デザインスタジオ、nendoが長野市御代田に作ったアーカイブ兼ゲストハウス
ビジネスに使えるデザインの話
ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています。今回は建築関係でもあるので「建築と家具のデザイン」マガジンにも収めています。
Nendoってにゃに?
Nendoは、佐藤オオキさん率いるデザインスタジオです。
こちらがNendoのウェブサイト。Nendoは、その仕事が膨大であり、かつ多岐にわたっており、かつ国内外で活動しており、その多動且つハイクオリティっぷりには、「人間なの?」と感じるレベルの驚異を感じます。例えば、東京2020オリンピック・パラリンピックの聖火台もNendoのデザイン(設計)です。
東京2020オリンピック・パラリンピックの開・閉会式演出企画チーム統括であった野村萬斎氏の「太陽の下に皆が集い、皆が平等の存在であり、皆がエネルギーを得る」というコンセプトに基づいてデザインされた聖火台です。求められた「太陽らしさ」を表現するために、耐熱ガラスの球体に炎を閉じ込めたり、炎を回転させて球状にしたりと、延べ85案が検討されています。
その他のNendoによる作品をざっと紹介していきます。一度に400ものプロジェクトを手がけることで知られるNendoは、その仕事が海外のラグジュアリーブランドから国内のコンビニ商品まで、多岐に渡りまくっています。
佐藤オオキってだれ?
佐藤 オオキ氏(1977年生まれ)は、日本のデザイナーで、デザインスタジオ 「nendo」(ネンド)の創設者であり代表。父親の仕事の関係により、カナダのトロントで生まれ、2000年早稲田大学理工学部建築学科を首席卒業。
2002年:早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了と同時に、デザインオフィス「nendo」(ネンド)を設立。
2006年:Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」に、2007年にはnendoが同誌「世界が注目する中小企業100社」にそれぞれ選出される。
2012年-2014年:早稲田大学非常勤講師。
2012年:イギリスのライフスタイル雑誌「Wallpaper」、イタリアのデザイン誌「Elle Deco International Design Award」にて、「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を最年少で受賞。
2013年:北欧最大のデザインの見本市「Stockholm international furniture fair」、トロントの「Interior Design Show」にて「Guest of honor」に選出される。
2015年:欧州最大のデザインの見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」(Maison & Objet Paris)にて「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
2016年:母校早稲田大学のラグビー蹴球部新ユニフォームのデザインを担当。
2021年:東京2020オリンピックの聖火台のデザインを手掛ける[2]。
Nendoのアーカイブ(作ったもの保管庫)
以上のように、とにかく仕事量が多いNendoですので、「作ったものを保管する場所が欲しい」&「でもまだまだ増えていくし」&「じゃあ広く土地を使えるところが良いし」&「それなら都会から遠くなるから泊まれたほうが良いし」というアイデアを形にしたNendoのアーカイブ(保管庫)が長野市御代田に2022年8月に完成していました。その名は「カルバートゲストハウス」。
御代田は軽井沢から近い。
カルバートってにゃに?
カルバート(Culvert)とは、暗渠(あんきょ)という意味。用水や、排水のための水路が道路、鉄道、堤防などの下に埋設されたとき、これを暗渠というのですが、これを作るのに、陶管や鉄筋コンクリート管の管きょが使われたり、ボックスカルバートやアーチカルバートといったユニット(予め作っておいて、現場で組み立てる)ものがあります。
Nendoのアーカイブはこのボックスカルバートを使って作られました。このため、拡張がしやすい(増やせばいいから)。
プレキャスト工法
工場でパーツを予めつくっておいて現場で組み立てる工法を「プレキャスト工法」と言います。通常は地中に埋設される水路や通路を作る「ボックス・カルバート」ですが、そのままだと機密性の確保や上記の写真のように「重ねる」ことができないため、さらに「プレストレス工法」も用いてパーツ同士を繋いでいます。
プレストレス工法
プレストレス工法は、PC(Prestressed Concrete)(プレストレスト コンクリート)を使用した工法で、コンクリートのなかに(この場合は、ボックスカルバートのなかに)PC鋼線を内部に入れて締め付け、その圧縮力でひっぱる力を打ち消す作りを利用したものです(※3)。
の略称で、直訳すれば「あらかじめ応力を与えられたコンクリート」といったところでしょうか。PCの技術を用いることによって、コンクリートの最大の弱点(圧縮には強いが引張には弱い。)を克服することができます。
この建造物に関してNendoは次のように語っています。
まとめ
著名なデザイナーは、属人的な存在となるため、スタッフを多く抱えても、そのデザイナーがメインになるため、こなせる数がすぐに限界がきます。しかしNendoはスタジオとしてうまく機能し、それでいてクオリティが希薄にならない稀有な存在です。しかもフィールドが国内外を問わない。ちょっとすごい存在です。そんなNendo、佐藤オオキさんを理解するのにおすすめの3冊がこちら。
参照
https://www.dezeen.com/2022/07/29/nendo-archive-culvert-guesthouse-miyota-machi-nagano-prefecture/
※3