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左耳が聞こえなくなったあの日々が私に教えてくれたこと

左耳が詰まるよう感覚。放っておけばそのうち治るだろうと高をくくっていたあの日。


だけどそれは放っておけば治るようなものではなく、ほとんど聴力を失っていることにある朝気づくことになる。


病名は突発性難聴。発症後2週間以内に治療を始めないと永遠に聴力は回復しないという恐ろしいものだった。


なんと私は、左耳が聞こえづらかったにもかかわらず、ひどくなるまで放置し、2週間の期限がもう少しで過ぎようとしていたのだ。


そして左耳が聞こえなくなるだけでなく、突然襲ってくるフワフワと頭の中が定まらない感覚と激しい吐き気が、その当時大きな病気なんてしたことがない健康優良児のメンタルを叩き潰したことは言うまでもない。

薬は処方されたもののいつ治るのかもわからないし、フワフワ感と吐き気も急にやってくる。

自分の体をコントロールできないということ程、心を病ませるものはない。


だって私たち人間は、全てがコントロールできるという錯覚を信じることによって安定を保っている生き物だから、コントロール不能な世界に生きることなんて耐えられないのである。

他人の事だっていとも簡単に思い通りにできると思い込んでいる。その傲慢さが災いを招くなんてことを思いもせずに。


このことは、突発性難聴になったこととも大いに関係している。


この耳の病はストレスと関連が深いらしいのだ。思い返すと心当たりがある。


左耳が聞こえなくなった時、高校受験をひかえた中学3年生の子供のことで悩み多い日を過ごしていた。


お盆休みが明け、夏休み最後の追い込みという時に、もう塾にはいかないといいだし、日帰りのプチ家出をしたのだ。


彼はどうやら勉強が好きではないらしいということはわかっていた。勉強をすることに何の価値も見出していなことも知っていた。

だけどその事実を信じたくはなかったし受け入れたくもなかった。


いくら言っても右から左で聞く耳をもたない我が子に辟易し、何とか思い通りにしようと必死になっていたのだ


だって勉強はとても大切であるし、生きていれば、嫌でもしなければいけないことはあり、それをどう意味づけて乗り越えていくかが大切だと思っていたし、今もそう思っているのだから。


全く違った価値観を持っている我が子と、自分の価値観を押し付けようとしている私は平行線を保ちとうとう体が悲鳴をあげ左耳の聴力を奪っていった。


そして皮肉にも体の悲鳴が、私に大いなる気づきを与えることになる。


その気づきとは、世の中の全てがコントロールできるわけでなく、コントロールできることはほんの少ししかないということだ。


そしてコントロールできないことに必死でしがみつきなんとかしようとすると、自分を痛めつけるだけで、なんらいい結果をもたらさないことにも気づかされた。


コントロールできないことを受け入れること。そうそれは諦めに近いのかもしれない。


私たちはずっと諦めることは悪いことだと教えられてきた。努力すればいつかは報われる。決してあきらめてはいけない。

だから一生懸命頑張って子供をコントロールしようとしたのだ。諦めず頑張ればいつかは報われる日がくると。


けれどこの考えは間違っていると断言できる。努力しても報われないことは山ほどあるし、ましてや他人様をたとえお腹を痛めて生んだ我が子でさえ自分の思い通りにしようと諦めず努力することは正しいことではない。

結局私は、子供の価値観を否定しなんとか自分の価値観を受け入れさせようとしていた大柄さを反省し、折り合いをつけることにした。

そして大いなる気づきを得た後、急速に体調は元に戻り、子供のことも解決し万事うまくいったとならないところが人生なのだ。


だって自分のせいで母が体調不良になったことで、心を入れ替え勉強に励んだのかというと、まったく反省の色はみせなかったわけだから。

塾には通い志望校に合格したものの、いたってマイペースで相変わらず勉強することになんら価値を感じていないようだ。


ただ耳はおかげさまで聴力を取り戻し完治した。

最後に、人生をひっくり返す程の大いなる気づきである変えられないことを受け入れる大切さについても、今もなお迷走中とお伝えしておく。


どうして事実を受け入れられないのかと自分を腹立たしく思うこともある。
絶対に受け入れたくないと無駄な抵抗をしたりする。


だけど受け入れることができない自分自身の弱点を受け入れられたことをよしとしよう。

変えられないことを受け入れる大切さに気付いていない人が多い中、そのことを知っていることは人生の武器を手に入れたのと同じではないかと思うのだ。

この武器は優しさと慈しみを与えてくれる。

ニーバの祈りに思いをはせながらいつか受け入れられる人になりたいと願ってやまない。


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