ITC American Typewriterという書体
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。
American Typewriter(アメリカン・タイプライター)という書体
タイプライターっぽい文字としてあらゆる場面に登場するのが、このAmerican Typewriterという書体です。この書体はどんな書体で、どこで使われているのかを今回はご紹介します。
書体名:American Typewriter(アメリカン タイプライター)
カテゴリ:セリフ体
分類:スラブセリフ
デザイナー: Joel Kaden, Tony Stan
ファウンダリー: ITC, published by: Adobe, Apple and Linotype
リリース年:1974年
American Typewriterは、1974年にInternational Typeface CorporationのためにJoel KadenとTony Stanによって作られたスラブセリフ書体です。
タイプライターのスラブセリフスタイルに基づいているのですが、実際ののタイプライターフォントとは異なり、プロポーショナルデザインです。
American Typewriterは、古風なイメージや工業的なイメージを連想させるためによく使われます(映画にも頻繁に出てきます)。
当初はコールドタイプ(写真植字)でリリースされ、その後デジタルでリリースされました。多くのITCフォントと同様、ライトからボールドまで4種類のウェイトがあり(イタリック体もある)、コンデンス体もあります。
書体“American Typewriter”の使用例
ITC: International Typeface Corporation
インターナショナル・タイプフェイス・コーポレーション(ITC)は1970年、アーロン・バーンズ、ハーブ・ルバリン、エドワード・ロンドラー(Aaron Burns, Herb Lubalin and Edward Rondthaler)によってニューヨークに設立された活字製造会社。
同社は金属活字製造の歴史を持たない世界初の活字鋳造所のひとつです。現在はMonotype Imaging社の完全所有ブランドまたは子会社です。
沿革
同社はフィルムセットおよびコンピューターセット用の書体のデザイン、ライセンス供与、国際的な販売を目的として設立されました。
同社は新しいデザインと古い書体や古典的な書体のリバイバルの両方を発行し、写植や後のデジタル使用に適した形にカットし直し、さまざまなウェイトのファミリーを生産しました。
デザイナーたちはオリジナルの書体のスタイルと特徴を維持するよう配慮したと主張しているも、特にITC BookmanやITC Garamondなど、いくつかのITCのリバイバルは、最終的な結果がオリジナルの書体と名前だけが関連しているという批判を受けているようです。同社の著名なタイプデザイナーの中には、TiffanyやBenguiatフォントの作者であるエド・ベングイアット(Ephram Edward Benguiat)がいました。
ITCの書体一覧
ITC American Typewriter
ITC Anna
ITC Arecibo
ITC Arid
ITC Atelier Sans
ITC Avant Garde Gothic
Avenida
ITC Ballerino
ITC Barcelona
ITC Batak
ITC Bauhaus
ITC Beesknees
ITC Benguiat and Benguiat Gothic
ITC Berranger Hand
ITC Better
ITC Binary
ITC Blair
ITC Blackadder
ITC Black Tulip
ITC Blaze
ITC Bodoni
ITC Bolt
ITC Bookman
ITC Bradley Hand
ITC Braganza
ITC Busorama
ITC Caslon
ITC Century type family
ITC Cerigo
ITC Charter
ITC Cheltenham
ITC Chivalry
ITC Conduit
ITC Cushing
ITC Dartangnon
Data 70
ITC Django
ITC Edwardian Script
ITC Elan
ITC Ellipse
ITC Eras
Eras Demi ITC
ITC Esprit
ITC Fenice
ITC Flora
ITC Fontoon
ITC Forkbeard
ITC Franklin Gothic
ITC Freestyle Script
ITC Friz Quadrata
ITC Garamond
ITC Gamma
Gigi
ITC Giovanni
ITC Golden Cockerel
ITC Golden Type
ITC Goudy Sans
ITC Grimshaw Hand
ITC Handel Gothic
ITC Highlander
ITC Humana Sans
ITC Isadora
ITC Jamille
ITC Jokerman Hellenic
ITC Johnston
ITC Juanita
ITC Juice
ITC Kabel
ITC Kahana
ITC Keefbats
ITC Kendo
ITC Klepto
ITC Kloegirl
ITC Korigan
ITC Korinna
ITC Kristen
ITC Leawood
ITC Legacy Sans and Serif
ITC Lubalin Graph
ITC Luna
ITC Machine
ITC Matisse
ITC Mendoza Roman
ITC Migration Sans
ITC Mixage
ITC Modern No. 216
ITC Mona Lisa
ITC Motter Corpus
ITC Musclehead
Neue Aachen
ITC New Baskerville
ITC Newtext
ITC New Winchester
ITC Novarese
ITC Obelisk
ITC Obliqua
ITC Officina Sans and Serif
ITC Ozwald
ITC Panache
Papyrus
ITC Pioneer
ITC Pious Henry
ITC Plaza
ITC Portago
ITC Posterboy
ITC Quay Sans
ITC Quorum
Rage
ITC Redonda
ITC Ronda
ITC Serif Gothic
ITC Slimbach
ITC Souvenir
ITC Snap
ITC Stenberg
ITC Stone Sans
ITC Stone Informal
ITC Stylus
ITC Styleboy
ITC Symbol
ITC Tabula
ITC Tetra
ITC Tiepolo
ITC Tiffany
ITC Tempus Sans
ITC University of California Old Style
ITC Usherwood
ITC Veljovic
ITC Vineyard
ITC Vintage
ITC Weber Hand
ITC Weidemann
ITC William Hamilton Page
ITC Willow
ITC Zapf Chancery
ITC Zapf Dingbats
ITC Zemke Hand
プロポーショナルデザイン
プロポーショナル(Proportional)とは「釣り合った」という意味の英語で、「プロポーショナルデザイン」とは、書体全般につかわれる「プロポーショナルフォント」と同じ意味となり、これは
文字ごとの文字幅を個別に設定してあるフォント
を意味しています。一方で文字幅がすべて一緒であるフォントはモノスペースドフォント(Monospaced font)といいます。日本語では「等幅フォント」とも言います。
モノスペースド、等幅フォントのわかりやすい例はタイプライターです。タイプライターは等幅フォントしか使えませんでした。よってタイプライター的な書体であるCourierという書体は等幅フォントです。
American Typewriterは、タイプライターっぽい書体にもかかわらずプロポーショナルフォントで文字幅が文字によって異なっています。プロポーショナルであるほうが自然に文字を認識し、読みやすくなります。
↓Myfontsで販売されているプロポーショナルフォント一覧
写真植字
写真植字(しゃしんしょくじ)、略称は写植(しゃしょく)。英語は phototypesetting, photocomposition。
写真植字機を用いて文字などを印画紙やフィルムに印字して、写真製版用の版下などを作ること。また長らくテレビ放送用のテロップ用の版下としても使われました。
多くのサイズの活字が必要な活版印刷に対し、写真植字はレンズとの距離で大きさを変えられるため、では1個の文字ネガで済みます。オフセット印刷の普及とともに、写真植字も急速に需要を拡大しました。
文字のネガをレンズで拡大または変形して印画紙に焼き付けるので、独特の柔らか味がある事が写真植字のメリットの一つです。DTPが普及した昨今でも、タイトル文字などに限って写真植字を指定して使うケースが見られます。
また、写真植字の歴史は、株式会社写研の歴史そのものとも言えます。
文字の大きさの単位をQ(または級)、文字の送り量の単位をH(または歯)とする。いずれも0.25mmを1とします。すなわち24Qといえば6mmの大きさの文字を意味しています。
タイプライターの文字配列について
ジャレド・ダイアモンドの著書『銃・病原菌・鉄』(下)(1997)の中でこんな実話が紹介されています。
現代のキーボードはQWERTY配列と名付けられた配列でタイプライター時代のものがほぼそのままの配列になっているものです。これは1873年に開発された「非工学的的設計」の結晶です。この配列は、工夫を施して、タイプするスピードが「上げられない」ようにできています。なぜ非効率な配列に設計されているのかというと当時のタイプライターは隣接したキーを続けざまにタイプするとキーが絡まってしまうという欠陥があったたためでした。この故障をさけるために隣接したキーを続けざまにタイプしないように設計したのがQWERTY配列です。
しかし1932年にはタイプライターの技術的な問題は解決し、効率的な配列が開発され、試用者によって、速度は2倍、使いやすさも95%(!)も向上することがわかりました。しかしQWERTY配列は60年の間にすっかり定着してしまって、新しい効率的な配列を普及させようという試みは、タイピスト、タイプ教師、製造業者たちによって粉砕されてしまいました。
この著書では、このように技術的に後退にみえるような行動を社会的な理由で取ってしまうことがよくあることを紹介しています。タイプライター以外にもイギリスは効率的な電灯が発明されてもなおガス灯設備に投資したために電灯会社の進出を妨害し続けたなどの例を上げています。日本のUBERの普及を止めているのもこれに近いでしょう。
まとめ
同じタイプライター系の書体Courierより、精度が高く、プロポーショナルで使いやすい。
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参照
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