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デザイナーたちがもっている紙見本

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


デザイナーたちが持っている紙見本

竹尾の紙見本

グラフィックデザイナーやデザイン会社の事務所には、かならずこのような(上記写真)紙見本があります(持っていないグラフィックデザイナーがいたらその人はデザイナーとは言い難い)。

写真はわたしの会社にあるもなんですが、ちょっと古いですね。新調しないと……。さて、これ何かというと「ちょっと良い紙」のサンプルです。この「ちょっと良い紙」を言い換えると「ファンシーペーパー」というものになります。紙には、普通っぽい紙とちょっと(ときにけっこう)高額で特殊で豪華な紙があります。そのほかにすごく特殊な紙もあります。あと和紙もあります。デザイナーではない方は、それぞれを詳しく知る必要はありません。知っておいたほうが良いのは、「いろんな紙があって、そのなかにはラグジュアリーなニュアンスも持つものがある」ということ。紙にも高級(だと伝わるもの)と高級じゃないもの(という印象を与えるもの)があります。その高級な感じの紙の見本がいくつかの紙の商社から販売されていたり、配布されたりしています。

何のために?

こちらは平和紙業の紙サンプル
画像引用:http://www.livebox.jp/kiji/harigami/sample_book.html

グラフィックデザイナーは、パッケージ、パンフレット、書籍、ポスターなどなど制作するものに紙を使用する場面が多くあります。このうち書籍の中の本紙は、「ちょっと良い紙」ではなく、「書籍向きの紙」となり、上記の竹尾や平和紙業の見本帳が扱うものとは異なります。竹尾や平和紙業などの見本帳は、パッケージ、パンフレット、ポスター、DMなど手触りとニュアンスを伝えることに比重が置かれた紙のサンプルです。それから書籍の表紙も「ちょっと良い紙」であるファンシーペーパーを使う場合が多いです。

これらの紙サンプルは、デザイナーやクライアントが、手触りや色、紙の厚さなどのニュアンスを直接確かめるためのものです。

たとえば、こちらは「レザック66」という紙です。

見たことある方もいらっしゃるかもしれません。書籍の表紙や見返し、レストランのメニューなどに使われていたりします。でこぼこが激しいので自宅のプリンタで使うにはちょっと不向きな紙ですが。この紙は、その名前が示すように、仔牛の皮をイメージしたさわり心地の紙です。このニュアンス、写真だけじゃちょっとわかりません。そもそもテクスチャ(手触り)をデザインするのですが、それを体感できないとデザインしようがありません。これが、これらの見本帳の役割です。

紙の見本帳には、どんなものがあるのか?

紙というものは、紙の商社が使う存在へ販売しています。紙のメーカーが直接販売することはほとんどありません。竹尾も平和紙業も商社です。この二社がもっとも有名で巨大な紙の総合商社です。

竹尾

創業明治32年(1899年)。東京の京橋に創業。1974年に株式会社竹尾に商号変更。竹尾の紙のミニサンプルキットは1970年から作られ続けています。売上高216億円、資本金3.3億円、従業員204名(すべて2021年)。


竹尾の紙サンプル帳

竹尾の紙サンプル帳

個別にも購入できますが、一括で購入すると24,530円(税込み、送料込み)。購入の仕方は、オフィシャルサイトから。


平和紙業

1946年、大阪で創業。東証スタンダード市場の上場企業。従業員200名。売上高145億円。資本金21億円。

平和紙業の紙見本は販売しておらず、平和紙業に問い合わせて入手します。

問い合わせ先。


紙の購入&ショールーム

紙の見本帳ではなくて、紙そのものを購入したい場合、2社ともにショールームや販売店があります。紙を購入することもできます。

竹尾

東京に3箇所、福岡に1箇所あります。

竹尾のショールームはおしゃれ。こちらは神田の竹尾 見本帖本店
画像引用:竹尾
こちらは青山の見本帖
画像引用:竹尾

平和紙業

平和紙業は、東京、大阪、名古屋の合計3店舗あります。こちらも各店舗で紙を直接購入することができます。


紙について知るには……

グラフィックデザイナーではない経営者や広報担当者が、もっと紙について知りたいと思ったとき、どうすれば良いのでしょうか?

(1)身近にある紙に注目する

「カラーバス効果」と(日本の一部でだけ)呼ばれるものがあります。これは、ある色について一度考えると、それ以降、その色のものばかりに目が行ってしまうというもの。『考具』という本を書いた加藤昌治氏が考案したであろう造語です。認知心理学では、これを頻度錯誤とか焦点錯覚と呼んでいます。

いずれにしろ、紙に一度注意を向けるとその手触りや表情などの違いにたくさん気がつくことになります。雑誌、名刺、書籍、パッケージ。こっちのほうが高そうだなぁとかなんかぬめっとしているなぁと。そしてとても気になったり、使ってみたいと思うものがあったら、それを持って、紙のショールームに行って、スタッフに尋ねてみましょう。いろいろと教えてくれます。

(2)グラフィックデザイナーや印刷会社

すでに取引のあるグラフィックデザイナーや印刷会社がある場合、その担当者たちにいろいろと尋ねてみるのも話がはやいでしょう。そのさいも、日頃から紙に注目しておくと、尋ねたいことがいっぱい生まれてくるはずなので、それについて聞いていくとよいでしょう。

(3)おおたしじみのnote

わたしのnoteにコメント書いていただければ、紙についていろいろと解説していきます。また紙についての記事もいろいろと書いていきます。


まとめ

「紙なんてどうでも良い」と思う方もいるかもしれません。あなたやあなたの企業に競合がいない場合は、正直いって紙も見たもデザインもまあまあどうでも良いでしょう。企業にとってのブランディングとは、恋愛における「モテ」に近いものがあります。モテる必要がないかたは、清潔感を出したり、身だしなみを整えたりしなくても良いでしょう。しかしモテたい場合、つまり競合がいる場合、同じ種類のライバルがいるなかで、より強い魅力を形成する必要が生まれてきます。そうなったとき、見た目はとても重要になります。なぜなら人は、「何かを選ぶとき」見た目をとても重要視するからです。ためしに、ラグジュアリーブランドの紙袋をみてみてください。一見普通の白だとしても、手触りが違うはずです。なぜそんな紙を使っているのか?それがこの話の左証となるでしょう。

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