Nilufar Gallery 「これはリンゴではない」
アルゼンチン出身のアーティスト Andrés Reisinger の個展
Time traveler が今回のテーマである
会場の中央にはシュールレアリズムの巨匠、マグリッドを連想させる巨大なリンゴのモザイクタイルが展示されている。かなりインパクトがある。
12個のリンゴが円を描いて並んでおり、その周辺には12脚の椅子12 Chairs for Meditation が配置されている。
シュールレアリズムの巨匠マグリッドの「これはリンゴではない」は有名な作品の一つである。デザイナーのアンドレス・レイジンガ―もここからインスパイヤ―されているに違いない。勝手な想像です。
12脚の椅子、12個の円をえがいて並んでいるリンゴ。
そう、「これはリンゴでなない」のである。12というキーワードと、円から、おそらくこれは時計である。でも針がない。つまり、これは時計ではないのだ。
テーマも「Time traveler」という事から、おそらくこれは概念的な「時間」を意味していると考えられる。
時間の経過とともに移り変わる「雲」を連想させる12脚の椅子が展示されて、各々の商品名が ChairⅠ,Ⅱ,Ⅲ,Ⅳ……Ⅻ とあるように、時刻を連想させるものとなっている。各々の椅子は、異なる素材、形、永遠に変化する雲のようだ。
ちなみに、アンドレス・レイジンガ―はMOOOIのHortensia Armchairのデザイナーである。
12 Chairs for Meditation(瞑想のための12脚の椅子)× タイムトラベル
から連想すると、ここでいうニルファーとアーティストが考えるファンタジーはこれらの作品は、時空を超え、雲の上で瞑想する時間は、心を落ち着かせ、日々の生活に安らぎを与える といった感じの、設定であろう。
また、12脚でテーマが完結するという設定は、1脚でも欠けると、未完となるためファンタジーを成り立たせるには、壁画を含めた12脚すべてを手に入れなければならない。販売戦略としても、よく計算された手法である。
例えば、読者が新規高級ホテルの事業コンセプトを説明する立場にあったとしよう。5スタークラスのホテルとなると、ロビーにはホテルのコンセプトを訪問者に伝えるツールとしての、看板アート的なるものが必須である。それらは、オブジェであったり、噴水、あるいは壁画であったするかもしれない。
正面エントランスにはカウンターがあり、周辺には待合用の椅子やソファーが配置されているのが一般的だ。
ホテルのラウンジに時間を連想さるせるようなモザイク画、周辺に雲のような12脚の椅子が並んでいれば、それだけでホテルのコンセプトとして十分ではないか。
訪問者はそこで、友人、家族、あるいはクライアント、パドロンや投資家と待合わせているのかもしれない。その空間が雲の中で、その人との記憶を思い起こしながら、瞑想するタイムトラベラーと言うのも、ファンタスティックではないか!
これは私の想像だが、ニルファーは戦略的にこのような作品を提案しているように思える。少なくとも対象は、椅子を一脚のみ購入する個人ではなさそうだ。
コンセプトを丸ごとパッケージとして販売する一例として参考になるのではないか。
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