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欧文書体の種類は4分類

ビジネスに使えるデザインの話

ビジネスにデザインの知識はけっこう使えます。苦手な人も多いから1つ知るだけでもその分アドバンテージになることもあります。noteは毎日午前7時に更新しています


欧文書体の分類

欧文書体にはどのような種類があるのでしょうか。
ほとんどの欧文書体は4つのグループに分類されます。

  1. セリフのあるもの

  2. セリフのないもの(サンセリフ)

  3. スクリプト(筆記体)

  4. デコラティブスタイル(装飾系)

これらら欧文書体の分類を知っておくと、書体の識別、選択、組み合わせに役に立ちます。

現在でも基準として参照されているのが、1954年に発表された書体分類、Voxシステム。これをベースとしながら17のスタイルに分類したものが以下のとおりです。(Voxシステムについてはこちらの記事で詳しく触れています。)

セリフ体

  1. オールドスタイル(Old Style)

  2. トランジショナル(Transitional Serifs)

  3. ネオクラシカル&ディドネ(Neoclassical & Didone Serifs)

  4. スラブセリフ(Slab Serifs)

  5. クラレンドン(Clarendon Serifs)

  6. グリフィック(Glyphic Serifs)

サンセリフ体

7. グロテスク(Grotesque)
8. スクエア(Square)
9. ヒューマニスティック(Humanistic)
10. ジオメトリック(Geometric)

スクリプト体(筆記体)

11. フォーマル(Formal)
12. カジュアル(Casual)
13. カリグラフィック(Calligraphic)
14. ブラックレター&ロンバーディック(Blackletter & Lombardic)

デコラティブ(装飾系)

15. グランジ(Grange)
16. サイケデリック(Psychedelic)
17. グラフィティ(Graffiti)


セリフ体

セリフ(Serif)とは

セリフとは文字のストローク(後述)の終わりに規則的に付けられた小さな線またはストロークのことです。

赤い部分がセリフ。
この画像のフォントはLiberation Serif。


セリフが使われている書体または「フォントファミリー」はセリフ体と呼ばれ、セリフが使われていない書体はサンセリフ(体)と呼ばれます。 タイポグラフィの資料によっては、サンセリフ書体を「グロテスク」(grotesque(ドイツ語ではGrotesk)または「ゴシック」(Gothic)(ただし、これはしばしばブラックレター活字も指す)、セリフ書体を「ロマン」(Roman)(ドイツ語ではAntiqua)と呼ぶこともあります。

ストローク(stroke)

文字を構成する母体となる線をストロークと良います。
Image source: Material Design


1.オールドスタイル(Old Style)

Image source: Myfonts

例:
Bembo
ITC berkeley Oldstyle
Centaur
ITC Legacy Serif

このカテゴリーには、15世紀後半から18世紀半ばにかけて作られた最初のローマ字書体や、それ以前の時代にデザインされた書体を模倣した書体が含まれています。

オールドスタイルの書体では通常、カーブしたストロークの軸が左に傾いているため、重さのストレスはおよそ8時と2時の方向にかかります(上図の小文字「e」の上の赤い線。

ストロークの太さのコントラストは劇的なものではなく、ヘアラインは重くなりがちです。

オールドスタイルのデザインでは、セリフはほとんどの場合ブラケットで囲まれており、ヘッドセリフはしばしば角度がつけられています。

初期のベネチアン・オールド・スタイルのデザインのように、小文字のeが斜めにクロスしていることで区別されるバージョンもあります。

ブラケット」とはこの赤い部分のところ
Image source: https://blog.thehungryjpeg.com/quick-guide-type-anatomy/


ベネチアン(Venetian)とは

Image source: Font for the Day

xハイトが小さめで、ストロークのコントラスが弱め、そして小文字の「e」の横棒が斜め。代表的な書体はAdobe Jenson。


2. トランジショナル(Transitional Serifs)

Image source: Myfonts

例:
Americana
Bakserville
Bulmer
Perpetua

18世紀半ば、イギリスの印刷会社でタイポグラファーのジョン・バスカヴィル(John Baskerville)がこのトランジショナル(過渡期的な)スタイルを確立しました。
これらの書体はオールドスタイル新古典主義デザインの移行期を象徴し、それぞれの特徴を取り入れている。バスカヴィルはカレンダー用紙と改良された印刷方法(どちらも彼が開発しました)を用いて、より細かい文字ストロークを再現し、より繊細な文字形状を維持することを可能にしました。トランジショナルの書体では、カーブ・ストロークの軸が傾いていることもありますが、ストロークには通常、垂直方向のストレスがあります(上図参照)。ウェイト・コントラストはオールドスタイルよりも顕著です。セリフは依然としてブラケット付きで、頭付きセリフは斜めです。

John Baskerville (1707–1775)
イギリス人肖像画家ジェームズ・ミラーによるイギリス人印刷工ジョン・バスカヴィルの肖像。 バーミンガム博物館・美術館蔵。
By James Millar ((c. 1735-1805) - Art UK[1], Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=24439642


3. ネオクラシカル&ディドネ・セリフ(Neoclassical & Didone Serifs)

Neoclassical & Didone
Image source: Myfonts

例:
Bodoni Classic
ITC Fenice
Marconi
Walbaum

ネオクラシカル/ディドネ・セリフは、18世紀後半に作られた書体、あるいはその直系の子孫の書体です。ジャンバティスタ・ボドニ(Giambattista Bodoni 1740–1813)の作品はこの書体の典型です。 最初に発表されたとき、これらの書体は新しいデザインであるにもかかわらず「古典的(classical)」デザインと呼ばれました。しかしすぐに印刷会社はこれらの書体デザインが古典的な活字スタイルのアップデート版ではなく、まったく新しいデザインであることに気づき始めました。

その結果、分類名は「モダン(modern)」に変更されました。20世紀半ば以降、これらの書体はネオクラシカルまたはディドネとも分類されるようになりました。

ストロークのコントラストは唐突で劇的。曲線の軸は垂直で、ブラケットはほとんどありません。多くの場合、ストロークの末端は、平筆が曽木されるようなものではなく、「ボール」の形をしています。これらのデザインは明瞭なデザインにより、とても上品な印象を与えるものになっています。

ジュゼッペ・ルカテッリ作、ジャンバティスタ・ボドニ(1805-1806年頃)の肖像。 グラウコ・ロンバルディ美術館。
By Giuseppe Lucatelli (1751-1828) - Scan from Bodoni, Manual of Typography - Manuale tipografico edited by Stephan Füssel. Published by Taschen 2010. ISBN: 978-3-8365-0553-6, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12732092


4. スラブ・セリフ(Slab Serifs)

スラブセリフ(Slab Serifs)
Image source: Myfonts

例:
ITC Lubalin GRaph
Rockwell
Egyptian Slate
Soho

スラブセリフ書体は19世紀に広告向け書体として普及しました。これらの書体は非常に太いセリフを持ち、ブラケットはほとんどありません。ストロークの太さは見た目にはほとんど変化がありません(一定の太さに見える)。スラブセリフ書体はサンセリフのデザインに太いセリフがただ加わっただけに見えるかもしれません。


5. クラレンドン・セリフ(Clarendon Serifs)

クラレンドン・セリフ(Clarendon Serifs)
Image source: Myfonts

例:
Bookman
ITC Charter
Clarendon
Nimrod

このカテゴリーには、19世紀半ばに初めて発表されたクラレンドン・タイプ・スタイルに倣った書体が含まれます。

Clarendon (1845)
By Deviate-smart - Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=18289303

クラレンドンは、文中の太文字(bold)としてデザインされた書体でした。

ストロークのコントラストはわずかで、セリフの長さは短いものから中くらいのもが多い。

その後、ディスプレイ書体として、より大きいサイズで使う書体が多くデザインされました。後期のクラレンドンは、文字ストロークの太さはよりはっきりし、セリフの長さは初期のデザインよりも長い場合が多い。


6. グリフィック・セリフ(Glyphic Serifs)

グリフィック(Glyphic)
Image source: Myfonts

例:
Albertus
Cartier book
ITC Elan
Friz Quadrata

グリフィックは、ペンで描かれたテキストよりもむしろ、石碑の碑文をベースにした書体です。ストロークの太さのコントラストはほとんどなく、カーブしたストロークの軸は垂直になる傾向があります。

グリフィックのわかりやすい特徴は、三角形のセリフのデザイン、あるいは文字ストロークの終端(ターミナル)が広がるところです。一部の書体分類システムでは、このカテゴリーは2つのグループ「グリフィック」と「ラテン」に細分されます。この場合、三角形のセリフを持つ書体が「ラテン」に分類されます。


サンセリフ体

サンセリフには鱗(セリフ)がない。Liberation Sans
Recreated by User:Stannered, original by en:User:Chmod007 - en:Image:Serif and sans-serif 01.png, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=2058303による

サンセリフ(仏: Sans-serif)とは、セリフのない書体です。セリフとは、文字の線の端につけられる線・飾りで、「うろこ」、「ひげ飾り」、「ひげ」とも呼ばれます。「サン」とは、フランス語で「〜のない」という意味で、「セリフのない書体」を表しています。グロテスク体とも呼ばれます。

7. グロテスク サンセリフ(Grotesque Sans Serif)

グロテスク サンセリフ(Grotesque Sans Serif)
Image source: Myfonts

例:
ITC Franklin Gothic
Helvetica 
News Gothic
Univers

これらは商業的に普及した最初のサンセリフ書体です。グロテスク サンセリフではストロークの太さのコントラストが最も顕著で、多くのカーブにはわずかに「四角い」質感があり、いくつかのデザインにはローマン体によく見られる「ボウルとループ」の小文字gがあります。


8. スクエア サンセリフ(Square Sans Serif)

スクエア サンセリフ(Square Sans Serif)
Image source: Myfonts

例:
Cachet
Eurostile
Felbridge
Neo Sans

スクエア サンセリフは一般的にグロテスク サンセリフの特徴やプロポーションに基づいているのですが、通常はカーブしているストロークが四角くなっているのが特徴です。通常、サンセリフよりも文字間隔にゆとりがあり、ディスプレイ用のデザインに限定される傾向があります。

9. ジオメトリック サンセリフ(Geometric Sans Serif)

ジオメトリック サンセリフ(Geometric Sans Serif)
Image source: Myfonts

例:
Avenir
Futura
ITC Bauhaus
Harmonia Sans

ジオメトリックは「幾何学的」という意味。ジオメトリック サンセリフは、シンプルな幾何学的な形状から構成された書体です。ストロークの太さは均一です。ジオメトリック サンセリフはグロテスク サンセリフより読みにくい。


10. ヒューマニスティック サンセリフ(Humanistic Sans Serif)

ヒューマニスティック サンセリフ(Humanistic Sans Serif)
Image source: Myfonts

例:
Cachet
Eurostile
Felbridge
Neo Sans

ヒューマニスティック サンセリフは古代ローマ時代の碑文のプロポーションに基づいてデザインされているサンセリフ体です。ストロークの太さにコントラストがある場合があります。ヒューマニスティック サンセリフは、サンセリフ書体の中で最も読みやすい書体です。セリフ体のデザインやプロポーションに近く、しばしばカリグラフィーの影響を受けている場合もあります。

スクリプト体(筆記体)

スクリプト体は、手書きやカリグラフィーを模した書体です。 多くのセリフ書体やサンセリフ書体よりも読みにくいため、大量の本文には向かず、一般的にはロゴや招待状に使われます。 歴史的には、ロゴ、ディスプレイ、店頭のレタリングのほとんどはフォントを使わず、むしろサインペインターや彫刻家によってカスタムデザインされていました。 このジャンルは、現代のフォント・フォーマットによって手書きをより複雑にシミュレーションできるようになったため、近年急速に発展しています。例としては、Coronet(1937年の非常にシンプルなデザイン)やZapfino(より複雑なデジタル・デザイン)などがあります。

11. フォーマル スクリプト(Formal Scripts)

フォーマル スクリプト(Formal Scripts)
Image source: Myfonts

例:Bickham Script, Helinda Rook, Elegy

フォーマル スクリプトは17世紀のフォーマルな文体から派生した書体です。多くの文字には他の文字と結合するストロークがあります。


12. カリグラフィック スクリプト(Calligraphic Scripts)

カリグラフィック スクリプト(Calligraphic Scripts)
Image source: Myfonts

例:Belltrap, Blaze, Mistral, Vizaldi

これらの書体はカリグラフィーを模倣している。デザインは連結するものとしないものがあります。カリグラフィック スクリプトの多くは平筆を使って書かれたようなデザインになっています。


13. ブラックレター&ロンバーディック スクリプト (Blackletter & Lombardic Scripts)

ブラックレター&ロンバーディック(Blackletter & Lombardic)
Image source: Myfonts

例:Agincourt, Cresci Rotunda, Goudy Text, Monmouth

これらの書体は、活版印刷が発明される以前の写本レタリングを模しています。

ブラックレターとは、1150年頃から17世紀まで西ヨーロッパ全域で使用されていた文字です。デンマーク語、ノルウェー語、スウェーデン語では1870年代まで、フィンランド語では20世紀初頭まで、ラトビア語では1930年代まで、ドイツ語では1940年代まで一般的に使用され、1941年にヒトラーが公式に廃止しました。 ブラックレターはオールドイングリッシュ(Old English)と呼ばれることもありますが、ブラックレターより何世紀も古く、島文字(Insular)やFuthorcで書かれていたオールドイングリッシュと混同してはいけません。 イタリック体やローマン体とともに、ブラックレターは西洋タイポグラフィの歴史における主要な書体のひとつでした。

ロンバルディックという言葉は、ロンバルディック キャピタルから来ており、これは中世の写本などで使われていた装飾的な大文字の一種です。

写本に描かれたロンバルディア文字の大文字
By Österreichische Nationalbibliothek, (Austrian National Library) - http://archiv.onb.ac.at:1801/webclient/StreamGate?folder_id=200&dvs=1519664610592~358, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=66823669


12. カジュアル スクリプト(Casual Scripts)

12. カジュアル スクリプト(Casual Scripts)
Image source: Myfonts

例:Brush Script, Freestyle script, Limehouse script, Nadianne

カジュアル スクリプトは、あたかも素早く書かれたかのようなカジュアルさを示唆するようにデザインされています。この書体では、ブラシを使って書かれたようなデザインが多くあります。文字が次の文字につながっている場合もまた多くあります。


デコラティブ スタイル(Decorative Styles)

デコラティブ スタイル(Decorative Styles)
Image source: Myfonts

これは最も大きなカテゴリーであり、また最も多様なカテゴリーでもあります。 長い文章に使われることはほとんどありませんが、デコラティブ スタイルは看板や見出しなど、強いタイポグラフィの主張が求められる場面でよく使用されます。

デコラティブスタイルの書体は、タトゥーやグラフィティなど、文化の一面を反映したり、特定の精神状態や時代、テーマを想起させたりすることが多くあります。サイケデリックやグランジといったデザインは、流行り廃りが激しい。

デコラティブスタイルのなかには、独特で劇的な結果を得るために、型破りな文字の形やプロポーションを用いるものもあり、立体的なものもあったりします。

15. グランジ(Grange)
16. サイケデリック(Psychedelic)
17. グラフィティ(Graffiti)
※例は省略。


参照した記事の著者:アラン ヘイリー(Allan Haley)

アラン・ヘイリー氏は Monotype イメージングのワード&レターズ担当ディレクター。ヘイリー氏はMonotypeで書体デザインに関するあらゆる戦略的プランニングとクリエイティブな実装を担当しています。


まとめ

一般的には欧文書体の分類に詳しくなくても問題ありませんが、デザイナーなど書体を選ぶ必要がある方々には、検索したり、検討したりする際に、書体の分類を熟知していたほうが圧倒的に有利です。


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参照

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