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【要因分析】CVRダウン時に見るべき指標

広告を運用している以上、様々な結果に直面するものです。
中でも、新人マーケターが躓きやすいのはCVRダウンの本質的な要因分析ではないでしょうか。

今回は施策を立てるための前段階「要因分析」について深く掘り下げていきます。
新卒のマーケターを意識して書いているので基礎的な内容も含みますが、お付き合いいただけると幸いです。

※本文中のリンクを踏むと、その用語を検索できます。
例:IS

⓪いつ、どこで、どのように?を整理

当たり前だと思う方も多く、肩透かしを食らっているかもしれません。
ただ、本当にしっかりとできていますか?

「やっぱりこうなのかな?」「こっちはどうなってるんだろう?」
と余計な分析工数をかけて、結果かなりの時間がかかった割に実入りの悪いレポートになったことが一度はあるのではないでしょうか。

そのような、要因から遠い部分の無駄な分析を削減するためにこの工程は欠かせません。

・いつから?
・どこで?
・どのように?
に分けて説明します。

・いつから?

「CVRがダウンしている」という事象が明確にいつから起こっているのか把握してください。
「ダウン」ということは必ず比較期間があるはずです。
前年比/前年度比/前月比/前週比…どれでしょうか?

上記のように広い期間から少しずつ時間を絞り、具体的に何月何日からその事象が起こっているのか整理してください。

・どこで?

事象はどの媒体、チャネルで起こっていますか?
複数媒体を運用しているのなら、
Google/Yahoo!/FBIG/LINE………どの媒体で(あるいは全体で)起こっていることなのかを把握してください。

もし全体で下がっている場合、運用型広告以外のチャネルも確認してください。
オーガニック流入のCVRはどうでしょうか?
ITトレンドなどサービス比較サイトは?
オフライン施策(テレアポなど)は?

もし媒体やチャネルを問わず、全体で起こっていることだとしたらシーズナリティや特定の市場動向が要因かも、と目途が立つこともあります。
※逆に、CVRのダウンが特定媒体やチャネルのみの事象であった場合は高い確率でその媒体の運用が原因です。

・どのように?

その事象はどのようにして起こっていますか?

型としては、大きく分けて下記3パターンが考えられます。
①スポット的に1件もCVが発生しない日、平常通り発生する日が混在する
②ある日から急に落ち、低迷している
③ある日を境に少しずつダウンしていっている

それぞれで比較分析の仕方が分かれるため、明確にどれなのかを把握してください。
①の場合は良い日/悪い日で日次比較をする必要があるでしょう。
②は目安ですが、該当の日付前後で2週間比較をしてみてください。
③は継続的に起こっている事象なので、広い期間で数値を観察し変化していっている指標がないか確認したり、比較したりするのがよいでしょう。


・パターンのおさらい

「いつ+どこで+どのように」の型で、下記のように事象を把握します。

「8/10からGoogle広告で急に」CVRが下がった
→Google広告で各指標2週間比較をしてみよう

「8/10からGoogle広告とYahoo!広告で徐々に」CVRが下がった
→両媒体で2か月比較をしてみよう

「8/10から全媒体/チャネルで急に」CVRが下がった
→特定のキーワードがトリガーになっていないか確認してみよう
→ニュースやトレンドなどに動きがないか確認してみよう

上の例はあくまでも一例ですが、
「いつ+どこで+どのように」を事前に整理しておくことで、「やっぱりこうなのかな?」「こっちはどうなってるんだろう?」など余計な分析工数をかけず、最短で結論までたどり着けるようになります。

事前準備が済んだら本題の要因分析に進みましょう。
原因(だと思われる)媒体を中心に、次のステップで確認していきます。


①配信環境(前提確認)

緊急度が高く、また修正が容易なものから確認を始めます。

CVRのダウンどころの話ではなく、急に件数が0件になった場合などはこのセクションに要因があるかもしれません。
大前提として、配信がちゃんと想定通りに行えているかを確認してください。

LPに異変はないか?

 └ 画像のリンク切れ
 └ ページが無効
 └ ボタンなどのページ内リンク切れ 
 └ タグが削除されている
 └ 読み込み速度が遅くなった

・クリエイティブ/KWの審査に問題がないか?

 └ 広告文が審査落ちしている
 └ 配信するKWが広告ポリシーに触れている
 └ バナーが広告ポリシーに触れている

・フォームは正常か?

 └ テスト送信がちゃんと反映されるか
 └ 不明なエラーが起きていないか

・配信設定は意図通りか?

 └ ある期間からImpが0になっていないか?
 └ 入札戦略を何度も更新していないか?
 └ 無理な入札単価を設定していないか?

上記4点を確認し、特段理由がなさそうなら次へ。


②自社要因の確認

①配信状態 も自社要因ではあるのですが、それら大前提以外の確認をここに分類します。

・変更履歴を確認

⓪で整理した「いつから」の日付前後の変更履歴を確認してください。
影響値が大きい(あるいは大きいかもしれない)変更を加えていませんか?

一見微細に見える内容でも、細かく見ていくと実は影響が大きかった、なんてことも往々にしてあります。
該当期間の変更内容はあらゆる可能性を考えて、検証に移ってください。
変更履歴に特段理由がなさそうなら次へ。

キャンペーン単位で比較

「いつから」日付前後でキャンペーン別にCVRの推移を確認してください。

→異なるユーザーへ配信しているのに全キャンペーン同じくらい強くCVRがダウンしている場合、その媒体のアップデートがないか確認してください。

→特定のキャンペーンでのダウンが判明したら、次へ。

広告グループ単位で比較

対象のキャンペーン配下にある広告グループ(セット)別にCVRの推移を確認してください。

→全広告グループ(セット)で同じくらい強くCVRがダウンしている場合、そのキャンペーンの設定を確認してください。
 └ CV設定
 └ 広告表示オプション
 └ クリエイティブ
 └ ディスプレイ設定
 └ オーディエンス
 └ 入札戦略(,単価設定)

※この際必ずその領域でCVRがダウンした要因を仮説立てし、改善後は必ず効果検証を行う。

→1つしか広告セットがない、もしくは特定の広告セットでのダウンが判明したら次へ。

・LP/広告文(バナー)/KWを確認する

対象の広告グループの配下にあるLP別、広告文(バナー)別、リスティングの場合はKW別にCVRの推移を確認してください。

→特定のLPでCVRがダウンしている場合
・スクロールヒートマップ
・アテンションヒートマップ
・クリックヒートマップ
有効熟読率
を確認してください。

CVRが下がった日の前後2週間でユーザーの動きを比較し、LPに問題があるのかを検証しましょう。
→全てのLPでCVRがダウンしている場合(あるいはLPに問題がないと推測できる場合)、広告文の確認に移ってください。

→特定の広告文(バナー)でCVRがダウンしている場合、訴求を変更/改善してください。
※この際必ずその広告でCVRがダウンした要因を仮説立てし、その後必ず効果検証を行う。

→全ての広告文でCVRがダウンしていてリスティング広告である場合、KWの確認に移ってください。

(KW改善パターン1)
特定のKW群でCVRがダウンしている場合、そのKWのクエリを確認し、CV可能性が低いクエリを除外してください。

(KW改善パターン2)
CVRが高くない特定のKW群に配信が集中し、結果的にCVRがダウンしていませんか?
配信KWを調整、または広告グループを分ける判断も一手かもしれません。

(KW改善パターン3)
CVRがもともと高かった特定のKW群への流入が極端に減り、結果的にCVRがダウンしていませんか?
KWプランナーなどを使用し、まだ登録していない類似KWの拡張幅を探ってください。
KWの拡張余地を探しきれない場合、KWプランナーで競合サイトを分析したり動的検索広告を使用して新しい配信KWを探るのも一つの手です。

(Tips)
KWそれぞれにラベルを付け、群としてまとめておけば上記分析が容易です。

→いずれにもあてはまらない(自社要因が考えづらい)、影響値として小さい可能性がある場合、次へ。

③他社要因の確認

「いつから」日付前後でキャンペーン別に以下指標の推移を確認してください。

ページ上部/最上部表示率

上部IS、最上部ISとは異なる指標です。

表示順位が下がっていませんか?
「最上部の結果しかクリックされない」ような商材はそれだけで打撃になる場合があります。
特に、緊急性が高い商材、ユーザー側のリテラシーが低い商材はその傾向が顕著です。

あるいは、比較検討で落ちてしまいやすい商材の場合、順位が下がると基本的には比較をするユーザーが流入するため目劣りしてCVまで至らなかったのかもしれません。

どちらの場合でも、
・順位を上げるには?
・優位性をアピールするには?
という方向性の施策を立案する必要があるでしょう。

【注意】
この指標は数%程度変わったところで、常識的に考えれば影響値としては低いことが推測できます。
CVRが落ちた要因は本当にその要素が大きいのか?を常に自問自答してください。

IS,CPCCPM

ISが下がっていませんか?
費用によるIS損失、
ランクによるIS損失双方を確認してください。

また、CPCが高くなっていませんか?
競合がオークション入札を強めている裏付けになるかもしれません。

誤解を恐れずに言えば、これら指標の変動は自社のCVRダウンに直接的な関係はありません。
ブランド指名KWなどの場合は例外ですが…

ただ、ISのダウン+CPCのアップからは
競合がWEBプロモーションに注力し始めたかもしれない
→何か魅力的なセールや付加価値を付けているかもしれない
相対的に自社商品の魅力が下がっているかもしれない
と仮説を立てることができます。

オークション分析などで衝突している競合を特定し、その競合のページやニュース、リリースを確認してみてください。
もしかしたら間接的な要因を発見できるかもしれません。

あとはその調査を基に、「自社の優位性をアピールするには?」という訴求のブラッシュアップを行うだけです。

・競合ページ、ニュースリリース、キャンペーン情報

上記のどの指標にも大きな変動がない。
万策尽きてしまった場合、直接競合調査へ乗り出しましょう。

どの競合が要因なのか特定できない分時間はかかりますが、競合一覧の情報発信を洗ってみることも一手です。
上記のどの指標にも大きな変動がない以上WEBでの調査は意味が薄そうだと推測できますが…

ただ、オフライン施策が強力な商材は別です。
不動産や葬儀施行、toB向けOA機器販売などはWEB上での動きがなくとも、競合オフライン施策での動きが自社WEB広告にまで影響を及ぼすことはあり得るからです。


④市場要因の確認

最後に、市場要因の確認を行います。
最後に回す理由としては、「原因がわかったところですぐに打てる手がない」ことも往々にしてあるからです。
シーズナリティが原因だからといって、その季節の需要を盛り立てる施策となるとかなり大がかりで長期的なものになるでしょう。

市場要因の調査が無駄とは思いませんが、裁量によっては優先度は一段下がる印象です。

・月内の傾向確認

そのCVRダウン、毎月初など定期的に起こっていませんか?
ターゲットユーザーに月周期で傾向があり、それに則ってCVRが上下している場合もあるかもしれません。

・昨対比で確認

そのCVRダウン、毎年同じ時期に起こっていませんか?
1年前の同期間の配信傾向を確認して見てください。
同上で、ターゲットユーザーの動向に年周期の傾向があるかもしれません。

これら2つの結論に対しては、「CVRダウンは毎年起こる一時的なもので、必ず〇日から回復するはずだ」と判断できる場合もあるでしょう。

・ユーザー検索動向の確認

主力そうなキーワードをGoogleトレンドにぶち込んでみてください。

「検索数が減っている」(≒ニーズが減少してきている)
などの学びがあるかもしれません。

では、小さくなるマーケットパイをどう獲得していくか?
競争の激化、ユーザー離れを解消する施策を考える必要があるでしょう。

【サマリー】


⓪いつから、どこで、どのようにCVRが下がっているか整理
①配信環境を確認
②自社→競合→市場要因の順に確認

今回の重点は②の自社要因の分析にあります。
広告配信という大きなツリーに対して、大きい幹の部分から確認することを徹底してください。

どのチャネルなのか?
媒体はどこなのか?
キャンペーンは?
広告セットは?
・・・

急に枝葉のキーワードやISなどを確認することは全くの無駄になりやすいです。
何故なら、
・もともと影響値が小さい部分である
・確認する数が多い
項目にあたるので、せっかく細かく分析したとしても要因はそこになく時間だけかかるケースがほとんどだからです。


「CVRが下がる」という事象には必ず理由があります。
細かな枝葉ではなく大局観を持って分析をすることで、

「影響値が大きい要因」の早期発見(→「改善幅の大きい」施策の立案)に繋がるはずです。

要因の仮説が立った後は必ず施策へ結びつけて、効果検証まで実証すれば再現性のある成功を手に入れられるでしょう。


長くなりましたが今回のnoteは以上です。
noteの感想や次記事のリクエストなど、自由にコメントいただけたら嬉しいです。

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