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読書記録・写真の哲学にむけて①〜シャーカフスキー『『写真家の眼』序論』part2

皆様、鹿人(仮)です。

今回は、こちらの記事の続編です!

前回記事では、シャーカフスキー『写真家の眼』序論を、途中まで読み進めていきました。そこでは、シャーカフスキーの問いが提示され、その問いにまつわる写真の歴史が概略的に語られました。本書を収録している月曜社出版の『写真の理論』の解説部では、シャーカフスキーの写真にまつわる思想の全体像を簡明にまとめつつも、この論文の重要なポイントとして「写真の固有性」を取り上げています。

これから見る後半部(文量の都合上何回かに分けてお送りしようと思ってます!)では、この「写真の固有性」が主要なポイントとなります。それでは始めていきましょう。

写真のイメージがいかにして築かれてきたか(p.16)

  • 写真家は2つのやり方で学んだ。

  • 第一:自身の道具と素材に対する製作者の個人的理解を通して学んだ。

  • 第二:とめどなく現れ続ける他の写真から学んだ。写真家の関心が商業的か芸術的かどうかに関わらず、その写真家の「意識へと刻印されたすべての写真によって彼の伝統が形作られた」

読み下し

 シャーカフスキーは、写真家がどのように写真家自身の作品を生み出してきたか、その学習過程に着目します。1つ目は、自分自身が持つカメラやフィルム、現像のためのプリント紙や機械など、そういった道具や素材に対する理解を深めていくこと、であり、2つ目は、目に触れる様々な写真についてです。様々な写真を観ることによって、写真家自身の意識に、その伝統が築かれていきます。     

 これは、現代でも、写真を撮る人が普通にするようなことではないでしょうか。様々な写真から影響を受けながら、感銘を受けたり真似したいと思うような写真を意識しながら自分の表現に落とし込んでいく。こういったプロセスは私たちにとっても馴染みのものかと思います。

 この、シャーカフスキーの視点が優れているかどうかについては、別の機会に譲るとして、彼がこのことに言及した上で、私たちにどのような視点を与えようとしているのかを見てみましょう。

写真の歴史を5つの論点で見るということについて(p.16-17)

  • この本(『写真家の眼』)に複製された写真には、ほとんど共通点がないが、それらはみな成功していることと、共通のヴォキャブラリーを有している。

  • つまりこれらの画像が「みな疑いなく写真である」ということ。

  • そして、それらが共有するヴィジョンは、どんな流派にも美学的理論にも属さない。「写真それ自体」に属している。

  • 「写真の潜在的可能性を、制作に従事する写真家たちがより深く認識するにつれ、そのヴィジョンの特徴が彼らによって発見された」

  • 「ヴィジョンの特徴が彼らによって発見された」ということが正しいとすれば、写真というメディウムの歴史を「それに本来備わるように見えた諸性質と諸問題に対する写真家たちの漸進的な認識」という観点から観察することができるはずだ。

  • 以下で考察されるのは、5つのそのような論点(写真に本来備わるように見えた諸性質と諸問題と、それに対する認識が写真家たちによってどのように進んできたか)だ。

  • これらの論点は「互いに分離した作品カテゴリー」ではなく、「単一の問題の相互依存的な諸相」(「写真の伝統の胴体の断面図」)としてみなされるべきだ。

  • これらの論点が、「写真に特有な現象により完全に対応したヴォキャブラリーと批判的視点を形成するために役立つ」ことを目指している。

読み下し

 この『写真家の眼』は、シャーカフスキーがキュレーターとして行った展覧会(1964年開催)であり、そこには170点あまりの写真が掲載されていました。彼は何に着目して写真を集めたのでしょうか。

 上記の要約で触れたましたが、彼は写真の歴史を「それに本来備わるように見えた諸性質と諸問題に対する写真家たちの漸進的な認識」という観点から観察しようとします。つまり、写真というメディウム(媒体)が一体どんな性質を持っていて、そして新しい芸術としてどんな問題を抱えているか?そういった問いに対して、写真家たちがどのように認識してきたか、そしてどのような写真(ヴィジョン)を生み出してきたか、これを写真の歴史として捉えるということです。

 そして、下記で詳細に触れますが、シャーカフスキーは、「事物それ自体」、「細部」、「時間」、「フレーム」、「視点
」という5つの論点において、写真家たちがどのように認識を進めてきたかを見ようとします。彼にとってこの5つの論点は、「写真に特有な現象により完全に対応したヴォキャブラリーと批判的視点を形成するために役立つ」ものです。つまり、この5つの論点が、写真を撮ることや見ることにまつわる様々な現象を表す特徴であり、批判的に写真というものを考えるときに役立つものだ、と言っています。

 次回は、いよいよ5つの論点を見ていきます!

お楽しみに。


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