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As Time Goes By / Carol Sloane これは音楽、それとも映画の紹介?

 今日はこの曲を紹介しましょう。映画カサブランカのテーマとして使われたこの曲、あまりに有名ですね。僕は Carol Sloane の歌がいちばんのお気に入りです。誰が歌っても素晴らしい曲であることは変わらないのですが、Carol Sloaneのささやくような歌声だとそれがまた最高なんですよ。

Play it once, Sam. Play for old time’s sake
Play “As Time Goes By”


イングリッド・バーグマンの名セリフで静かに始まります。

(この後はネタバレを含みます)
 第二次世界大戦時、カサブランカはナチスドイツの統治下にありました。そこにはハンフリー・ボガード演ずるリックの店、Rick’s Café Américainがありました。ある日、この店にレジスタンスの指導者であるヴィクター・ラズロが一人の女性を伴って入ってきます。この女性こそ、イングリッド・バーグマン演ずるイルザ・ラントでした。

 イルザは見知ったピアノ弾きのサムを見つけると言います。「あの曲を弾いてよ、思い出の曲を」。サムは「そんな曲は知らないよ」と口ごもります。「こんな曲よ」、イルザは口ずさみます。しぶしぶとピアノを弾き始めるサム。そこにリックが足早にやってきて、きつい口調で言います。「その曲は弾いちゃいけないっていっただろう」。そこで初めて傍らの女性に目が行き、彼は凍りつきます。「どうして君がここに?」。そうイルザこそは、ドイツ侵攻直前のパリで出会い、恋に落ち、一緒に逃げる約束をした女性でした。でも、待ち合わせの駅に彼女は現れませんでした。

 リックは彼女との思わぬ再会に古傷がうずき、パリでの出会いを思い出しながら、苦しげに酒をあおります。「世界には星の数ほど店があるっていうのに、どうして彼女が俺の店に」。

 そこにルイザがふいにやってきます。「話があるの」「そうかい?」

 リックは彼女の言葉に耳を傾けず、「今だってあの時の言葉を覚えてるよ。君は、僕とだったらどこでも行く、列車に乗ってずっと一緒に行くって言ってた」などと未練がましい言葉でイルザを怒らせます。

 舞台は再びRick’s Café Américain、シュトラッサー大佐率いるドイツ兵が軍歌を誇らしげに歌っています。苦々しげに見るカフェの客たち。そこにラズロが駆け寄って、バンドにラ・マルセイエーズを演奏するように言います。客は全員起立して斉唱、ドイツ兵の歌を圧倒します。リックはラズロにリーダーとしての資質を垣間見ます。

 リックは苦悩しながらも、ラズロとルイザを中立国であるポルトガルのリスボンへ脱出させようと決心します。一緒に行きたいと迫るイルザに「俺たちにはパリの思い出がある (We’ll always have Paris)。昨日まで失くしていたけど、また取り戻した」とラズロと二人だけで行くよう説き伏せます。彼が映画の中で何度も口にしたあの名セリフを今一度言いながら(Here’s looking at you, Kid)。

 シュトラッサーはその企てに気づき、阻止しようとしましたが、リックに射殺されます。フランス警察のルノー署長は、表面上はドイツ軍に協力していましたが、実はひそかにレジスタンス活動をしていました。そんな彼はリックを見逃します。リックとルノーは肩を並べて宵闇に歩き去り、最後のセリフで幕が閉じられます(Loui, I think this is the begining of a beautiful friendship)。Carol SloaneのAs Time Goes Byもこのセリフで終わります。彼女の歌を聴いていると映画の名場面が次々と頭に浮かんでくるから不思議です。

 そういえば、イルザとの会話ではないですが、こんなセリフもありましたね。

Where were you last night?
That's so long ago, I don't remember
Will I see you tonight?
I never make plans that far ahead

「昨夜はどこにいたの?」
「そんな昔のことは覚えてないよ」
「今夜会える?」
「そんな先のことはわからないな」

 ボギーはあくまでもかっこよく、バーグマンはあくまでも美しく。時にはモノクロの世界に浸ってみては?あれっ、どういうわけか曲の紹介ではなくて、映画の紹介になってしまいましたね。

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