第6章―和解のためのマイクロセービングプロジェクトのスタート

●「マイクロセービング」って何?

 マイクロセービング(小口貯蓄)とは、開発途上国の農村部の貧困地域の人々の所得向上のための取り組みです。具体的には、農村で30人程度の「組合」を組織し、メンバーが毎週集まって少額の現金を積み立てます。メンバーは積立金から融資を受けて小規模ビジネス(牧畜、農業、工芸品づくりなど)をはじめたり、組合として銀行口座を作って利息を得ます。1年ほどの活動の後、メンバーは貯蓄金額の口数に応じて、配当金を受け取ります。1年間でおよそ1.5倍になって戻ってきます。これによって貧困状態からの脱却を目指そうというものです。

 所得向上の一例を紹介しましょう。

 ルワンダの南部ニャマガベ郡にあるグループAの例(2013年11月調査)

 グループのメンバーは30人。この調査時は、9カ月間の第一サイクルを終了したところで、この日は貯蓄した積立金を配分する日であった。
 グループの積み立ては毎週集まって行います。マイクロセービングの一人の積立額は一口200ルワンダフラン(約35円)で、一度に1~4口積み立てることができます。グループ全体の積立金を基に、メンバーが小規模ビジネスを提案し、借り入れを行います。ビジネスが軌道に乗ったら利息をつけて借入金を積立金に返済します。
 小規模ビジネスの例としては、野菜の栽培、家畜の飼育、手工芸品作り、生活雑貨販売店、作物などの移送のためのガソリン代などとなっています。第二サイクル以降は銀行に貯蓄して利息を得るということも行います(メンバーは識字、計算ができないものが多いので、拙速に物事を進めていない)。

グループAの実績

 9か月で4,131口(Parts)の積み立てが行われた(=826,000ルワンダフラン)。
 9ヶ月間に行われた小規模ビジネスの利息を足したものと合算し、最終的な積立金額の合算は1,518,825 ルワンダフランとなった。配分金額は積立口数に応じて定められる。

メンバーNo.2の場合
 積立172口(34,400ルワンダフラン)⇒配分額63,225ルワンダフラン
メンバーNo. 16の場合
 積立126口(25,200ルワンダフラン)⇒配分額46,310ルワンダフラン
メンバーNo.27の場合
 積立78口(15,600ルワンダフラン)⇒配分額28,670ルワンダフラン

マイクロセービングの貸付金で工芸品ビジネスを始めた女性の製品

●ルワンダの民族和解への貢献

 ARCはジェノサイドの元・加害者と遺族に一緒にこの取り組みに参加してもらい、ともに活動することで、少しずつでも関係を修復し、共存していくことができるように考えました。そしてルワンダでのパートナー団体ARTCFとともに、2016年に、100か所のマイクロセービングのグループを農村部に開設しました。
 元・加害者も遺族も共に、農村部では経済的に厳しい状況が続いています。すると、生活を良くしたい―その思いで、両者ともマイクロセービングに参加し、毎週の集会に集い、話し合いをする機会を持つようになりました。
 そして、かつては暴力を介した人々が、同じ目標のためにともに話し合い、協力し合うという「空間」が生まれました。この「空間」こそが、民族和解の「きっかけ」になっていることを確信しました。


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