【ハーブ天然ものがたり】ハトムギ
ヨブの涙
ハトムギ(鳩麦)は、学名 Coix lacryma-jobi var. ma-yuen
イネ科ジュズダマ属の穀物です。
アジアでは主食とする地域もあり、成分の薏苡仁は生薬として古くから活用されてきました。
日本ではお茶として、また化粧品配合成分として有名になりました。
学名の lacrymaは、ラテン語で「涙」のこと。
lacryma-jobi(ラクリマ・ジョビ)の英語表記はヨブの涙、
旧約聖書のヨブ記を表わしています。
ヨブ記を題材にした物語はいわばエンタメ業界の王道のひとつ。
有名どころの映画なら
・アダムズ・アップル
・ツリー・オブ・ライフ
・リヴァイアサン
・ケープフィアー
・ドクター・ストレンジ(も?)
あたりでしょうか。
数珠玉とロザリオ
ハトムギは食用に改良された栽培種で、もとの野生種は水辺を好んで自生する、ジュズダマ(数珠玉、Coix lacryma-jobi)です。
原種ジュズダマは東南アジア原産の、かたくて光沢のある実が特徴です。
その名が示す通り、数珠つなぎにしてネックレスにしたり、衣服、帽子、カバンなどに縫い込んで民族衣装にも使われてきました。
原種の実はとてもかたく、正確にいうと若い苞葉鞘(結実する前の実)のなかに、雌花のつぼみが3つ入っています。
このうち1つだけが実をむすんで食用となるデンプンを蓄えてゆき、
のこりの2つは結実しないで、中心部がうつほ(空、洞)になり、糸通しの穴が自然とできあがり、天然植物ビーズとなります。
装飾品以外にも宗教のお道具として東の念珠、西のロザリオ、日本の山伏が使っていた、オニジュズダマ(いらかたの念珠)などがあり、原種ジュズダマはマザー・テレサが愛用していたロザリオとして有名です。
いのりの言葉、お念仏、マントラを唱えるときに数えるお道具、という解釈が現代では濃厚ですが、ヨブ記とつながりがある植物ならば、
珠をつないで輪にしたカタチは、惑星の公転周期をあらわしているようにも見えてきます。
珠は糧に、数珠はうつほに
過去から未来へ、という一方通行の時間軸しばりがなくなれば、珠(たま・惑星)は太陽のまわりをめぐる軌道上のすべてに存在していることに気がつきます。
ひとつの珠だけが世界のすべてならば、義人ヨブの身上に起きたことは不条理な悲劇でしかありません。
大地創生のときからはるかな未来まで、すべての珠をつなぐ視点をもてるなら、珠の軌道、輪のほうが、惑星の本体である、と気がつきます。
創造の光源から三位一体とされる3つの分化が起こり、ひとつは地上への捧げものとなるべくデンプンで満たされ、惑星地球の自転周期に同期してゆく。
そして結実しなかった2つは、うつほとなり公転周期に戻ってゆく。
ハトムギのようにヒトの手によって加工された栽培種は、地球の自転に沿ったヒトのための有用性を重視され、地上(肉体)生活の糧となり人類を支えてきたのだろうと思います。
ハトムギは一株から約500個もの実を収穫できるといわれています。
明治以前までは収穫量が多いことで、飢饉のときの非常食でもありました。
原種ジュズダマは、地上生活を満たす要素は少ない(1/3)といえますが、ひと粒の珠のカタチを超えた惑星軌道や、一個人の肉体のカタチを超えた人類の本体を思い出す、原初の記憶に満ちた植物なのかもしれないな、と。
ラクダに乗って針の穴を抜ける
旧約聖書のヨブ記は、地上生活のすべてを手中にした人物、ヨブの物語です。
自分を分化して、創造する
創造活動を極めて、イメージを固体化させる
自己分割した創造物が周囲にあふれる
周囲をとりまく地上的な創造物に十分満足したら…
地上活動が完成して、まるい珠になって、
そしたら、こんどは来た道をもどる天の梯子(ヤコブの梯子)を探す旅のはじまりだよ、と。
そんな「地球人としての人生を全うする方法」もあるんだよ、と教えてくれているような気がします。
ヨブには子どもが10人いるという設定も、地上生活におけるひとつの完成形「運命の輪10」をイメージさせます。
土地も家屋も、家畜も使用人も、子供たちも含めて、すべてを失ったヨブは、「すべては神に与えられ、すべては神が奪われる」と、豊穣の女神デメテルの御業を彷彿とさせることばを発し、珠から数珠へ移行する、地球人としての究極人生コースを全うする決意を表しますが…
そこから先の物語は、珠に結実した地上生活の安寧から、出口を見つけるのはほんとうにむずかしくて「ラクダが針の穴を通る以上だよ」という比喩も、まんざら大げさじゃなかったんだと、オカシナな感心をしたりして。
最悪最恐な状況に陥ったとき、どれだけ明るい未来を想像し、実行できるのか、そのイニシエーションを示しているのかな、とも思います。
だとしたら古代エジプトのコム・オンボ神殿の儀式にも、通じているお話なのだろうか…?
ヨブの涙から出題された「なぞなぞ」は、かなりの難題ですが、一度でも「なぜ?」と思ったことに対して、脳は自動検索をかけ続けてくれるらしいので、倦まず、飽かず、ヨブの涙をひと粒づつ、数えてつなげて数珠にするように、神と対峙したヨブの心に、思いを馳せることも、ライフワークの一つなりました。
それにしてもこの「なぞなぞ」
いつもジュズダマから扇子がバサッとひらくイメージにつながり、次に「お猿のかごや」ソングが頭のなかでパワープレイされますw
ヨクイニン
インド・アッサム地方はハトムギ栽培が多いエリアですが、もともとハトムギ栽培は、アッサム地方からミャンマー付近にかけてはじまったそうです。
紀元前1000年頃のインドから、口承で受け継がれてきた神々へ捧げる歌「リグ・ヴェーダ」にもハトムギの記載があり、ハトムギの栽培はBC1000年以上まえから、はじまっていたといわれています。
漢方や民間療法では、皮をむいた種子をヨクイニンと呼び、いぼ取り、利尿作用、抗腫瘍作用などがあるという表記をよく目にします。
西暦カウントが世界ではじまったころ、漢時代の名将・馬援がハトムギを自国にもちかえり、現在の中国で栽培がはじまったという説があり、ヨクイニンの名前は約2000年前の「史記(漢時代の歴史書)」に、滋養強壮に効果があるとして記述されています。
中国最古の薬学書・神農本草経には「久しく服すれば、補虚、益気、軽身などの効果がある」という記述があり、いまでいうエネルギーチャージ食品みたいなポジションだったようです。
神農本草経では「上品」に記載があることから、常用しても副作用のない薬草だったことがうかがえます。
中医学では「湿熱(体内に熱をともなう湿気がこもる)」を取り除く作用があるとして、消炎、利尿、鎮痛、排膿の目的で処方されてきました。
漢方薬では浮腫、リウマチ、神経痛などを改善する処方に配合されています。
四肢がだるくなり、おしっこの回数が減ったり、やけに濃くなったり、へんな汗はかくけどくちびるが乾燥したり、体内のめぐりが悪くなる状態を改善するとして、ヨクイニンは重宝されてきたようです。
*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
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ハトムギ種子エキスを保湿目的で配合しています。
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お読みくださりありがとうございました。
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