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乳酸菌シロタ株はストレス反応とウイルス感染を改善する:ヤクルトBL整腸薬の解説(2)


ストレスでお腹が痛くなるのはなぜなのか

ストレスとは「嫌なこと」に抗うための身体の反応です。

ストレスが脳を刺激すると視床下部から下垂体へ、下垂体から腎臓の上にある副腎皮質に伝わり「コルチゾール」が分泌されます。コルチゾールは脈拍や血圧を上げて、身体全体をストレスに対応できるようにします。

夜に嫌なことを思い出して眠れなくなるのは、このような脳や身体がストレスに対応するために緊張状態になって力が入ってしまうためですが、一方でまったく関係ないと思われる「お腹」が異常をきたして、腹痛や下痢を誘発させることもあります。

逆に、下痢や便秘が続くと不安が大きくなって、精神に影響を与えて無気力になるなど「うつ症状」を発症することもあります。

これらの脳と腸の双方がお互いに影響しあう現象を「脳腸相関」として研究が進められてきましたが、近年では脳腸相関に「腸内細菌」が密接に関与していることが明らかになりました。


ストレスと腸内細菌(1)

ストレスと腸内細菌について次の研究が報告されました。

1.動物を用いた研究
・腸内細菌を持たない無菌マウスと通常のマウスでは、「無菌マウス」のほうがストレス反応が高かった。

・無菌マウスにビフィズス菌を投与すると、ストレス反応は通常マウスと同レベルになった。

・無菌マウスに病原性大腸菌を投与すると、無菌マウスよりさらに過剰にストレス反応を示した。


2.ヒトを用いた研究
・うつ病患者は健常者と比較して有用菌であるビフィズス菌の菌数が有意に少なく、乳酸菌の菌数は少ない傾向にあった。

これら2つの研究からわかることは腸内細菌とストレス反応は密接な関係がある、ということです。

腸内にビフィズス菌など善玉菌が少ないとストレス反応は高まり、悪玉菌が増えるとさらに過剰にストレス反応が高くなる傾向がある


うつ病は「過剰なストレス」によって発症するといわれていますが、詳細な原因はまだわかっていません。うつ病患者の腸内細菌についても、それがうつ病の原因なのか結果なのかはわかりませんが、いづれにしてもストレスと腸内細菌にはどうやら因果関係がありそうです。

では、悪玉菌が増殖するとストレス反応が高くなるのであれば、善玉菌を増やして腸内環境を改善すればストレス反応は低くなるのでしょうか。

ストレスと腸内細菌(2)

ヤクルトの乳酸菌である「シロタ株」でストレステストを行いました。条件は次のとおりです。

1.ストレス反応テスト
・被験者は進級試験を控えた医学部生で、シロタ株群とプラセボ群の2つのグループに分類。

・期間は毎日100ml1000億個のシロタ株飲用を8週間、その前後の非飲用期間2週間ずつの計12週間。試験終了でシロタ株飲用終了。

・方法はアンケート調査によるストレス体感テストと唾液中のコルチゾール濃度テスト。


2.ストレス反応テストの結果
2-1.ストレス体感テストの結果
・プラセボ群は試験日が近づくにつれてストレス体感数値は上昇し、「試験1週前がピーク」に。試験終了から数値は減少する。

・シロタ株群は試験4週前からストレス体感数値が上昇し、「試験1週前がピーク」に。試験終了から数値は減少する。


両者の違いは「試験4週前に最も開き」が大きく、シロタ株群が4週前以降からストレス体感が増すのに伴い、開きは小さくなった。


2-2.唾液中コルチゾール濃度テストの結果
・プラセボ群は飲用前から試験直前まで濃度は上昇。試験日以降は減少する。

・シロタ株群は飲用前から上昇するが、「試験2週前からほぼ横ばい」。試験日以降は緩やかに減少する。


これら2つのストレステストのうち、唾液中コルチゾール濃度については試験直前になっても、シロタ株群ではコルチゾール濃度が変化しなかったのが興味深い。コルチゾール濃度が変化しないのはストレスを感じていない、ということであり、一方でプラセボ群ではコルチゾール濃度はピークになっています。

これら2つのストレステストにより、シロタ株がストレスに関与していることがわかります。

3.ストレスによる熟眠テスト
脳がストレスを感じると身体はそれに対応しようと様々な反応を起こしますが、「睡眠」もその一つです。

ストレス状況下での睡眠テストでは「眠りの深さ」を測定するために脳波測定を用います。被験者、シロタ株などはストレス反応テストと同様ですが、方法は次の3つに分けて行います。

・脳波測定による熟眠時間、熟眠度の変化とアンケート調査による起床時眠気の変化

4.ストレスによる熟眠テストの結果
4-1.熟眠時間の変化
・プラセボ群は試験日が近づくにつれて熟眠時間は減少していき、「試験直後に最も減少」する。試験直後以降は熟眠時間は上昇して回復をみせる。

・シロタ株群は試験2週前まで熟眠時間は上昇するが、「2週前以降は緩やかに減少」する。試験直後も緩やかな減少が続き、それ以降はほぼ横ばい。

プラセボ群でみせた「試験直後の大きな減少」はシロタ株群ではみられず、2週前からの緩やかな減少が継続するのはシロタ株が熟眠時間に関与していると思われます。

熟眠時間について、シロタ株群とプラセボ群では「試験直後」に大きな開きがみられました。

4-2.熟眠度の変化
・プラセボ群では2週前まで熟眠度は緩やかに上昇した後、緩やかに減少する。

・シロタ株群では2週前まで上昇するが、試験直前から減少する。


熟眠度では「試験直前」にシロタ株とプラセボ群に最も開きがみられました。全体的にシロタ株は熟眠度に対して良好であったとわかります。


4-3.起床時眠気の変化
シロタ株群プラセボ群ともに「試験直前」に悪化のピークを示すが、試験直前以降はシロタ株の回復のペースが強く、「試験直後」にプラセボ群との大きな開きを示します。

シロタ株群は睡眠中の熟眠時間、熟眠度だけでなく起床時眠気においてもプラセボ群と有意な数値を示しました。

5.ストレス反応テストと睡眠テストのまとめ
それぞれのテストで使用された飲料はともに100ml1000億個のシロタ株で、これは容量菌数ともに「ヤクルト1000」と同じものです。

ヤクルト1000といえば「ストレス緩和」と「睡眠の質向上」が容器にもHPにも大きく表記されていますが、いずれもテストの結果を通して科学的根拠に基づいたものです。

ただし、これらの結果は「100ml1000億個のシロタ株」によってもたらされたもので、いずれかの条件がそろわないと効果は期待できない、ともいわれています。

つまり、ヤクルトnew(シロタ株200億個)を5本飲んでも効果は期待できず、100ml1000億個の「高密度」によって効果が期待できる、とされています

また、ヤクルト1000の糖質(炭水化物)は14.1gと多く、100mlあたりではコーラの11.3gより多くなります。これはWHO(世界保健機関)が定める1日糖質摂取量25gの半分以上にあたり、ヤクルト1000を毎日飲むのであれば、1日1本が上限となります。

これらのテストはヤクルト1000販売前に行われたものであり、当然ながら口コミなどないときからすでに「よく眠れる」ことがテストによって証明されています。

よく眠れる、とは「眠るまでの時間」ではなく眠ってからの「熟睡度」や「起床時の眠気」の変化であり、ストレス状況下にあってもこれらの数値はプラセボ群と比較して有意に高い数値を示していました。


シロタ株とNK細胞

乳酸菌は主に小腸で働き、整腸作用を示します。整腸作用とは、悪玉菌の増殖を抑制して善玉菌を増殖させることで腸内環境が整う作用ですが、小腸で整腸作用が働くと次の効果が期待できます。

栄養の消化吸収と免疫活性の強化


免疫活性の強化について、一般的には免疫細胞が乳酸菌をエサにすることで活性化される、といわれてきましたが、シロタ株はその中でも特に「NK細胞」を活性化する、と動物実験ですでに証明されているようです。

では、このNK細胞とは何なのでしょうか。NK細胞が活性化されるとどうなるのでしょうか。

NK活性とその実験

1.NK活性のメカニズム
NK細胞は血流にのって全身を巡回し、がん細胞やウイルス感染細胞を発見すると即座に攻撃排除する免疫細胞です。シロタ株はNK細胞を増やす、のではなく個々の細胞を次の手順で活性化させると推測されています。

1-1.免疫細胞であるマクロファージがシロタ株を取り込むと、マクロファージは活性化してIL12(インターロイキン12)という物質を産生します。

1-2.マクロファージから産生されたIL12はNK細胞を活性化させます。


つまり、シロタ株が直接NK細胞を活性化させるのでなく、マクロファージのエサとなることでNK細胞は活性化されます。


2.喫煙者に対するシロタ株がNK活性に及ぼすテスト
NK細胞の活性化は生活習慣に影響されることが明らかとなっていて、中でも「喫煙」と「運動不足」がNK活性の低下に大きな影響を及ぼします。

では、喫煙者がシロタ株を飲用すると低下しているNK細胞はどのように変化するのか。喫煙者を集めて次の実験を行いました。

・喫煙者をシロタ株群とプラセボ群の2つのグループに分ける。
・シロタ株群には400億個のシロタ株を、プラセボ群にはシロタ株ではない同じ風味のものを3週間飲んでもらう。
・飲用前後に採血してNK活性を調べる。
・NK活性の調査方法は飲用前後のNK活性数値から変化量の平均を求め、平均を上回った人の割合を調べる。

2-1.NK活性のテスト結果
プラセボ群では平均を上回ったのが43%であったのに対して、シロタ株群では66%が平均を上回りました。

今回の実験では、ストレス反応テストで用いたシロタ株100ml1000億個という高密度で製造に技術を要するものでなく、400億個という他でも代用できそうな菌数を用いた実験でした。

NK細胞はがんの予防やウイルス感染の予防と重症化を抑制する免疫細胞です。

がんは専門知識が必要で生死に関わる大きな病気ですが、ウイルスは「かぜ」や「インフルエンザ」など身近にある、感染しやすい病気です。

まずは感染症対策の基本である帰ってきたら「うがい」と「手洗い」を習慣にするとともに、NK活性と整腸作用に効果のあるシロタ株で小腸を元気にして健康を維持しましょう。


ヤクルトBL整腸薬の成分他詳細情報


ヤクルトBL整腸薬 36包1980円
成分
成人1日服用量(3包)中、

・ビフィズス菌150mg:主に大腸で働いて乳酸や酢酸を産生し、整腸作用を現します。
・カゼイ菌(乳酸菌)150mg:主に小腸で働いて乳酸を産生し、整腸作用を現します。
・添加物として乳糖水和物、など

用法用量
次の量を1日3回、食後に服用してください。
※本剤は錠剤ではなく「散剤」となります。

・15歳以上1回1包
・5歳以上15歳未満1回1/2包
・3ヶ月以上5歳未満1回1/3包

効能効果

・整腸(便通を整える)、腹部膨満感、軟便、便秘

相談すること

・本剤は添加物として乳糖水和物を含有しているので、牛乳アレルギーのある人はご相談ください。

その他ご不明な点は薬剤師や登録販売者にご相談ください。


ヤクルトBL整腸薬の特徴

ヤクルトBL整腸薬は乳酸菌としてヤクルトの「シロタ株」を150mg、ビフィズス菌としてミルミルの「BY株」を150mg配合しています。

菌数は1日3包で210億個。内訳はシロタ株は60億個、BY株は150億個です。上記解説ではシロタ株1000億個、400億個と扱ってきましたが、60億個は配合上の上限なのかもしれません。

しかし、糖質を気にせず服用できるのでヤクルトやミルミルとの併用も可能です。乳酸菌飲料や整腸剤など「生菌」を経口摂取するものは2日以内で排出されるものが多いので、一度にたくさん摂取するのでなく毎日の習慣としてご利用ください。

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