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【ハーブ天然ものがたり】レモングラス

本日の記事は過去記事のリライトになります。
製品開発の過程でエネルギー入魂したアロマ・オリジナルブレンド。
72°の香りとして抜擢されたレモングラスのものがたりです。


マッチングがマッチプレイか


ナチュラル・スキンケア商品の開発にあたり、たくさんのオーガニックアロマのなかからオリジナルブレンドの調香に取り組んでいた時のことです。
すでにローズマリーとラベンダーの組み合わせは決定済みで、そこにもうひとつ精油をブレンドし、深みと奥行きのある香りの構造にしたいと考えていました。
香りのテーマは「リリース」
ファーストインプレッションは「さわやか」
使用感は「さっぱり」

さっぱりブラックシリーズの顔となる化粧水と乳液の香り、というだけあって開発チームメンバーにも熱がこもります。
保湿製品の香りなので、光毒性(紫外線を吸収する性質)をもつ精油は除外し、供給が安定していることや種として絶滅の心配がないものをピックアップし、ミーティングに明け暮れる日々が続いていました。

はじめは「解放魔法にぴったりのテーマだし、これはもうミント一択でしょう」という意見が圧倒的で、ローズマリー、ラベンダー、ミントの組み合わせで配合比率を考え、調香をくりかえしていました。

だがしかし。
ローズマリーとラベンダーのリリース感と、ミントのリリース感は、どうにもうまいこと歯車が合いません。
どの精油も素晴らしい解放魔力をもっているのに、組み合わせるとマリアージュというより、世界頂上決戦リリース・マッチみたいになってしまうのです。
配合をいろいろ工夫したものの、片方の香りが主張すると、もう片方の魅力が損なわれてしまう。
確かにマッチングのマッチは組み合わせのマッチと、競合のマッチがありますし、マッチ・プレイなら同じ力量で面白い対戦になるけど、双方歩み寄って協働する組み合わせではないなぁ、と。
うーん、どうしたもんか。


ドラフトやり直し


「ミントが所属する解放魔法のドリームチームから、別のメンバーに由来するハーブを出してみたらどうだろうか?」
「ドリームチームのほかのメンバーは、大地と豊穣の女神デメテルと、大魔女ヘカテ、それに冥府の女王ペルセポネだよね」
「ヘカテならカモミール、ペルセポネならザクロかなぁ」
「どれもリリースって感じではないねぇ」

「女神デメテルは農業の神様でもあるよね。稲穂だったか麦だったか、イネ科の植物を抱く女神アストライアーと習合されることもある、イネ科ハーブからなにか探してみるのはどう?」
「香りのあるイネ科は数えるほどしかないね。レモングラス、シトロネラ、パルマローザ、ベチバーと…」

「イネ科って面白いかも。人類の歴史はイネ科の歴史といっても過言ではないくらい、人と密接なかかわりがある植物だし、デメテルと習合傾向にある女神アストライヤーは人類救済のために最後まで地上に残ったお話で有名な人類寄りの神様だったし」 

「女神デメテルは古い神様のひとりだから、なんか大御所感あるよね。そうなると習合傾向にある神々や魔女も増えてくる。たとえば見たものを石にかえるメドゥーサとも同一神だった説があるし、海神ポセイドンとの間に羽をもつ馬、ペガサスを生んだお話も、この2人はかぶってるし」
「エジプト神話の女神イシスも、デメテルの象徴である麦の穂や松明をもつ姿で表現されていたっけ」
「中世ヨーロッパ時代に、魔女の元祖となったイシス神ね」
「名誉あるレッテルだよね。魔女というなら大魔女ヘカテだって、女神デメテルのもうひとつの側面て見方がある」
「魔女の元祖言うなら、リリスだって外せないよね」
「そうだね、わたしたちが解放といわず、あえてリリースと言っちゃうのは、リリス・リスペクトがどっかにあるからだしw」

そんなこんなで盛り上がり、リリース・リリスのイネ科ハーブからレモングラスが抜擢され、ローズマリーとラベンダーに加味される、解放魔法のレシピ調香、セカンド・シーズンが開幕となりました。

イネ科植物は、さすがに大御所女神の象徴だけあって懐が深く、なんでも抱きかかえてしまう圧倒的存在感があります。
それでいて裏方に徹する奥ゆかしさも感じられるのが、イネ科のすごいところ。
ローズマリーとラベンダーの組み合わせに対してもリリース・マッチとはならず、香りのグラデーションを楽しめる配合比率を作ることができました。


「太古、神々より3代以前に生じたる薬草」


レモングラスはインド原産で、レモンより鮮烈なレモン様の香りをもっています。
ハーブティやトムヤムクンの香りでおなじみの方も多いと思います。
レモングラスにはシトラールという成分が多く入っており、消毒、抗菌、虫よけにと重宝します。
インド伝統医学では発熱をともなう感染症に使用されてきました。

リグ・ヴェーダ讃歌は紀元前1000年頃のインドから、口頭伝承で受け継がれてきた神々へ捧げる歌で、文庫の讃歌集が出ています。
気軽に手に取れる文庫版ですが、その中身、ざっくり3200年前からの継承とか、あらためて考えるとすごいことです。

薬草についての讃歌も多々収録されており、ガンジス川流域にアーリア人が移住してきてバラモン教が創られていった頃、「薬草の効力めっちゃすごいよね。神様登場する前から地球にあるし、神々の飲みものだってソーマという薬草から作られるんだよ」的なことが伝承されてきました。

ヴェーダは知識という意味で、自然現象や自然そのものを神々に見立てて崇敬の念を歌にしたものですが、いつのころからか、信仰心や宗教といったものは、おしなべて社会運営の道具として利用されるようになりました。
もちろんインドに限ったことではなく、世界中で同じように信仰心を利用して社会を運営しています。

紀元前1000年頃といえば、ちょうど鉄の道具が普及するようになり、小麦や米の普及が広がって、社会が大きく変化しはじめた時代でもあります。
牧畜から農業へ、流浪の民は定住民族へ。
農業によって生産物がふえることで商売や工業も盛んになり、新しい職業も次々と登場します。
社会をひとつの有機体として発展させるために、人々を生まれ育ちで階級分けし、司祭はバラモン、王族はラージャニャ、庶民はヴァイシャ、奴隷はシュードラとして、ひとつの仕事に世代を超えて従事させるよう考えられたカースト制度なども同時期に発展します。


人類の歴史はイネ科の歴史


イネ科植物がなかったら、今の人口増加も文化の発展もなかったかもしれません。
減ったり増えたり、栄えたり枯れたり、文化文明の変遷を見ると、それが自然のことわりであることはよくわかります。
数が増えるほど運営は複雑になりますが、農業が栄え定住生活と安定が約束され、大国ができ、商工業も同時に発展します。
数が減れば大国がなくなり、小国同士の貿易とともに小競り合いも頻発し、水や食料、家畜のえさを求めて土地を転々と移住するのが常態となります。

人類にとってイネ科植物は食料のみならず、葉や茎にシリカを多く含み強度が高いので、住居や生活道具の材料としても活用されてきました。
レモングラスの和名はレモンガヤ。
レモンの香りがするガヤ、つまり茅葺屋根になるカヤの仲間です。
いまは茅葺屋根のおうちなんてほとんど見かけませんが、白川郷の合掌造りといえば、イメージわくでしょうか。ススキやヨシで作られている屋根です。

衣食住に貢献し、人類とともに栄華盛衰の循環サイクルをまわすイネ科植物たち。
大地と豊穣の女神デメテルは、実りをもたらすと同時に飢饉をもたらす神様でもあります。
見方を変えると、与えられる時期は社会運営のために、カースト制度に代表されるような時代ルール、あるいは性善説による信仰心を利用され、地上ルールの縛りから抜け出すことが容易ではありません。
逆に奪われる時期はそうした地上ルールの縛りから解放される。
ジプシー、流浪の民、ドリームタイム、インディアン、世界中の先住民族たちが、神々や精霊とともに生きた時代。
どちらがいいとか悪いとかの話ではなく、文明はたしかに変遷してきたし、イネ科植物がその都度、いっちょかみしてきたね、という所感です。


高揚感と不思議な郷愁


レモングラスは育てやすいということもあって、現代ではあらゆる国々で見ることができます。
タイ国では、どこを歩いても新鮮でみずみずしいレモングラスの束が店頭に山盛りで無造作に置かれているのをよく見かけました。
このときレモングラスの香り空間がいかに活気があり、若々しさと生気に溢れているか肌で実感しました。

レモングラスに限らずですが、南国の香りが強いハーブたちは、いつも似たような高揚感をもたらしてくれます。
なんとも表現がむずかしいのですが、郷愁のような、あまりのなつかしさに身悶えるような、不思議な感覚とともにやってくる高揚感です。
名前もつけられないし定義もできないけれど
「知っている、この感覚を知っている」
という思いだけが強まって、ちょっとしたトランス状態に入りやすい感じがします。

もうひとつの側面として、レモングラスはオープンで開放的な香り空間を作り出してくれるハーブでもあります。
レモン様の香りなのでリフレッシュできるのは間違いないのですが、ミントなどの明々白々な爽快感とちがって、ヒグラシの鳴く、夏の終わりの安堵感のような気配も混ざり合っています。
活気に満ちて広がりつつも、いずれ収束し、閉じていく方向が見えているような。解放と収束のリズムを匂わせるような。
「夏休み最後の日」に感じる気分にも、ちょっとだけ近いような…。
うーん、やっぱり定義はむずかしいです。

芳香療法の確立は、古代エジプト時代にすでに完成されていたという説があります。
当時の人々の暮らしにハーブは欠かせないものでした。
代表的なのがキーフィ(kyphi)と呼ばれるインセンスで、焚香するだけでなく香水として、薬としても使われていたものです。
熟練調香師が残したレシピだけではなく、各家庭独自の、さまざまなレシピがあったらしく、レモングラスも薫香料としてその名が挙げられています。

さてもオリジナルブレンドの調香は無事に閉幕。
Shield72°さっぱりブラック うるおいシリーズ化粧水&乳液は「リリース感」満載のさっぱり爽やかな香りに仕上がりました。

さっぱりブラック うるおいシリーズ(化粧水&乳液)


*当ブログで紹介している植物の一般的な性質は化粧品の効能を示したものではありません。
*Shield72°製品に使用されているオーガニック・レモングラス精油は、正式にはレモングラス葉油と呼ばれ、賦香目的で配合しています。

☆☆☆

お読みくださりありがとうございました。
こちらにもぜひ遊びにきてください。
「ハーブのちから、自然の恵み。ローズマリーから生まれた自然派コスメ」
ナチュラル・スキンケア Shield72°公式ホームページ

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