戦略的依存:良い依存を選ぼう

個人主義とSNS社会

「自立した大人」「依存は良くない」「一人で生きていけるようになりたい」

そんな流れがある中で、いつの間にか私たちは

「一人で生きていかなくてはならない」
「それ以外に道はない」

と思ってしまってはいないだろうか。

かといって一人だけの力でこの世界に立つ、生きていく、それは本当に過酷なことのように感じられる。

キラキラした日々がSNSには溢れかえっている。
ああ、また彼が仕事で成功したらしい。
ああ、今度はあの子が結婚したのか。
ああ、あの子はやりたいことに向かって今日も頑張っている。
それに比べて自分は…。

人と比べた時に生じる不安から逃げ出そうと、現状を変える方法を模索し始める。それは走り出す初期衝動としてはいいかもしれないが、前出の「私も自立しなきゃ」「立派にならなきゃ」な精神状態が付随すると、”自分だけ”で今の現状を変えなくては、と視野がどんどん狭くなっていく。

人一人が起こせる変化は当然としてあまりにも少なく、
大きな変化を望む理想と、手札として起こせそうな変化の小ささ、
その対比から生じた焦りは私たちをいとも簡単に飲み込んでしまう。

そんな思いは誰もしたくない、してほしくない。

ここで提示したいのが

”適切な依存”

という考えである。

韓国の自尊感情専門家であり精神科の先生でもあるユン・ホンギュン氏の著書「どうかご自愛ください」(岡崎暢子さん訳)の中で言及されている。

子どもが親に依存するのは当然として、大人もたいてい様々なものに依存している。
身内だったり友人だったり、はたまたペットだったり、それが宗教にもなり得る。そう考えてみると当然のように依存は身近なものに感じないだろうか。

それならばなぜ”依存”に悪いイメージが付随するのか。
おそらく”不適切な依存”がもたらす大きな苦しみのせいだろう。

アルコールや暴力的な恋人など不適切な対象への依存、対象が適切でも過度な状態、または依存していることそのものに気づくことができない未熟な精神は、本人自身も、周りの人々も巻き込んで大きな重石となってしまう。

何に依存するかによって私たちの生活は大きく左右されるといっても過言ではない。

ユン・ホンギュン氏が唱える

「良い依存」の3つの条件

がこちら。

① ”自分より強い存在に依存し、依存の方向も明確” であること
例)知識を得るために本を読む。健康のために医師を訪ねる。

② ”堂々と公表できる透明性の高い依存” であること
例)不安を隠すためのアルコールや、愛されたいからと不倫に走る、ではなく代わりに旅行や趣味、家族など、後ろめたいことなどのないもの。

③ ”依存した分だけ相手に返す” ということ
例)筆者が以前勤めていた病院の院長は、院内の食堂スタッフに会うと、「食事を提供し、私を生かしてくれてありがとう」と必ず褒め称えていた。大きな病院を運営していても、食事に関しては食堂のスタッフたちに頼っていることを知っていたからだ。院長はスタッフを尊重し、自尊感情を立てることでお返しをした。

→良い依存とは一般的な搾取ではなく、もらった分だけ相手に返し、仮を残さない。

どうかご自愛ください.(2021).ユン・ホンギュン著.岡崎暢子訳.

 改めて実は自分が依存しているかもしれないモノ、そしてその状態を考えてみてほしい。
それらはあなたにとって、相手にとって”良い依存”と言えるだろうか。

逆に、なるべく何かに依存しないようにと十分すぎるほどに気をつけて、一人で全てをどうにかしようと戦っている人には、是非とも”良い依存”が自分にも見つけられないか、探してみてほしい。

これは仕事においても、家庭においても、日常生活のどの瞬間を切り取っても関係のあるものではないかと思う。
漠然と考えるのが難しい場合は、是非とも細分化して、ゆっくりと自分を見つめ直してみてほしい。

人のことは変えられない。
でも少しでも幸せであってほしい。
苦しみがあるならできるだけ早く少しでも癒されてほしい。
そんな想いや願いがこもった愛しい言葉だと思っている。

みなさま、どうかご自愛ください。

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