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原田マハの「キネマの神様」読みました。また名画座で映画を見たくなった!

本屋に立ち寄ったところ、ふと目に止まったブックカバー。タイガース時代や勝手にしやがれなどピンで歌っていた頃の全盛期をよく知る沢田研二が白髪の丸顔で載っていた。完全に老人になっている。何の本かな?と思いよくよく見てみると「キネマの神様」というタイトル。

沢田研二の女房役は宮本信子、脇を固める俳優陣もなかなかな感じ。8/6公開というからまだ先だが、たまには本を読んで、その後に映画を見てみようか、などと気まぐれな気持ちから文庫本を買った。当初主役は志村けんだったらしく、それも興味を一層引き立てた。

昔は大の映画好きだった自分だが、最近は映画もとんとご無沙汰。たまにAmazonプライムで見ることもあるが、ほとんど見なくなった。最後に映画館へ行ったのはよく覚えている。2年前の5月に早稲田松竹で見た「日日是好日」だ。なぜ覚えているかというと、再就職活動で還暦を迎えた私に興味を持ってくれた会社の訪問を朝イチで終え、真っ直ぐ家へ帰っても用事はなく、たまたま高田馬場の近くにおり、目に入った早稲田松竹の看板に惹かれて入ったのだ。樹木希林はすでに故人となっていたが、本当に良い映画であった。名演技だ。大台を超えながらの就職活動で疲れていた心身に、まさに染み入る感覚で入り込んできた。心を空にして自然と耳に入ってくる雨の音。ただただあるがままに聴くのみ。茶道の心に触れた感じがした。

早稲田松竹は懐かしかったなあ。学生の頃も良くここで洋画を見たものだ。久々の訪問だったがほとんど変わっていないような印象。こんな名画座はずっと永遠にあり続けてほしいと思う。

「キネマの神様」の主人公ゴウは心底映画を愛す80歳手前のご老人だ。今の私よりはるかに先輩だが、その歳にしてやることは随分と子供っぽく憎めない。ゴウを主人公と言ったが、小説の語り手はゴウの娘の歩だ。歩も映画雑誌に勤める大の映画好き、完全に父親の血を引いている。

私も夢中で映画を見ていた時期がある。大学生の頃だ。北海道の片田舎で高校まで過ごしたので(実際には浪人生1年まで)、映画館で見る機会は街へ出るという大きな行事を企画したついででなければ実現できなかった。初めて見た映画は何であったか?

幼少期に父親から聞いた話では、2人で訪れた札幌の大きな映画館で見た「アラビアのロレンス」とのことだった。そう言われれば幼い時のかすかな記憶として、父親に連れられて大画面のある真っ暗な空間に居たような記憶がある。あれがアラビアのロレンスだったのか、とこれも随分後になって、学生時代にどこかの名画座で見直した覚えがある。

キネマの神様では、後半に出てくるアメリカ在住の何者かと、ゴウがネット上でかわす映画の話バトルが大変面白い。どちらにも一理あり。2人の映画の話題バトルの対象となった作品「フィールドオブドリームス」に対するやり取りが非常に興味深く、Amazonプライムでついつい見てしまった!若きケビンコスナーがカッコいい!
最後のシーンがジンとくる。ウルウル〜。

原田マハの小気味良く軽やかな文章につられ、あっと言う間に読み終えた。この小説にタイトルが出てきた映画は全部見てみたくなった。「プライベートライアン」「戦場のピアニスト」「硫黄島からの手紙」などなど。ゴウがその映画を愛おしく語る言葉を読んで、無性に同じ世界に浸ってみたくなった。

アルバイトに明け暮れていた貧乏学生だったくせに、時間を見つけては本当に映画を良く見たものだ。情報誌「ぴあ」を片手に、東京の料金の安い名画座や自主上映を探しだし、あちこちへ行った。吉祥寺の映画館で入れ替えがないことをいいことに、「2001年宇宙の旅」を連続して見た。それも立ち見で。1回だけでは内容を全く理解できない!一体何を言いたいんだ、この映画は?理解できないながらも、あの名曲美しき青きドナウに乗せて宇宙船たちがくるくると踊るシーンは圧巻だった。本当に美しかった!!

2001年宇宙の旅は、後で本も読んだ。やはりよくわからなかった。本が先か、映画が先か? 「永遠のゼロ」も読んで見た。NKKの大河もそうだが、読んでから見る方が私にはしっくりくるようだ。

とにかく、「キネマの神様」は若い頃映画青年だった自分を思い出し、自分とは似ても似つかないゴウに重ねて、自分が過去に見た映画の評論を頭に思い描きながら、楽しく読むことができた!原田マハは初めて読んだが他の作品も読んでみたいな。

私の部屋の隅に本棚があり、子供たちが置いていった本と、家内が読み終わった本が詰め込まれており、私の本は基本置いていない。だから日頃はその本棚をじっくりと見ることはない。しかし、何気に棚を見たら原田マハの本が2冊置いてあるではないか。家内が読み終えて置いてあるのか? 次の楽しみがすぐそこにあった。タイトルは「本日は、お日柄もよく」と「まぐだらやのマリア」!!

#エッセイ  #読書 #小説 #原田マハ #日常 #映画 #キネマ

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