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「空飛ぶタイヤ」

運転中のトラックのタイヤが突如外れる。外れたタイヤは縁石に当たり、そのまま空を飛び、子供と歩いていた母親の頭上に激突… こんな衝撃シーンから始まります。

あらすじを何も知らなかった私は、「空飛ぶタイヤ」ってこういうことだったんだ…と驚きました。

事故の原因はトラックの整備不良だと疑われ、町の小さな運送会社は窮地に追い込まれるが、社長の赤松はトラックそのものの欠陥だと考え、財閥系大手自動車メーカーを相手に真相究明に奔走する。やがて、大企業の闇が明らかになり…。

主役は中小企業の社長 赤松で、観客はもちろん赤松に感情移入しながら物語を追うのですが、この映画にはいろんな立場の人が出てきて、中でも、大企業での組織人としての人生と個人の正義との間で葛藤するディーンフジオカ演じる沢田の役は、ものすごく身近に感じました。

会社というのは、大人にとっての学校みたいなもので、働いているうちにいつのまにかその企業の価値観や文化に染まっていくもの。たとえ、自分の企業が悪いことをしていたと知っても、一人で声を上げて正義を貫くなんて、簡単にできることではありません。映画のようなリコール隠しといった犯罪じゃなくても、例えば会社のちょっとおかしな習慣とか、独特の文化とか、新入社員の時は「変だな~」って思ってても、数年経てば何の違和感もなく自分でも同じことをやってしまったりするものです。

正義のために声を上げられるヒーロー的存在ではなく、リアルな組織人として揺れ動く沢田の姿がよかったです。

赤松の前には次から次へと壁が立ちはだかりますが、池井戸潤原作なんだから最後はスカッと解決されるはず、と妙に安心して見られました。

さすが元銀行員の池井戸作品、銀行とのやり取りのシーンも面白かったです。新・半沢直樹も見たい。

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