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シブヤフォントってなに?②〜デザイン・制作編〜

どうも、シブヤフォントのライラです。

前回の「シブヤフォントってなに?」ではどの様にシブヤフォントのパターンとフォントの元となるアートワークを参加施設の皆さんがどうつくりあげるかを紹介しました。

アートワークと同様、そのアートワークを使ってパターンやフォントにする過程もシブヤフォントにとって不可欠なプロセスの一つです。
今回の制作編ではアートワークを手がけている参加施設の皆さんとデザインを担当する専門学校の学生がどのようにがどのようにしてシブヤフォントのパターンとフォントを作り上げるかを紹介します。

シブヤフォントのパターンとフォントは2017年度から桑沢デザイン研究所など渋谷でデザインを学ぶ学生たちがプロジェクトに参加し作り上げています。去年の2021年までは学生デザイナーはボランティアとして参加していましたが、2022年4月からは桑沢デザイン研究所昼間部の選択科目のソーシャルデザインプロジェクトとして正式に授業となりました


15回に渡りデザインを学ぶ学生が担当施設の支援職員とのメンバー(利用者)とその時、その場所でしかできない図柄(パターン)とフォントの素材となるアートワークとデザインを作り上げます。

学生と参加アーティスト、施設の支援員が共に相談したり悩みながら作っている。

施設の皆さんに会いにいく前制作オリエンをするのですが、その時に学生に3つのことを伝えます

①現場のみんなと仲良くなる

学生にまず伝えること。それは施設の皆さんと「仲良くなってください」。すごーくなかよくなってください、よいうことではなく、「あのひと」すなわち施設にきてくれる顔見知りになるということ。何回も施設に行くことでお互い コミュニケーションを交わしながらComfortable (ぎくしゃくなく)過ごせる様になります。デザインする上で実は重要とも言える工程が観察と対話。「初めましてまるまるです」「なにかいてるの?」「すごいね」会話や同じ時間を過ごしていく中で相手を感覚的に理解する。そこではじめて「ショウガイシャ」という意識はどこかへ消える。言葉が喋れなくても動作や絵を描いたり文字を描いたりという創造・創作することをたのしももの同士の同士の互いの「手」と「感覚」からなるコミュニケーションを第一にすることをすすめています。無理してしゃべらなくていい、黙って見つめててもいいし一緒に描いてみてもいいし。まずは同じ空間を共有し、その人自身と作っているものを感じることを大事にしてくださいと学生にはいつも言っています。

②相手思い、感じ取り作る

参加アーティストの制作を見つめながらサポートする学生。制作の現場を見てるからこその
インスピレーションもある

このプロジェクトでいうクライアントは2名います。それは、アートワークをつくる施設のみんなそして柄やフォントを使う使い手、すなわち企業や個人のお客さん。

両者が納得するデザインを作り上げなくてはいけない。そういう意味ではシブヤフォントのハードルはとても高い。しかも多くは昼間学部の1年生。技術もまだ発展中、常にアイデアと技術とのせめぎ合い。しかも相手に対して最大限の表現をつくすなど、プレッシャーはある。

でもその中でどれだけつくるもののバックボーン(髄となる要素)を理解できるかにかかる。それはなにか?それは共に作ってる相手(この場合素材の作者となる施設メンバー)を知って考えて作ること。それに尽きる。

ソーシャルデザイン(すべてのデザインはソーシャルと私は思いますが)で一番大事なことは相手(協働者と使い手)へのエンパワメントとともにエンゲージメントをどうつくるかである。多くの人は前者ができれば後者はついてくると思っている。しかし実際はそんなことはない。人間は自分の興味と得で動く生態性を持ってると思います。もちろん私たちが住む複雑化された世の中様々な社会的なイシューを解決していかないといけない。けど課題のファクトに集中しすぎて頭でっかちになりすぎてもいけない。また勝手に相手をエンパワーするにはこれが必要だ!と先走っても結果空回りする。まずはその現場の人を個人として知る。その上でその人が喜ぶものはなんだろう。その人をうまく表す柄やフォントはなんだろうそのストーリー性と愛こそが人の意識や心を動かすデザインを生み出すのだと思います。しっかり相手がしたこと、言ったことなど、その人のエネルギーを吸収してデザインに落とし込む。共に時間をかけて過ごしたからこそできる唯一無二のデザインが生まれます。だからエンゲージメントの側面をスタート地点にすることもすごく大事だと思います。

色彩や空間構成を日々やしなってデザインの感覚を養っていけばいいわけだしセンスもみがくだろうしストーリー性があるものは最低限の技術があれば必ずいいデザインはついてくるんです。

学生にはデザインにアーティストの手垢を残すようにしようといつも伝える。

アートワークはたんなる素材ではない、作った本人の分身でもあるんです。だからまずはその人を感覚的に知ること、そこからデザイナーとしてどう素材を見るかが大事なんです。 もちろん素材を学生に私て「はい作って!」とも言えますがそれでは誰にとっても学びや気づきもありません。みんなはまず人間デザイナーだからえらい、施設だから障害があるからこうということはありません。人間それぞれの経験とスキルと見解があります。シブヤフォントは立場がどうであれその共有を大事にします。

③施設に遠慮せず思ったことをいう

そう考えてみると仲良くなった描いたものに手をつけることってなかなか手が進まない。その人を傷つけてしまうんじゃないのか?とか。学生たちは悩む。果たしてこれだけ加工していいのか。

でもメンバー(参加アーティスト)にとって作った柄に対しての必ずリアクションがあるわけでもない。自分の絵や文字がパターンやフォントになったことを理解して喜ぶ人もいれば、リアクションがわからなかったり、あまり気にしていない人もいる。

それじゃあどうすればいいのか? まずは2つのことを学生に伝えます。

①しっかりと参加アーティストの制作姿勢やパーソナリティーを知る。

②自分の視点を相手をシェアし、技術を活用しアーティストのアートワークを新たな光で魅せる。

これは私個人の見解ですが障害というイメージは接点がない方の内にはどうしても「苦労」「大変」や「〇〇ができない」というイメージがついてきやすいものだと思います。なので絵を描くなどその人にとっては楽しかったり好きな行動が「一生懸命」書いたと称されそれ以上求めたりされることもなかったりする。でも私は人間誰だって向上心はあると思うんです。なんでそんなことを私は言えるのか。それは私自身も身体に障害を持っているものとしてそう見られてきた部分が少なからずあったからです。でもそれじゃあ悔しいんです。だからデザイナーとしての目があるのならアーティストから感じとった力やその人らしさを自身のデザイナーの目と手、考えを通したデザインとして世の中に出す。それをみてアーティスト本人や本人を支える周りの人が「こういう捉え方やつかいかたもあるのか?!」と思いまた新たなアートワークの制作に取り掛かる。学生自身も美術教育の固定概念にとらわれないメンバーのアートワークにも刺激を受けることはもちろん、逆も必要だと私自身はディレクターとして感じます。それはなんで言えるのか? 人間は立場問わず互いから刺激試合学び合う存在であるはずなんです。本当に多様で皆にフェアな世の中を目指したいなら何かプラクティカルなものを通して学び合う関係性が健全だと感じます。だからこそまずはアーティストを人間として知る必要があると思います。どんな人でどんな思いや感覚で絵や文字を生み出したか。それが必ずデザインの源となります。

現在のデザイン教育で足りないことは調査する力つまり学生の「みる」力だと思います。技術も大事ですが、自分の見て感じたもの、考えをどう具現化し、相手に伝えるかをわからなければいくら美しいものを作っても相手に伝わらない可能性があります。シブヤフォントの授業をやる時は何度も「あなたはどう考えるの?」と学生に先生として問います。最初のうちは学生も沈黙が多いですが、聴き続けるうちに学生自身も自分の考えをまとめて話してくれます。

6年目になったシブヤフォントでは450を超えるパターンと50を超えるフォント。一つと被るものがないのは50人以上を超える学生たちとアーティストの皆さんの関わりと関係性、それぞれの考えやスタイルの刺激の象徴だと思います。

そんなシブヤフォントの今年度の新柄全作品を12月4日(日)に公開します。
今年度の参加施設全11施設とそれぞれタッグを組んだ学生とがそれぞれ共同制作したパターンとフォントとその制作過程と商品展開を企業の前でチームとして生プレゼンします。

ぜひ、それぞれの学生と施設のデザイン制作の物語と結果を堪能ください。お待ちしてます。

2022年 シブヤフォント新作フォント&パターン発表会【オンライン】

https://2022-shibuyafont-presentation.peatix.com/

2022年12月4日(日)14:00~17:30 オンライン
↓↓↓申し込みは下記のリンクから↓↓↓↓

https://2022-shibuyafont-presentation.peatix.com/



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