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『リルケ詩集;高安国世訳』〈岩波文庫〉⑤〈完〉【901字】

〈後期の詩〉より.

〈フランス語の詩〉より.

by Rainer Maria Rilke,1875-1926.

 圧倒的、圧倒的です。読んでいて、次へ、次へと、音が次の音を求め導かれていくような、凄まじいまでの読ませる力を持った詩です。一言で言い表すならば、“神聖”という表現が一番しっくりきます。読後のカタルシス半端なし。全篇、全言葉、全音が素晴らしい、完璧な言葉たちです────。

 正直、語るに及ばずといった感じなので、以下いくつかの引用によって締めます。

【P-218】[l-5]どんなに親しいもののほとりにも、とどまることは
わたしらには許されていない。形象を満たし得たかと思う刹那
はやくも精神は、満たすべきものへと落ちむかう。湖と
湛えやすらうは永遠の世界でのこと。この世では
ただ落ち走り落ち急ぐこそせいいっぱいのつとめではないか。
わが物となし得た感情から、さだかならぬ予感へと
時もおかずさかしまにまた落ちたぎつ。
【P-235】[l-8]古びてゆく屋根の緑さえ
空の明るみを映して、──
感じるものとなり、国となり、
答えとなり、世界となる。
【P-239】[l-8]沈黙の中でも沈黙しない物に対して、
意地わるくさげすみ笑う物に対して──。
跡かたもなく消え去るために
言葉は人に与えられた。
【P-244】[l-9]何物も失われはしない、すべては先へと渡される。
このことを心の奥底で理解する者は、のぼる。
そのはしごの先は上の方で、たしかに
志を同じくするものに立てかけられている。
【P-265】[l-3]すべてはすぎ去るものならば
すぎ去るかりそめの歌を作ろう。
わたしたちの渇きをしずめるものならば
わたしたちの存在のあかしともなろう。
【P-281】[l-1]おまえの精髄を生み出すのはおまえ自身だ。
おまえから湧き出るもの、この不安なまでの胸のおののき、
これはおまえの舞踏だ。


                                                           〈完〉

                               ────Thank You For Reading────.




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