見出し画像

『往復書簡』(仮)19往信

Tさんへ

こんにちは。

色について質問されて、あらためて考えてみたけれど、うまく伝えられるか自信がないです。
絵画は写真とは違うので、基本的には何でもありの世界だと思います。
画家の人が写実に重きを置いていれば、デッサンだけでなく、色についても、いかに再現できるかを追求するでしょうけれど。

絵って、キャンバスに切り取って描くわけで、その画面の中での色の響き合いも重要だし、その画家の個性や魅力にもなるわけで。
背景を色面で処理するのは、Tさんの考えで行くと認められないことになってしまう気がするし。

私は絵に関しては、どんなジャンルのものも観るのですが、日本画の話をしてみようと思います。
日本画は岩絵具といって、鉱物の粉末をニカワで画面(絹とか紙とかです)に着けて行くのですが、例えば、緑色を使うとすると、緑青(ろくしょう)という色があります。これは孔雀石(マラカイト)を粉末にした岩絵具です。細かさやいろいろな処理をして、50近い色があります。
岩絵具は混色ができないので、様々な工夫によって、画家の人が求めるものが作られた結果なんだと思います。

私は日本画を描いたことはないので、いい加減なことを書いてしまっているかもしれないので、うのみにしないでください。
ただ思ったのは、絵画って、画家の人が表現したいと思ったものがあって、それは、美しさの追求であれば、様々な省略や誇張も許されると思うし、訴えたい心情であれば、この世には存在しないものを描くこともありうると思うし。

表現ってものすごく自由なものだと思います。
なんだか色の話とはずれてしまって申し訳ありません。
世界にはあらゆる色が数えきれないほど溢れていて、それをいろいろな画材で画面に閉じ込めようとしても、きっと限界があるような気がします。

なんだか今日の私はえらそうですね。Tさんに影響されたのかな?
あ、ごめんなさい。Tさんがえらそうって意味じゃないです。
答えになったかな?

それでは、また。

Sより


#小説 #書簡小説 #手紙 #手紙小説 #往復書簡 #往復書簡小説 #掌の小説 #短編 #短編小説 #コミュニケーション #コミュ障 #文通 #理想の文通 #リアリティなんていらない

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?