまっていて、オススメなので以下の記事を参考にしてみてください。


そもそも「課題がわからない」「課題が曖昧」という方は、
ステップ0として、ユーザーの行動観察や、データ分析をしてみてください。

テックファームでは、2週間であなたのWebサイトやアプリの課題発見が完結する
「UI/UX まるっと診断」をご用意しています。
私たち「専門家による評価」と「ユーザーテスト」の両面から分析を行い、
詳細な課題と改善案レポーティングをご提供します。
期間と費用含めて、非常にお手軽なプランとなってますので、是非ご活用くださいませ。



ステップ②: 課題を行動経済学理論と組合せた「問い」に変える

次に、
絞った課題を「どうすれば〇〇できるだろうか?(以下HMW)」という
文に変更します。ここが今回の最大のポイントで、少し長めになります。

ここで「行動経済学理論」を活用していきます。

先程紹介した、行動経済学の代表的理論の一覧などを用意し、
この理論1つ1つに課題を組み合わせて「HMW」を作っていきます。

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中には、変な問いになってしまう組み合わせもあるかもしれませんが
一通り、組み合わせて強制的に発想していきます。

この工程の狙いは2つあります。

●理由その1:「挑戦的な姿勢で、アイディア考えることができるようにする」

人は課題と対峙すると、つい「どうするべきなんだろう?」「本当にできるんだろうか?」と現実的、悲観的になってしまいます。

仕事においては、結果を求められるがゆえに、その力学が働きやすいものです。

そんな中、「どうすればできるだろうか?」という文は、前向きで挑戦的な姿勢にしてくれる言葉です。
これは、デザイン思考で有名なIDEOや、Google、Facebookでも使われている手法です。(アメリカではHow might weとして知られています。)


●理由その2:「課題が大きすぎて、思考が働かないことを防ぐ」

例えば、「有料プラン加入率が悪い」といった課題を提示されて、皆さんはすぐにアイディアが出てくるでしょうか?

ちなみに私は出てきません。

それは、問いのサイズが大きすぎることが、要因として考えられます。
なので、問いのサイズを、もう少し脳が考えやすいサイズや形にする必要があります。

では、シンプルに「HMW」に変換するとどうでしょう。
「どうすれば、有料プラン加入率を向上させられるだろう?」となります。

先ほどよりは、前向きな問いになったものの、
まだ問いのサイズが大きく、アイディアが出づらそうです。

そこで「行動経済学理論」を組み合わせるのです。

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組合せ前:「どうすれば有料プラン加入率を向上させられるだろう?」
組合せ後:「どうすれば、有料加入していないことで、何かを失っていると気付かせることができるだろうか?」

どうでしょうか。
適用後の方が、問いの方向が具体的になり、アイディアを考えやすくなっていませんか?
行動経済学の効果を、課題と組み合わせると、課題の切り口が定まり、具体性が増すのです。


ステップ③:「問い」に対するアイディアを考える

最後に、
ステップ②で作った問いに対して、アイディアを考えていきます。

問い:「どうすれば、有料加入していないことで、何かを失っていると気付かせることができるだろうか?」
アイディア:
「有料会員の方は、毎月15時間の自分のゆったり時間消失を防いげています。」というコピーを加える。

(このアイディアが良いか悪いかは別として。w)

同じ要領で、他の出した課題に対してもアイディアを考えていきます。


まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございます。如何でしたでしょうか。

私は、実際にこのステップで、非デザイナー職種の方とワークショップを
やってみて、気づいた効果が以下3つありました。

【効果】

1. 強制的に組み合わせることで、ユニークなアイディアが出やすい
2. 行動経済学が組み合わさることで、全く的外れなアイディアが減る
3. 初めての人でも、ライティングなどの細かなアイディアまででてくる

特に3つ目の効果は、新しい発見でした。
非デザイナーの方と従来通りのアイディア出しをすると
「〇〇ができる機能を作る」のような「機能レベル」のアイディアはよく出てきます。

しかし、行動経済学理論を掛け合わせると、人の心を動かす、具体的なライティングアイディアが、普段専門としていない人からも多く出てくるのは大きな発見でした。

1点注意が必要なのは、人間の心理効果を扱うので、ユーザーを悪い方向に仕向けるダークパターンにならないよう、十分に気をつけてください。

その上で、

もし普段のアイディア出しがなかなかうまくいかない方は、是非活用してみてください。また、その結果など教えて頂けると今後の励みになります。


今後もこのようなTips記事も更新していきますので、
是非フォローをお願いします。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



おまけ:行動経済学本の紹介


おまけで、行動経済学を学ぶのに、おすすめの本を少しだけ紹介します。


トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口 / 楠本 和矢

本文中に掲載した行動経済学理論の一覧は以下の書籍から引用させていただきました。非常にわかりやすく、使いやすくまとまった本ですのでおすすめです。


予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 / ダン・アリエリー

著者自身が行った豊富な実験例などを交えて、理論を紹介してくれている良書。非常に読みやすい本です。しかもお安い、、、。

皆さんも、おすすめの本ありましたコメント欄にて教えてください!

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