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“ファッションAI”は、別に貴方のファッションを決めません!

ZOZO、Magaseek、ShopList等、ファッションモール各社の商品レコメンドエリアに ファッションAI の導入が進んでいる。
例えば以下のような商品詳細ページの下部(このアイテムを見てる人におすすめ)の部分がAIによるレコメンデーションだ。

上部のレコメンドは、「協調フィルタリング」型と言われる従来型のビッグデータ統計処理によるレコメンド。その商品を見た人が同一セッションで見た確率の高いものが抽出される。この上下のシステムからの提案を見て、貴方はどんな印象をお持ちだろうか?比較してみるとわかりやすい。
協調フィルタリング側の方は、自分が見ていたアイテム(アウター)という要素は同じだが、適度にデザイや色、テイストはばらけている。
一方でAI側のレコメンドは、赤いカラーのショート丈のカジュアルジャケットばかりが表示されている。これは、商品のデザインの類似性をAIが判断して似たものを表示してるからだ。人の行動や心理に基づいてたオススメでは無いのである。
現在の画像認識AIの学習状況は、商品の色は比較的簡単に判定できる、大枠の形(外形)も判定可能なレベルだ。なのでAIを指導する教師データを選ぶ人や教え方によって、このレベルのレコメンドになる。

もちろんこれで、良いというヒトも居るだろう。しかし、大多数のユーザーはこのAIによる提案を見て『げっそりする』のではないだろうか?そもそも『赤』というのは強烈な色(メンズファッションの場合は特に)なので、大量に見せられるとげっそりする。かつ、似たようなカジュアルなデザインばかり見せられても、『これしかないのか?』『新しい発見がない!』という気持ちになる。

なぜこんなことになるかというと、『AIがどんな商品提案をしてきたら顧客は嬉しいか?その商品を欲しくなるか?』という観点がオンラインモールの運用担当に欠落しているからだ。それがあれば、AIの学習レベルがもう少し上がってからリリースする、またはルールベースのレコメンドを組み合わせて、げっそりしないレコメンドに仕立て上げるだろう。

ファッションというジャンルの購買行動は決して目的買いではない。店頭の優秀な販売スタッフはお客が買おうとしたものや想定したものとは異なる商品、お客のニーズをちょっとだけスライドさせた商品を提案してお客を魅了する。実はAIも上手く育て上げればそれができるはずだ。

今そうなってないのは、自分は『目的買い』しかしないようなファッション買物経験の浅い担当者がECのUI・UXを管理しているからなのだ。
結局のところ、最新のイノベーションを生かすも殺すも、ヒトの感性や繊細さがあってのこと。感覚的な商品であればあるほど、そこが重要になってくる。

最後にファッション業界誌である繊研新聞に掲載された本日の記事を引用しよう。日本の人工知能活用の雄であるAbejaの岡田社長の記事である。
これ、非常に共感するなぁ。
人工知能は非常に有効なツールだけど、結局人の感性まで読んで自動的に提案してくれるわけじゃない。岡田氏は『ノイズ』と言っているが、僕はそれを感性とかサプライズとか偶然性とか呼んでいる。その部分をきちんと理解してAIを使ってこそ、ホントに消費者を満足させられるツールに進化するのだと思う。

※繊研新聞 2019年1月8日記事より。