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人事のための面接ハンドブック⑤ 『弱み』の聞き方

「あなたの強み(弱み)を聞かせてください」

面接の定番とも言えるこの質問。応募者も必ず答えを用意してくるだけに、どうしても聞こえの良い“きれいな”(そして正直、どこか他でも聞いた)言葉が並びがちです。

前回は、そんなステレオタイプなやり取りから離れて、応募者の『強み』を立体的に捉えるコツを書きしました。今回はこの続きとして、『弱み』を自然に共有してもらえる方法をお伝えします。

さらにパターン化しがちな『弱み』の回答

『弱み』については、『強み』以上に「変なこと言って落とされたくない」という応募側の心理が働きます。

その結果、『強み』の完全な裏返しとして『弱み』を挙げる回答がすごく多いんです。

例えば、「人の気持ちに寄り添うことが得意だけど、寄り添い過ぎて自分の意見が出せないことがある」「とにかく行動するのを大事にしてるけど、無計画なとこが若干ある」などですね。

でもこれ、一見何かを伝えているようで、実は何も言ってません。すでに出した情報を、ただ当たり障りのない表現に“言い換えてみせた”だけです。

何となくの人柄は掴めるでしょうが、その人の性質をきちんと理解するには不十分。そうではなく、面接で『弱み』を聞くときには、『強み』と同様にここでも、事前に用意されていない「その人の素」が表れる言葉を引き出す必要があります。

『強み』を肯定したあと「ちなみに…」と聞く

『弱み』を聞くには、まずは前回お伝えした3つの『強み』を聞く過程で、相手の個性を全力で承認するところから始まります。

せっかく魅力を語ってくれているのに、特に反応もせず「強みは?…なるほど。じゃあ弱みは?」と聞くだけだと、応募者はどんどん“詰められていく”気分になります。

で、場の空気を読み、当たり障りのない内容ばかり並べるようになってしまうんですね。

でも、面接官が自分の言葉で「それすごいな」「めっちゃいいですね」などときちんと反応を返すことで、詰問ではなく会話になっていきます。面接をしている方と、対等になっていくような感覚です。

そのうえで、流れの中から自然に苦手なポイントへと話を振ります。

僕だったら、「ちなみに、完璧な人なんていなくて、良いとこもあれば悪いとこもある。あえてこのへん弱点かな…って思うところを挙げるとしたらどこ?」みたいな感じで聞くでしょうか。

すると、「細かい作業が実は苦手で」とか「人見知りがひどくて」みたいな話がフッと出てくることがあるんですね。

お互い「カッコつけなくていい」関係を

そうやって会話のなかから出てきた『弱み』の話って、「ああでも、そう人おるなぁ」と、自然に受け止めて聞くことができます。

大事なのは、応募者の方がフッと出してくれた本音を、「弱点見っけた!」みたいな形で受け取らない。否定せず、弱みも含めてその方の個性なのだと受け止めることです。

すると、応募者は「ネガティブなことをしゃべっても受け入れてもらえた」と感じるので、結果として「この会社で働きたいな」と志望度を上げることにもつながるんですね。

以前に上の記事でも書きましたが、面接でネガティブな要素を隠しても、どうせ入社してからバレます。むしろ長い目で見たときには、「良いところだけじゃなく、悪いところもしっかり認めていく」採用をすることが重要です。

「良い人と出会いたい」と考える面接側は、ともすれば応募者のネガティブな要素からは目を背けたくなります。でも、それが後々トラブルになることを忘れてはいけません。

互いにカッコつけず、『弱み』をきちんとさらけ出せる関係性を、こうした面接の場を通じて築いてもらえたらと思います。

(第6回「ストレス耐性の見極め」に続きます。)

北川雄士/Yuji Kitagawa

滋賀県彦根市生まれ。株式会社いろあわせ代表取締役。
広告代理店、ITベンチャー企業の人事部門責任者の経験を経て、2014年にフリーの人事として独立。これまでに数千人の面接を経て来た。2015年末にUターン。ひと・もの・まちを“掛け合わせ”、それぞれが持ついろや魅力を大切にしたいとの想いで、株式会社いろあわせを設立。現在『しがと、しごと。』をはじめ、行政や地元企業と共に地域発の採用の仕組みや場づくり・まちづくりを積極的に実践中。(TwitterFacebook

(編集:佐々木将史

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