ニュートンの絶対時間とIT用語のサンドボックス 時間とはなにか2
皆と同じ『時間』
くもりや雨の日はやっぱりテンションはあがらず、晴れた日は気分が良いと思います。雨の日が続けばなんとなく部屋も教室もオフィスも狭くなったような気がするかもしれませんし、時計の針も動きが鈍いかもしれません。
私たちは普段、『時間』の進み具合が日によって違ったり、空間が広くなったり狭くなったりするなどとはまったく考えないと思います。
『時間』は誰にとっても等しく平等に与えられているものですので、みんなと同じ『時間』に学校や職場に行って同級生や同僚と会い、そして次の予定を決めることができます。
これは一見すると、「何ものにも関わりなく一様に流れるもの」とニュートンが定義した絶対時間と一致しているように思えます。
変わる『時間』
重力によって『時間』の流れに違いが生じることは知られていますが、わずか数センチメートルの高低差の重力の影響を観測できる、と聞けばやはり驚くのではないかと思います。
数センチ差で時間の流れの違いを検知
日本発の光格子時計は新産業を切り開くか
日経クロステックxTECH
このような『時間』の相対性については、誰もがアインシュタインによって初めて、その性質が追求されたというイメージを持っているかと思います。
科学史、あるいは『時間』について書かれた本の多くで『時間』の相対性はアインシュタインの名前と共に使われ、ニュートンの絶対時間は以下のように、アインシュタインによって乗り越えられる、古い硬直した古典力学の代表的なものとして説明されます。
ここには当然のことながら「相対」の文字はないようです。
このような説明からは、ニュートンには『時間』の相対的な性質※についての認識がなかったかのような印象を受けるかと思います。
ニュートン力学では説明しきれない現象が確認されるようになったとき、アインシュタインと彼の画期的な相対性理論が登場するストーリーは、今現在も有力な進歩史観と符合して小気味良いですが、少し小説の筋書きのようでもあります。
※「相対性理論」につながるような何らかの認識を持っていた、というわけではなく、また『時間』の相対性を考察したということでもありません。
ニュートンが『時間』の相対性を追求したことは(おそらく)なかったと思われますが、観測者の位置や観測の仕方によって同じ対象、『時間』が異なる場合があり得る、という認識もなかったでしょうか。
先入観の排除
定義(要約)には「たとえば機械時計や日時計など、運動によって測られる時聞は相対的な、見かけ上の時間」とあることから、ニュートンにもデカルトが述べたように、私たちの感覚はときとして欺かれることがあり、必ずしも正しいと言い切れないという認識があったのかもしれません。
デカルトはときに欺かれてしまう感覚を排除して理性で考えようとしました。この姿勢は科学的な推論の基礎になっています。
ニュートンが純粋な理性による探求を妨げてしまう可能性のある要素を排除することで、理想的な環境を設定できると考えたのであれば、外部から隔離され「常に不動で同じ形のものとして存在する」絶対空間と、「いかなる変化も受けない」数学的な『時間』は、数学的公理を積み上げていくためにふさわしいものだったのではないでしょうか。
ニュートンの『プリンキピア』には、次のように記されています。
サンドボックス(sandbox)
IT、コンピュータの分野でサンドボックス(sandbox)と呼ばれる環境があります。
サンドボックスは新しいプログラムなどをテストする場合に、実際に稼働している環境(一般に公開されている環境、サイト。例えば実際に注文できる通販サイトなど)には影響を与えないように、使用されているデータの一部をコピーするなどして作られ、外部と隔離された「テスト環境」として使用されます。
一般に公開されて稼働している環境とは別に、様々なテストを重ねてそのデータを採取することを目的にしている環境は、ニュートンの絶対空間に似ている、と考えるのは穿(うが)ち過ぎかもしれません。
IT用語辞典 e-Words
サンドボックス 【sandbox】
コンピュータの分野では、ソフトウェアの特殊な実行環境として用意された、外部へのアクセスが厳しく制限された領域のことを指すことが多い。
Windows サンドボックス
Windows サンドボックスは、アプリケーションを単独で安全に実行するための軽量のデスクトップ環境を提供します。
次の投稿予定:ガリレオの相対性原理とパースペクティブ
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