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おもに七月堂書籍から詩の紹介をしていきます。
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#詩

「一日」(尾形亀之助著、西尾勝彦編『カステーラのような明るい夜』より)

君は何か用が出来て来なかったのか 俺は一日中待っていた そして 夕方になったが それでも …

「水の旅」より(峯澤典子『あのとき冬の子どもたち』)

もう二度と会えないひとも 生まれてから一度もめぐり会えないひとも 同じ花の気配に変わる街ま…

「ぬりえの時間」より(神泉薫『エッセイ集 光の小箱』)

 ぬりえには、精神安定やリラックス効果があると言われているが、無心に色をぬっていると、確…

「冬のひかり」より(海老名絢『あかるい身体で』)

日の出前、午前五時五十五分 寒さに身体が縮こまると わたしの質量も減る気もする カーテンを…

「息継ぎ」より(川窪亜都『鋏と三つ編み』)

サンタクロースが当たり前になって勘違いしてはいけない 飽和したやさしさはのどを締めつけた…

無人駅(秋山洋一『忘れ潮』より)

なにを願っていたんだか よく鳴くときはよく透けた 残された虫いる無人駅 椅子の上の逆さの小…

空洞(栁川碧斗『ひかりのような』より)

いつか目を覚まし瞳には虚空があり衣が剥が れぽつねんと悲歎のみがひろがる朝靄を手繰 る肢体と辺りに留まる地面とコンクリートだ けが関係を持ち同心円状に影響を及ぼすとき の音が揺らした空気を棉に取り込んだことば はふわりふくよかに自由になりやがて総身の 肌は圧迫されたすぼんで両手に散らばるなに かを凝視するだけのことばなどが詩に呼ばれ てふたたび意味をむすぶと信じる野鳥のさえ ずりを都会にたたずむひとりの身体はかろや かに裏切りそこにある空洞を抱えしぼみゆく 接触感覚にわたしの

Time(牧野楠葉『アンドレ・バザンの明るい窓』より)

わたしの後ろから眼に手を当てているのは誰 夜露で固まった鳥たちの音、 布に印刷した時計の絵…

饒舌と沈黙(窪島誠一郎『ぜんぶ、噓』より)

かれは 饒舌なのだが ふいに押し黙る かれの饒舌は そのおそろしい沈黙のなかにある 饒舌は…

ひとなつの巡礼(神泉薫『白であるから』より)

わたしたちよりもずっと低い 大地の皮膚にもっとも近い目線で 空と地を分ける あの果てのない…

つかみぬく(國松絵梨『たましいの移動』より)

雲の奥から 爪みたいな輪郭が覗く 整ったものを やわい手つきで つかみぬきたくなる ゆびのあ…

道行(橘しのぶ『道草』より)

どのあたりかと問われても どこまでだってかゆい 鯨尺を使って手の届かないところまで かいて…

未明(一方井亜稀『青色とホープ』より)

陽光の射す窓があり それをただそうであると認識する日々を 幾年も重ねて 陽光の射す と言葉だ…

Rainbow Connection(鈴木康太『霊園東通り南』より)

あなたが離した 親指と人差し指で水の花束 垂れた ジャングルジムでみつかった 春のペンキ 亀の甲羅つかむ まちがえて鳥が星を食べないように 一粒ごとに 積み上げた そのなごりを 雨という 薄い窓は小さくて 小指をたてて 窓を開ける 干した影を取りこもうとしたけれど 爪よりも柔らかい ささやきが痛い 雲にあらわれる 枕の影 言葉を盗んでいる 草むら あなたは春の手をしている しずめると 指は衣をつける 氷ってる蓋の上で 瓦を割っている 父の 耳は来たときと同じ大きさで