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どうやら重度のうつらしい。障害者手帳1級/無職の「逃げのすゝめ」月野白蝶 #interview

「つらいのにやめられない人に伝えたい。つらいのは弱ってるサインだよ。誰でもあることだから、嫌なら、つらいなら、やめてもいいんだよ」と話す月野さん。

同伴されている親友で同居人のRear(リア)さんが施したネイルが可愛らしく、2人で明るくふんわり、おっとりお話しする様子からは一見深刻な生きづらさは感じられません。しかし診断によれば重度のうつで障害者手帳1級認定がすぐに取れるほど「1人では生活ができない」状態だと言います。何が彼女をそうさせたのか、現在どんなことを考えているのか、お話をお伺いしてきました。(聞き手:あゆみむ)

最近は編み物や手書きでリハビリ中です

最近は仕事もできず家事もできないので、脳のリハビリとして毎日編み物をしたり、手書きで文字を書いたりしています。もともと一番の趣味は小説を書くことですが、今は少し書いては1〜2ヶ月休む、また少し書いてはさらに休む….という具合です。読書も全然できなくなってしまって、すっかり積ん読ですね。(笑)

いまだに信じられないんです、病気なんだって。ただサボってるだけみたいな気がしてプレッシャーや劣等感が強いですね。健忘症の症状もあって言われたことを忘れてしまうし、外には1人出られなくて。今日ももこの子(Rearさん)に一緒に来てもらいました。

Rearさんが施した2人のネイル。シールが互い違いに入っている

私、本当にうつなんですか?

新卒で入ったのは食品メーカーの受付事務でした。電話を取りながら、モニターを確認しながら、ドライバーさんとも話しながら、入力業務をし続けます。そんな超同時進行のマルチタスクが求められる仕事で6本の電話が常にずーっと鳴っているんです。いまだにコール音恐怖症です。黒電話だけ例外で、スマホで目覚まし時計を設定するときは必ず黒電話の音にしてます。(笑)

頑張って対応していたものの、もう限界だと思って休職を申請したんです。ところが結局異動することになり…その部署がさらに…いじめというか、パワハラというか。同時進行が不可能なタスクを3つ同時にやれと言われ、できないと「なんでできてないの?」って詰められ続けるんですよね…。

その部署で、ある日デスクにいるときにいきなり過呼吸になってしまったんです。1人ですごいパニックになっていたのに、誰も助けてくれなくて。後ろに何人もいるのに、誰も。身体症状的に勝手に涙も出てくるし、手足は痺れて冷たくなって。その時の私ができたのは、椅子を後ろに引いて机に突っ伏すことだけ。それが初めての過呼吸の発作で、もう本当に死ぬかと思いました…。過呼吸もつらかったですが「公衆の場で発作を起こして、誰も助けてくれない」と言うこと自体がトラウマになってしまいました。

そんなこともあり会社を辞めて、病院にかかるとうつの診断を受けました。その後もがんばって契約社員など働いてはいたんですが、先生に「仕事は全て辞めなさい」と言われてすごくびっくりしました。患者の意向を重視してくれる先生だったので、その先生がそこまでバッサリ言うなんて…って。

今まで全部で4人の先生にお世話になってますが、新しい先生のところへ行くたびに「私、本当にうつなんですか?」って聞いて「はい、あなたはうつです」と告げられてしまいます。本当かなあ?と、今も100%は信じきれない気持ちもありますが、とにかく診断によれば私はうつで、自分の生活を自分1人ではできない「要介護」というランクになるそうです。障害者手帳って取るのが大変らしいのですが、あっさり1級が出てしまいました。

うつを抱えながら、支え合って生きています

色々あって、今は旦那とこの子と3人暮らしです。3人とも精神的だったり身体的だったり補い合いながらの生活です。

旦那と2人暮らしの頃、旦那が心臓の疾患で緊急入院したことがありました。もともと友達だった彼とは私が調子を崩して一緒に生活をしながら入籍に至ったような流れで、うつについてもものすごく勉強してくれて…本当に支えてもらっています。彼が入院した時の3ヶ月は記憶が全くありません。入院期間中、この子と毎日スカイプで「ご飯食べて」と言われてなんとか食べていましたが、途中でその気力も無くなって… この子によれば、私が口にしたのは野菜ジュースとスルメだけ。あとカップ麺を食べた痕跡はあったようです。(笑)笑い話みたいで笑えないことでもあり… うつは「完全に治る」ことは厳密にはないらしいんです。でも、少しでもよい状態であるように、リハビリしつつ生活を楽しんでいきたいな、と思っています。

旦那さんには婚約指輪をいつか良いものに買い直すと言われているらしい。今ので十分と話す月野さん

「鬱」とは、精神疾患と分類されるが、これは所謂「心の病」ではない。
あまりにも継続かつ重度過ぎると、前頭葉に損傷が現れ、萎縮する、割と洒落にならない「脳の病気」である。
「心の病」とは、例えば恋の病のようなものを言うのだ。

旦那さんのnoteより抜粋。月野さんを支えるため書籍などでうつへの理解を深めている

頑張れてる今のうちに、逃げてほしい

言えるものなら12年前の私に言いたいです。こんな風に色々なことができなくなる前に、早く逃げて、もうやめて、って言いたいです。だから、今つらさを抱えながらなんとか頑張って働いているような人には、頑張れてる今のうちにちゃんと休んで、逃げていいんだよって言いたいんです。

うつは「環境要因」「性格要因」「遺伝的要因」の3つの要因でなると言われています。同じことをして全員同じ確率でなるわけではありませんが、コロナの自粛やリモートワークの影響でうつが増加したように誰でもなる可能性があります。「もしかしたら…」「しんどいな、変だな」と思ったらそのままにせずに原因を追求してください。心療内科に行ってみてください。できれば大きい病院じゃなく街のクリニックがおすすめです。

また、症状や病気を抱えながら生きるには制度の活用が大事です。例えば自立支援(通院が3割負担から1割負担に減ります)、年金免除など、助けてくれる制度は探せばたくさん出てきます。まずはご自身がかかっているお医者さんに聞いてみてほしいです。(同伴の友人、看護師 Rear さんより)

「楽しいしかない」場所へ行くのを励みに

やりたいこと…. やっぱりまた「しんえん」に行きたいですね。音楽や踊り、演武のライブ、ファッションショーなど、色々な出し物が見れて、その演者の方達とも交流ができるイベントなんですが、見ていて本当に楽しいんです。「楽しい」しかない場所です。私はどうしてもウジウジ考えちゃうところがあるんですが、しんえんにいると自分が病んでいることすらも「まぁいっか」って思えちゃうんですよね。(笑)

懐事情との相談と、体調都合で当日キャンセルしたり参加中に具合が悪くなって迷惑をかけるかも思うとなかなかいけないんですが…。自分もいていいと思える自己肯定できる場だし、他人に何かしてあげられる場でもあって。例えばしんえんでは観客として「ステージを見ている」ことへも感謝してもらえます。私も誰かに何かをできたと思えるのってとっても嬉しいんです。

しんえんに参加した時、阿波踊りのダンサーさんがクイズタイムに「月野さん、どう思う!?」って不意に声をかけてきたんです。イントロクイズで、なんていう曲だと思う?って意味でした。確かにクイズ前に簡単に挨拶はしましたが、それだけで私の名前をちゃんと覚えて、まるで以前からの知り合いだったみたいに、ごく自然に「どう思う!?」って。本当にびっくりしました。とても嬉しかったです。

インタビューのすぐ後に参加できたしんえんにて。何度か休みながらも楽しむことができた
一番左が月野さん、隣がRearさん。ロリータ服を着る体験ができる回だった。衣装提供はStrawberryWars

▼次回のしんえんはこちら


月野さん@コミュ障だって知り合いは欲しい

今はリアルの知り合いとはほとんど連絡が途切れているしネットの小説アカウントでは会話はありません。なので、しんえんを通じて知り合いも増やしたいです。老若男女を問わず人の人生観に触れることが創作(小説執筆)にも生きるし私自身の人生観が深まるから、知り合いを増やしたいな、と思っています。



月野さん、そしてRearさん、お話ありがとうございました!体験からの真摯なメッセージ、そして月野さんがご自身のペースで進んでいる様子に私もとっても励まされました。またしんえんやその他の場所でお会いできるのを楽しみにしています。^^


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photo by あゆみむ
※しんえん内の写真を除く

この記事を書いた人:あゆみむ

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