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【社長インタビュー①】高齢者の生活改善に真正面から取り組むデイサービス。その未来図とは?

2014年12月に宮崎市で創業した『未来図Labo』。運営するデイサービス未来図は特徴的で、高齢者の生活改善をあきらめない運営スタイルです。最近は自治体に選ばれる企業としても注目されています。3店舗をまとめる金子茂稔社長に、施設に込められた思いや今後の展開について話を聞きました。

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『未来図Labo』社長の金子茂俊


「一時的な100点」より、長期的に「80点を取り続けられる」ことを目指して

ー以前は作業療法士として病院に勤務されていた金子さん。未来図Laboを設立したきっかけは何だったんですか?

金子社長(以下、金子):私は17年間、宮崎市内の病院で作業療法士として勤務してきました。患者様一人ひとりに対して、できるかぎりの機能回復を目指して毎日リハビリを行ってきました。ただ、こちらが思い描いたとおりの機能回復を遂げた方に、退院後しばらくしてお会いすると、びっくりするほど状態が悪くなってしまっているケースを見ることがありました。

ーなぜ状態が悪くなってしまうのでしょうか?

金子:病院でのリハビリは、リハビリできる期間が決まっています。その期間中、作業療法士や理学療法士、病状によっては言語聴覚士なども加わりマンツーマンでリハビリに当たります。もちろん、患者様ごとに回復可能とされる状態の上限、いわば100点を目指します。
しかし、退院してご家庭であまり運動やリハビリをせずに過ごしたとしましょう。すると、あっという間に機能は後退してしまいます。退院した患者さんのその後に触れ、体の機能維持のために必要な知識や技術、習慣を体得していただくことまで含めてリハビリなんだと痛感しました。率直に自分が提供していたリハビリの浅さを反省せざるを得ませんでした。

健康な方であっても、勉強や筋トレ、ダイエットを自己管理して続けていくことの難しさは想像できると思います。十分に体が動かない方にとってはより難しいですよね。

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ーそこにもどかしさを感じたのですね。

金子:100点満点の回復を遂げて退院しても、その能力を維持する術を持ち合わせていなかったら、思い望んでいた生活は送れなくなります。それなら、「一時的な100点」よりも「80点を取り続けられる」方法を伝えた方がいいのではないか、と考えるようになりました。もちろん100点を維持できることが最大の目標ではあるのですが…。

ーリハビリや体の機能回復に重点を置いたデイサービスを設立したのは、そういった思いからなのですね。

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『フィットネス未来図Labo加納店』での集団運動の様子。みんなと一緒に頑張ろう!というモチベーションもリハビリを継続するために大事なこと

大事なのは、利用者様ご自身が健康になろうとすること

ー『未来図Labo』のように、リハビリテーションの要素を強く打ち出したデイサービスは、全国または県内において多く見られるのですか?

金子:「リハビリ特化型デイサービス」と呼称されるタイプの施設があります。ただ、多くの施設は「理学療法士や作業療法士のリハビリを受ける」スタイルだと思います。私たちの施設のように「生活改善に向け、利用者さんが主体的に知識、技術、習慣を習得するリハビリ施設」は少ないと思っています。

開設当初は、ケアマネジャーさんから、「あの施設はたくさん理学療法士や作業療法士がいるから、マッサージしてもらえますよ!」と聞いてきた利用者様が多くご利用になられました。そんな時は「健康を守るために必要な事はマッサージではないですよね」と説明し、正しい健康活動に取り組んでいただくための説明を繰り返しました。

例えば糖尿病が原因で脳出血を起こし、麻痺が生じてしまった方へ、麻痺した手足にマッサージをしても健康そのものが改善するはずはないのです。健康そのものを改善するためには、何に取り組むべきなのか?にこだわってデイサービス未来図を運営してきました。その一つに「しっかりとした運動への取り組み」があります。最初はハードだなと感じられる利用者様も多いようです。

自治体に出張して介護予防教室も行っています。参加者に運動を指導する金子社長

ー運動を頑張ったら、機能は回復するのでしょうか?

金子:もちろんその方の状態によることなので、絶対にとは言えませんが、適正な方法で適正な量の運動をすると、良い変化が現れます。やはりできるだけ早い段階で運動に取り組まれた方が、好ましい変化が現れやすいといった傾向があります。

「高齢なんだからやれる範囲でいいですよ」という言葉はよく聞くし、私たちもそういう言葉をかけたくなります。

ただ、毎日毎日1日分は老化するわけなので、老化に抗うだけの運動効果を感じていただく必要があるわけです。耳障りの良い言葉は、中長期的に言えば、その方の生活を壊してしまうこともあります。

大事なことは、せっかく運動したのに効果が出ないという「運動のやり損」感が出ないように支援することだと思っています。

ーご自身で変化がわかると、モチベーションも上がりますよね。

金子:そうなんです。効果を感じ始めるまでが一番きついところですが、効果を実感し始めると多くの方がさらなる健康状態を自ら目指すようになります。好き好んで不健康な状態を選んでいる方はいませんから、健康が手に入る身近なものだと感じると、モチベーションが一気に上がりますね。そして、やりたかったけれどあきらめていたこと、やっていなかったことができると、さらにモチベーションは上がりますね。

我々もできていないことを指摘するのではなく、小さな変化をキャッチして、言葉にして伝えることを大切にしています。

変化のポイントはご家庭での過ごし方。ご家族との課題共有も必須

ーデイサービスと聞くとやはり「お世話される場所」と思われがち。未来図Laboに来ると、そのギャップにびっくりするのでは?

金子:未来図Laboでは、利用体験していただく前に必ずご家庭へ事前訪問をし、解決したい課題を共有するようにしています。体験時は、その課題と克服するために必要なことについてお伝えするようにしています。「お世話される場所」と「自ら課題を解決に行く場所」は大違いです。実際、「お風呂に入れないから、デイサービスで入浴させてもらえないか」という依頼内容に対して、少しだけ環境の工夫を提案して、入浴に必要な動作を練習しました。すると難なく入浴できて、ご本人も大満足だったというケースはよくあります。最初からお世話ありきのサービスを提供することは、疑ってみる価値があると思います。

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『デイサービス未来図Labo東大宮店』は壁一面に鏡が。ご自身で姿勢を確認しながら行っていただくためです。

たしかに、イメージしていたサービスとは違っていて驚かれる方はいらっしゃいます。ただ、できることが増えること自体に、喜びを感じる方が圧倒的に多いので、我々のサービスを受け入れてくださいます。

また、我々はデイサービス内のことだけではなく、ご自宅のことに関しても意識的に関与させていただきます。ご自宅での過ごし方やご自宅でのリハビリについてお伝えし、実践できたことの報告もしてもらいます。

「当施設に通っていただければ良くなりますよ」ではなく、ご家庭での過ごし方も意識的に変えていただくことで生活は変わっていきますから。

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来所の際には、ご自宅での運動や食事、過ごし方についてスタッフと一緒に振り返ります。『デイサービス未来図神宮店』にて

ー利用者様やそのご家族との意識の共有が大切なのですね。

金子:私たちの経験からお伝えできることを伝え、ご理解いただくことで、生活改善の「機を逃さない」ように心がけています。タイムリーな関わり方も大切なポイントです。
「お年を召したら施設に」が当たり前ではなく、いつまでもご家庭や地域社会の一員としてお過ごしいただくために、私たちをご活用いただければと思っています。

*インタビュー後半では創業のきっかけや今後の展望・課題まで深掘りしています。引き続きご覧ください。
【社長インタビュー②】介護予防の枠組み作りに加わり「宮崎県の持続可能性を向上させる」


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